『文藝春秋』 (今月買った本) 08年2月原稿

成毛 眞2010年03月15日 印刷向け表示
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篤姫―NHK大河ドラマ歴史ハンドブック (NHKシリーズ)
作者:
出版社:NHK出版
発売日:2007-12
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動物の値段―シャチが1億円!!??
作者:白輪 剛史
出版社:ロコモーションパブリッシング
発売日:2007-09-25
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ヒトは食べられて進化した
作者:ドナ・ハート
出版社:化学同人
発売日:2007-06-28
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眠れない一族―食人の痕跡と殺人タンパクの謎
作者:ダニエル T.マックス
出版社:紀伊國屋書店
発売日:2007-12-12
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感染地図―歴史を変えた未知の病原体
作者:スティーヴン・ジョンソン
出版社:河出書房新社
発売日:2007-12-11
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消えたカラヴァッジョ
作者:ジョナサン・ハー
出版社:岩波書店
発売日:2007-12-12
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神々の杜
作者:石橋 睦美
出版社:平凡社
発売日:2007-12
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35分の1スケールの迷宮物語
作者:モリナガ・ヨウ
出版社:大日本絵画
発売日:2003-12
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この月に紹介した本は、時期ものの『篤姫』をのぞいて、おすすめ本ばかりだ。後日、別に書評を書いたものも数冊ある。

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毎回の視聴率が二十%を超える今年の大河ドラマ『篤姫』。買ったのは宮尾登美子の原作ではなく、NHKのガイドブックの方である。これがなかなかに面白い。大奥や幕末のエピソードをイラスト付きで紹介し、ゆかりの地のカラー写真なども充実している。

この本で、あらためて幕末のヒーロー達の没年を確かめたのだが、過去の大河ドラマで得た印象とはまったく違うことに驚いた。昭和三十八年に放送された大河ドラマの一作目「花の生涯」の主人公井伊直弼は四十六才で暗殺されている。二代目尾上松緑が演じたためか、見る側が子どもだったためか、直弼は六十才代の印象が強い。

島津斉彬は五十才、大久保利通は四十九才、堀田正睦は五十五才で亡くなっている。全員七十才代まで生きていた印象があるのが不思議だ。ところで、この本はA5版百六十ページ平綴で九百五十円もする。原作は文庫上下巻で千四百円と安上がりだ。

同額の千四百円で買ったのは『動物の値段』という本。帯には「シャチが一億円!」とあり興味をそそられた。驚いたのは生きているシーラカンスもやりようによっては買えるということだ。その値段は三億円。ほかに数億円の飼育施設が必要だそうだ。

反対に安くて驚く動物はライオンである。その値段はなんと四十五万円だという。血統の良いプードルや豆柴より安いかもしれない。ツキノワグマも安い。三十万円。これならうウチでも買えると、興奮してしまうけれど、飼ってからが大変である。著者によると、飼育するのには食い殺されても恨まない覚悟が必要だそうだ。

その猛獣たちに食い殺されつづけために人類は進化したという仮説を提示しているのは『ヒトは食べられて進化した』だ。ライオンやクマだけなく、ハイエナやイヌ、ヘビやワシもヒトを狙っていた。かれら捕食者から身を守るために、人類は二足歩行をするようになり、道具を発明し、ついには社会を形成したというのだ。人類は互いに協力することで生き延び、ゆえに社会性が最初から備わっているという、いわば進化論的性善説である。

京都大学の山極寿一先生がこの本の解説の結びで「エネルギーコストの高い脳を大きくするためには、やはり肉食への移行を無視できない」と書かれている。つまり、人類は捕食者でもあって、その結果として現在の姿になったということである。専門家の手による本だとはいえ、一冊読んだだけですべてを理解したような気になるべきではないのだ。

肉食の中でも究極は共食いである。最近では肉骨粉飼料によって牛が共食いを強制させられ、その結果として発生した狂牛病が人間に感染するという恐ろしい事態が起こった。ほとんどの動物が共食いをタブーにしている理由がここにあるらしい。いっぽうで、数十万年前には人類が共食いをしていたという仮説を立てているのが『眠れない一族』だ。

中世ヴェネチアから現代まで続く貴族家系の遺伝病に、中年になると不眠症を起こして死にいたるという奇病がある。研究者たちによってその原因が狂牛病と同種のプリオンという蛋白質だと判明するのだが、この本がじつに面白い。

話の運びはゴシックホラーのような中世から、現代のパプア・ニューギニアの食人部族にとび、研究者の権力闘争にまで発展していく。この研究者には後日談があり、ノーベル賞受賞者であるにも関わらず研究対象の食人部族の子どもたちを養子にしたうえ、小児性愛を行ったとして実刑に処せられている。

今月はほかにも十九世紀のロンドンを舞台にした『感染地図』や十七世紀のローマと現代のアイルランドを舞台にした『消えたカラヴァッジョ』など、ヨーロッパを舞台にした秀逸なノンフィクションの大収穫月だった。

ヨーロッパ漬けの口直しとして写真集『神々の社』を買った。全国の五十近くの神社をめぐり、社すなわち鎮守の森をデジタルカメラで撮ったものだ。奇をてらったカットは一枚もなく、かといってアマチュアでは一生に一枚撮れるかどうかという写真ばかりだ。

デジタルで撮ったことで、街路灯などを画像処理で取り去ることができたらしい。写真芸術の今後の方向性が見えてくる。また、暗い部分を鮮明に撮れるデジタルのおかげで、全体に影の部分の多い写真集に感じられた。そこがまたこの写真集の新鮮なところでもあると思う。

最後は同じ大判の『35分の1スケールの迷宮物語』だ。子どものころにプラモデルを作ったことのある中高年男性必見の一冊である。初版は二〇〇四年なので古いのだが、なにしろテーマは三十年から四〇年前の話だから新鮮味には問題はない。百ページにわたり細密なイラストで当時の工具や塗料、模型店の内部やプラモデル作りについて回顧する。二千円なのだが一ページのイラストが非常に丁寧なため、十分にもとが取れる。じっくり読むと一頁に三十分かかる。じつはこの本に刺激され模型店に走った。工具を揃え、エアブラシのセットも買った。そして、すでに戦車を三両作り終えた。しばらくはプラモ三昧である。

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