『世界ふしぎワンダーライフ50』新刊超速レビュー

刀根 明日香2012年10月14日 印刷向け表示
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世界ふしぎワンダーライフ50
作者:
出版社:河出書房新社
発売日:2012-09-25
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写真集は人の個性を十二分に表す。写真家の個性はもちろんだが、それを手に取る読者の個性も赤裸々に映し出す。例えば、鰐部祥平は『朽ちる鉄』を手に取る。土屋敦は『温泉川』を手に取る。内藤順は『パイスラッシュ』を手に取る。それぞれどんな内面を写真集が代弁しているのか、読者の想像にお任せしよう。そして、私が手に取ったのはこの写真集である。

本書で紹介されるのはいわゆる有名スポットがほとんどを占める。シンガポールにある高さ200mの屋上プール、インド洋クリスマス島のカニの行進、中国の程陽永済橋などは目にしたことがある人は多いだろう。しかし、侮ってはいけない。「自由の散文ビル」、「人生の渦」、「生命保険の寺」など、それぞれ魅力的なタイトルを纏った写真たちは、それら観光名所が秘めた、奥深い「暮らし」を写し出すのだ。

「暮らし」と聞いてまず思い浮かべるのは、家族で囲む食卓、公園で遊ぶ子どもたちなどであろうか。しかし、この写真集を手に取れば、自身の想像力の貧困さに愕然とするかもしれない。世界中にはハッと息をのむような、驚くべき「暮らし」が広がっているのだ。

例えば、カナダのガスペ半島には「壁を見つづける暮らし」がある。半島の眼前には、高さ88m、幅475mのペルセ岩がでんと立ち塞がっている。日の暮れ時、暗くなる海と、夕日を受け真っ赤に燃える巨大岩の美しい対照は、信じられないほど幻想的だ。住民は生まれてから一生この壁を見つづけることになる。彼らは、この壁に何を見出し、何を映し出しているのだろうか。

「天空の鏡」と称される、ウユニ塩湖。乾季は広大な塩原だが、雨期には3cmほどの水の鏡が出現する。どこまでも広がる鏡に写るのは、空、雲、そして自転車にまたがり走るたった1人の男。「暮らし」から随分離れた神秘の光景だが、ここにもわれわれの大切な「暮らし」の一部がある。足下の200mにもなる塩の層には、自動車電池などに欠かせない膨大なリチウムが眠っており、なんと世界の埋蔵量の50%にあたるのだ。外からは見えない「暮らし」の宝庫である。

「暮らし」は、実際にそこに住んでみないと見えないことがたくさんある。しかし、想像力があれば、それ以上に楽しめるかもしれない。第3章「だれもいなくなった!」では、グリーンランドのウーマナックという町が紹介される。標高1170mの岩山のふもとにある濃霧に包まれた町には人一人見当たらない。あるのは風になびく洗濯物だけだ。

彼らはどこへ行ったのか。彼らにはどんな「暮らし」があるのだろうか。写真はその瞬間の人々の表情、水の動き、空の様子など無限のヒントを私たちに与えてくれる。物語の続きはあなたの頭の中にある。たまには現実を離れ、写真の中の生活に想いを馳せるのも良いだろう。写真集をこっそりと鞄に忍ばせ、秘密の妄想を楽しんでもらいたい。

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