『江戸の御触書』

成毛 眞2008年11月13日 印刷向け表示
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江戸の御触書―生類憐みの令から人相書まで
作者:楠木 誠一郎
出版社:グラフ社
発売日:2008-06
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本書はタイトルそのまま、江戸の御触書を紹介する本である。当時は多くの御触書が「○×をしてはまかりならん」という形式だったらしい。逆にいえば、禁令を出さなければならない状態になっていたということだ。いくつか本書から引用してみよう。

大酒は飲むな。奉公人に刀を持たせるな。江戸城付近で勝手に酒飯を売るんじゃない。好色本は禁止だ。当然、男色なんてするな。男女混浴もしてはいけない。芸の師匠は色を売ってはいけない。贅沢するな。変な格好するんじゃない。葵のご紋はいかなる場合も使用禁止だ。

うははは、江戸は想像しているよりかなりファンキーだったのかもしれない。じっさい葵のご紋を使った犯罪がいくつかあったらしい。引用を続ける。みだりに鉄砲撃つな。橋から石を投げるな、乱暴ものを見てみぬふりするな。賭博は重罪!死刑も免れぬ。とだんだん怖くなってくる。とはいえ、通り魔殺人は厳重に罰するなどという御触書はない。現代のほうがよほど怖い。

お上は事細かに五月蝿いが、いっぽうで庶民を案じていた。火事のときは身一つで逃げなさい。台風直撃したので、天下の蔵米を大放出するぞ。災害にあたって材木商は人の足下を見るな。寺子屋の子供をえこひいきするな。吉原でも倹約しなさい。などととやたらに親切でもある。高額所得者は定額給付金を遠慮しなさい、なんていう大間抜けな御触書もない。

最後に一つだけ引用しよう。この御触れは「撰銭令」といい、室町時代から繰り返し出されていた。原文は

「御法度之外、銭えり候もの於有之は、如御定、火印を捺すべき事」である。

その意は質の良い貨幣を選んだものは顔に焼印を押すというものだ。庶民が良貨のみを蓄えると、殿様には悪貨しかまわってこなくなる。国庫に打撃を与えるものを罰するというわけだ。当時の銭は中国製が多く、当然ニセモノも中国製が多かったのだという。

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