秋の夜長に備えて買いためている本 単行本編 第1部

成毛 眞2010年10月17日 印刷向け表示
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いよいよ読書の秋である。秋の夜長をじっくり楽しむためには、事前に本を仕入れておかなければならない。目の前に山と積んで、こいつらはさぞかし面白かろうとニヤニヤしながら酒を飲むのも楽しみのひとつであるからだ。

ナポレオンの妹
作者:フローラ フレイザー
出版社:白水社
発売日:2010-09-18
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『ナポレオンの妹』

美しい装丁の本だ。韓紅(からくれない)を背景に、主人公であるポーリーヌの大理石像が配置されている。ボルゲーゼ美術館に「勝利のヴィーナス」として展示してあるものだ。「妖婦か?ヴィーナスか?」と美味しそうな文句が書かれた帯には透かしが入った紙を使っている。本マニアにはたまらない。ナポレオンは8人兄弟だったが、そのなかでもっともナポレオンが愛していたのは11歳年下の次女ポーリーヌだった。天真爛漫で、ヨーロッパ一の美貌を持ち、ファッションセンスや社交にも優れていたらしい。やがてナポレオンがエルバ島に送られたとき、唯一訪ねてきたのがポーリーヌだという。ともあれ、本書は歴史書というよりは当時のヨーロッパの社交界や社会風俗をじっくりと眺めるという趣向が強そうだ。色男メッテルニヒをして「ポーリーヌ・ボナパルトは、このうえなく最高に美しかった」などと言わしめる。「彼女は(デュマ)将軍の膝の上に自分の足をのせ、スリッパのつま先で彼の上着のボタンをもて遊ぶのだった。」などとじつに色っぽいのだ。まさに大人が秋の夜長にじっくり楽しむ一冊だ。


世紀の空売り
作者:マイケル・ルイス
出版社:文藝春秋
発売日:2010-09-14
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『世紀の空売り』

じつはかなり読み進めている。経済事件のノンフィクションなのだが、登場人物がとても魅力的なので、小説と勘違いしてしまいそうになる。それもそのはずで、著者は『ライアーズ・ポーカー』『マネー・ボール』などのヒットを飛ばしたストーリーテラーである。目次を見てみると、CDOやCDSなどについてもきちんと説明をしているようだから、サブプライム問題の入門書にもなりそうだ。訳者は『ライアーズ・ポーカー』『犬の力』『ストリートキッズ』などの東江一紀氏だ。今年の経済ノンフィクションの上位に位置することは間違いない。


捕食者なき世界
作者:ウィリアム ソウルゼンバーグ
出版社:文藝春秋
発売日:2010-09
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『捕食者なき世界』

文藝春秋翻訳出版部の生物多様性第2弾だ。初弾は『地球最後の日の種子』であり。すでにこのブログで絶賛してしまった。本書も第1章だけは読んでみたのだが、初弾を勝るとも劣らない。2作品を続けて褒め称えるのはあまりにも悔しいので、本格的に読み始めるのを後回しにしているのだ。まさに読書の秋のために備蓄したお楽しみ本である。ともあれ、第1章は生態系のダイナミクスを調べるために、磯辺でヒトデを拾っては遠くに投げ続ける科学者の話だ。ヒトデという磯の捕食者がいなくなっただけで、15種いた生物は8種に減ってしまったのだ。2章以降からは深海や陸上はどうなのかと問いながら、話は壮大に展開されるはずなのだ。

「普天間」交渉秘録
作者:守屋 武昌
出版社:新潮社
発売日:2010-07-09
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『「普天間」交渉秘録』

アマゾンに発注したのは9月6日なのだが、届いたのは1か月ほどあとだった。いまも品切れである。いったい何があったのだろう。発売されたのは7月である。このたぐいの本はある程度の評価が出てからでないと買わない。思い込みの強い人に付き合う暇はないからだ。しかし、読むに値するという評価が出揃ったころには、すでに何千人も読んだということであり、それはそれで悔しく、読み始めるのは後回しになってしまう。ともあれ、ここ数年は佐藤優を先鋒にして「悪者」が面白い本を書いている。建前と予定調和の住人である「良き人々」はさまざまな分野で、影が薄くなってきているように見える。「本音」を「ぶっちゃけ」る時代に入りつつあると思う。

日米秘密情報機関 「影の軍隊」ムサシ機関長の告白
作者:平城 弘通
出版社:講談社
発売日:2010-09-17
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『日米秘密情報機関』

本当に「ぶっちゃけ」たのは本書の著者だ。知る人ぞ知る「陸幕2部別班」の機関長だった人物による回想録だ。そもそもこの組織は公式には存在していなかったようだし、防衛庁長官(現在の防衛相)にも報告はしていなかったというのだ。まさに「闇の軍隊」なのだ。いまも日本のどこかに同様の組織は存在しているのだと思う。陰謀論は大嫌いなのだが、このような組織が存在していなければ、ある意味で国家の体をなさないとも思う。本書についてはアマゾンのレビュワーMT氏のレビューが興味深い。いかにも退役将官が現役自衛隊幹部にたいして本書を語るという体なのだ。青壮年各位はそのつもりで本書を手にとられたい。

知はいかにして「再発明」されたか
作者:イアン・F・マクニーリー
出版社:日経BP社
発売日:2010-09-16
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『知はいかにして「再発明」されたか』

じつのところありがちな書名だ。アレキサンドリア図書館からグーグルへ、途中にグーテンベルグとWWWをまぶすという感じの本は多数見かけたような気がする。しかし、本書の帯には「図書館、修道院、大学、実験室、そしてグーグル……」とある。「修道院」とは新しい。それゆえに本書を買った。ともあれ、著者紹介が貧弱である。苗字の違う二人は夫婦なのか、住んでいるユージンとはどこなのか、研究歴や著書についても記述はない。このたぐいの本はそこが貧弱だとじつに買いにくいのである。ざっと読んでみてかなり良い本であるがゆえに惜しい。かろうじて翻訳者の解説に2人の研究歴が載っている程度だ。

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