『ずぼら人生論』 週刊朝日4月18日号 「ビジネス成毛塾」掲載

2010年4月9日 印刷向け表示
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「ずぼら」人生論

作者:ひろ さちや
出版社:三笠書房
発売日:2010-01-27
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著者は元気象大学校教授で宗教評論家のひろ・さちや氏である。御年74歳にして本書『「ずぼら」人生論』を書いた。現代の奇書であり、悩めるビジネスマンを半々の確率で完全に元気にさせるか、さらに悪化させるかという、博打的ともいえる人生指南書だ。

拙書『大人げない大人になれ!』の比ではない。呆れるほどの大人げなさ、年寄りげのなさだ。見出しから抜き出してみよう。

「つきあいたくない人とはつきわない」や「かくあらねばが人生を窮屈にする」、「自分らしく、その仕事をやればよい」などは普通の大人げなさだ。納得感はある。

しかし、「犯罪者になる覚悟はあるか」や「生まれたついでに生きる、という考えかた」、「国ごときが滅びても大したことではない」となると、かなりの覚悟がいる。

ご本人もそろそろ後期高齢者なのだが、日本の社会を悪くした張本人たる70代以降の老朽世代であり、老害だと言い切ってしまう。

ガンジーが清貧に生きるために周囲がどれくらいお金を使っていたかを言い立てる。たしかにロンドンの会議に素足でヤギを連れていったのだから、カネがかかったことであろう。

そして尊敬に値する人として、気象大学校を定年退職するときに「私は今日までずっと6分目の力で働いてきました。わたしの能力をもってすれば、全力を出しきっては損をしてしまいます。」と挨拶した人を引き合いにだす。

これで驚いてはいけない。「わたしたちはもっと犯罪者になろうよ」という提案がすごい。この場合の犯罪者とは比喩ではない。350万人もいる失業者がいっせいに刑務所に入ったら、国家も国民のほうを向いた政治をやるようになるだろうというのだ。

もうめちゃくちゃなのだが、仕事上で失敗しても嫌われても、生きてさえいれば丸儲けだという迫力がある。会ってみたいジイさまだが、それはそれで勇気が必要かもしれない。

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後記:最後に「それはそれで勇気が必要かもしれない」と書いたのは、20年後に自分が同じようになっていそうで怖いという意味である。あくまでも前向きなのだがムチャクチャだというジイさまだ。

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作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
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