『市川海老蔵』

成毛 眞2010年06月09日 印刷向け表示
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市川海老蔵 成田屋の粋と艶 (和樂ムック)
作者:市川 海老蔵
出版社:小学館
発売日:2010-04-19
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「海老さま」の写真集である。「純粋海老さまファン」ではない、単なる「一般歌舞伎ファン」でもすこぶる楽しめる写真集だ。

素顔の海老蔵は中村屋のアリゾナ別荘近くでリラックスしている3葉だけだ。浴衣を着て稽古中の数葉を別にして、すべて化粧をして芝居中の海老蔵である。しかも、ほとんどがバスト・ショットより寄っている写真だ。力が画面全体に漲っていて、陳腐すぎる表現だが「ド迫力」の写真ばかりだ。

つまり、ありがちな役者の素顔などという「あー、この人もフツーの人なのか」的にゲンナリするようなものはない。「役者を見物しに行く」という歌舞伎の心意気を写真集にしたものだ。舞台上の役者こそが花なのである。

目次前までのアップ写真は「にらみ」「鳥居前の忠信」「鳴神上人」「女殺油地獄の与兵衛」。目次あとも「雷船頭」「暫」「累」などがどんどん出てくる。続いて「毛抜」「富樫」「弁慶」「藤娘」「高時」などからパリ・オペラ座公演と続く。「紅葉狩」では赤姫の更科が本性をちらっと見せた瞬間の、素晴らしい見開き写真だ。

と、ここまででまだ全体の3分の1である。海老蔵のアップ写真をみながら、別の役者による記憶に残った芝居を思い出すもよし。衣装をクローズアップでたっぷり拝見するもよし。それゆえに海老さまファンでなくとも楽しめる所以である。

経済の宴もとうに終わり、安物が溢れかえるこの時代に、日本人で良かったと思えるひとつは、11代目海老蔵と5代目菊之助を見ることができることだ。同年代の亀井広忠や田中傳左衛門などを加えて、伝統芸能の世界では30代前半の連中が最前線に立ちはじめたように思う。

他の世代においても、まずはスポーツマンや芸能などで突出した人たちが現れ、ビジネスマンがそれに続くのが通例だ。その世代で最も突出している人が、世代全体を上に引っ張りあげるという印象がある。わが1955年生まれには勘三郎やスティーブ・ジョブスなどがいて、同年代を引っ張り上げてくれたように思う。30代からは海老蔵などにつづき、どんなビジネスマンが出てくるのだろう。楽しみである。

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