HONZ活動記 ―3冊目 “クーネル・ノ・グーソ”―

村上 浩2012年06月02日 印刷向け表示
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本エントリーは、キュレーター勉強会の募集から合格発表までをお伝えした前回の続きです。まだお読みになっていない方はこちらも是非。

HONZ活動記 -0冊目 キュレーター勉強会って何だ??-

さて、キュレーター勉強会の合格発表でひとしきり狂喜乱舞した後、ふと我に返ると少し不安な気持ちが芽生え始めました。

  • 一体どんな人がやってくるんだろう?
  • とんでもない、ぶっ飛んじゃったような人ばっかりだったらどうしよう?
  • いじめられて、教科書隠されたりしないよね??

そう、気分はまさに入学式を控えた新入生。とびっきりの期待と、ちょっぴりの不安が交じり合ったような何とも言えない感覚。

何しろ、これから1年間勉強会を共にする人には会ったこともなければ、その顔すら知らないのです(名前だけは合格発表で知っていました)。しかも、本当にベスト10の選本とベスト1の書評のみで合否が判定されているので、主催者の成毛さんですら合格者の誰にも会ったことがない(面接をしていない)のです。どんな人が集まるかはまさに“神のみぞ知る”という状態。身近に仲の良い本好きがいなかったことが、“本好きってどんな人だ?”という僕の不安に拍車をかけていたのかもしれません。

合格発表から2週間が経過した2011年1月19日、高鳴る胸の鼓動を抑えながら、まだ薄暗い早朝の六本木に1人、また1人とメンバーが集まって来ました。興奮のあまり早起きしてしまった僕はかなり早めに会議室についていたのですが、どのメンバーも同じだったようで定刻の5分前には席は全て埋まっていました。

ここで早速、少々の違和感を覚えます。

「あれ、東さん以外男ばっかりなの??」

そう、HONZ読者の方はとっくにご存知でしょうが、合格発表時にあらぬ想像をした、新井文月さん、鈴木葉月さんは男性だったのです。まぁ、全然いいんですけどね。いや、本当に。

さて、少し脱線してしまいましたが、勉強会は午前7時に予定通りにスタート。成毛さんが会の運営方法や主旨説明を行った後、各自が自己紹介していくことになったのですが、ここは本好きたちの虎の穴、ただ職業や年齢を言うだけでは済まされません。どんな本が好きなのか、読んできたのかを発表し合うことになりました。

この自己紹介で僕はとにかく度肝を抜かれたのです。

新聞記者、商社マン、ベンチャー起業家、エンジニア、偏った性別の様々な本業を持つメンバーたちが自己紹介を進めていきます。皆が紹介する本に、それぞれがコメントを入れたり、関連本を紹介したりと、30分前に会ったばかりのメンバーは直ぐに大盛り上がり。僕自身は『Born to Run』に影響されて、5本指シューズを買ってランニングを始めたことなどを紹介しました。とにかく、どんな本が取り上げられても誰かがその本を知っている。今まで、身近な友人に最近読んだ面白い本の紹介をしてもキョトンとされてばかりだった僕にとっては心地よい驚きの連続でした。

さて、自己紹介の順番は料理研究家の土屋さんに回ってきました。ここからは、土屋さんの発言(以下、土)と僕の心の声(以下、村)の対話形式でお送りします。

(土)「東さんが紹介した『ハダカデバネズミ』で思い出したんですが、僕は“クーネル・ノ・グーソ”が好きなんですよー」

(村)「くっ、クーネル・ノ・グーソ!?何だそれは??

考えろ、自分。ヒントはどこかにあるはずだ。土屋さんは料理の専門家だよな。。。ははーん、わかったぞ。さすがは料理研究家だけのことはあるね。これって、フランス料理でしょ。そう言えばなんだか聞いたことがあるよ。大学のときドイツ語履修だったから、ピンと来なくてもしょうがないよね、うんうん」

(土)「いやー、こういうことを研究する人ってたまらないんですよねー。ここまで徹底している著者はなかなかいませんよ。何しろ出張に行くときは、出張先に人目につかずにできるポイントがあるかどうか調べ上げるんですから。」

(村)「ん??人目につかずに??待てよ、著者が凄いってことは、もしかしてクーネル・ノ・グーソってフランス人の名前か。そう言えばセンター試験に出てきたような気もするな。でも僕は理系で、世界史を履修してないから忘れていてもしょうがないよね、うんうん」

(土)「この人はもともと菌類の写真家なんですけど、もう3000日以上もトイレでうんこしてないそうですよ」

(村)「う、うんこ!!下ネタかい!!フランス全然関係ないし、、、」

何のことはない土屋さんはフランス料理ではなく、『くう・ねる・のぐそ』という本について熱く語っていたのです。

くう・ねる・のぐそ―自然に「愛」のお返しを
作者:伊沢 正名
出版社:山と溪谷社
発売日:2008-12-15
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それにしてもこの本、そして、この本の著者には驚きました。とにかくその思想信条からトイレを一切使わないというのです。そのため、著者の野糞歴は35年以上にわたります。都内だろうが、海外だろうが最適スポットを見つけては脱糞し続けているその姿は、一度見てみたいような、見たくないような。この本の紹介は衝撃でした。今までの自分の読書歴を振り返っても、このようなジャンルの本には近づいたことはありませんでした。というより、このような本が出ているということすら知りませんでした。それなりに本を読んでいたつもりでいた自分の視野の狭さを痛感させられた瞬間です。

しかし、最も衝撃的だったのは、たった10人しかいないメンバーの中にこのニッチな(?)本を読んでいた人間がいたことです。そう、東さんです。東さんはこの本の著者が菌類写真家であることから、菌類の本について話を膨らませながら、菌類研究者の面白さ・ユニークさについて嬉々として語り始めるのですが、話はここで終わりません。菌類研究者の話に対して成毛さんが鳥類研究者の話をかぶせたと思えば、別の話題を別の参加者がかぶせてくるではありませんか。まるで本の無間地獄です。その話は止まることを知りません。

本の世界はこんなに広大で、こんなにも面白いものなのか。

自己紹介の段階で、この会は絶対ムチャクチャ面白くなると身震いすると同時に、ムチャクチャ頑張らないとこの会話についていけないぞと背筋の伸びるような緊張感が走ったことを覚えています。

ひとしきり話が盛り上がった会の終盤、成毛さんが「今どんな本読んでるの?」という質問を投げかけた瞬間、皆がカバンからごっそりと数冊の本を取り出しました。僕も常にカバンには2~3冊の本を忍ばせていたのですが、どのメンバーも同じだったようです。机の上には計30冊程度の本が置かれました。この、今読んでいる本の紹介があまりに盛り上がったので、現在の朝会で行っている「今月読む本」紹介の原型となりました。何しろ、第2回勉強会の際には誰に言われたわけでもないのに、皆が初回を超える大量の本を持ち込んでいたのです。このメンバーたちは、本好きなだけでなく、負けず嫌いでもあるようです。

身内を褒めても何にも貰えないのですが、選本と書評だけでここまで息の合うメンバーが集まったのは、成毛さんの選球眼のたまものでしょう(成毛さん、何かください)。企業で採用を担当されている方は、当たり障りのないことしか書きようのない自己アピールや志望動機よりも、おススメ本のレビューを学生に課してみても面白いのではないでしょうか。

会の終了後、興奮冷めやらぬまま出社のために駅に向かう間も、日本におけるサイエンス本の位置づけなど、本についての話題は止まることがありません。こんなことになるのなら、一体何を心配していたのやら(心配通り、自分は何と凡庸なんだと感じるほどぶっ飛んだ人ばかりではありましたが)。

当初は課題図書のクロスレビュー1本と自らの選本によるおススメ本レビュー1本の計2本を毎月アップすることになっていましたが、お互いのレビューを見ることで、この活動は更に加速していきます。

(つづく)

*本エントリーは完全に僕の記憶のみに基づいて構成されています。事実が誇張、歪曲された表現があるかもしれませんし、ないかもしれません。

◆勝手に次回予告◆

次回のHONZ活動記は、

  • 栗下さんによる『HONZ夜会レビュー 本読みと酒と腕からの出血』
  • 新井さんによる『ダンシングHONZ オーパーツからスプーン曲げまで』
  • 高村さんによる『俺のレビューを読め 忘れられたプーラン』

のいずれかをお届けします。

(お三方に確認を取っていませんが、何やらこういう内容の活動記を書きたがっているように見えました。というより僕がこういう活動記が読みたいのです。)

__________

人気者の内藤さんが中々登場しませんが、我々がこんな活動をしているときに、内藤さんが何をしていたかが気になる人はこちらをどうぞ。

遅れてきたHONZ

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