『再現!巨大隕石衝突―6500万年前の謎を解く』

成毛 眞2009年03月23日 印刷向け表示
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新版 再現!巨大隕石衝突―6500万年前の謎を解く (岩波科学ライブラリー)
作者:松井 孝典
出版社:岩波書店
発売日:2009-02-10
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いまでは多くの人が6500万年前に巨大隕石が地球に衝突したことを知っている。その時に絶滅したのが恐竜だったことから、子供ですら興味を持つからだ。科学的にはつっこみどころ満載の映画「ディープインパクト」と「アルマケドン」はともに1998年に公開された。その影響もあるのだろう、巨大隕石衝突がもたらす災厄の詳細まで人々は共有することになった。

この6500万年前の隕石衝突の可能性について初めて論文が発表されたのは1980年のことだ。白亜紀と第三紀の間にあるK-T境界層から大量のイリジウムが発見され、その原因として隕石衝突仮説が提起されたのだ。実際にその隕石衝突の痕跡がみつかったのは1991年のことである。つまり、隕石衝突による恐竜絶滅は科学史的にはごく最近のことなのだ。

なにしろ、特殊相対性理論は1905年、ハッブルの宇宙膨張説は1929年、DNAの二重らせん構造の発見は1953年、ニュートリノの初検出は1985年のことである。巨大隕石衝突はまだ研究真っ盛りのテーマであるといってもよい。

さて、この6500万年前の隕石衝突の瞬間に何が起こったのであろうか、本書から少し抜書きしてみよう。この時には直径10キロメートルほどの隕石が現在のカリブ海に落下した。瞬間的に深さ30キロメートル、直径100キロメートルほどのクレーターが作られる。ちなみに、東京を中心とした直径100キロの円周上には八王子、秩父、つくば、君津、相模原などの各都市が並ぶ。このクレーターの中にあった物質は蒸発するか、宇宙空間にまで吹っ飛ぶことになる。

そこが水深3キロメートルほどの海だった場合、まわりから海水がなだれ込み、中心点では10キロメートルの「高さ」の水柱が作られ、次にその膨大な水はまわりに押し出される。結果的に高さ300メートルの津波が発生する。この場合の津波の波長は数百キロメートルになる。高さ300メートルの三角波ではない。水深300メートルで数100キロメートルの長さをもつ海が突進してくることになる。津波は浅い海で高さを増す。1キロメートルを超える津波に襲われた地域もあったという。

津波だけでも、6500万年前に全ての生物が死滅してしまわなかったことが不思議なくらいだ。しかし、あまり恐れる必要はないと本書は教えてくれる。いまでは1キロメートル以上の巨大隕石は地球にぶつかる何十年前からわかるのだという。そして、現在ではその対策として太陽光を集めて隕石を蒸発させるという方法が考案されているのだという。

古代中国「杞」の国の人が、いつか天が落ちてくるのではないかと憂いたことから、無用な心配をすることを「杞憂」という。同じ天から降ってくるものとはいえ、北朝鮮のミサイルについては杞憂では終わらない。

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