『キュレーションの時代』 産経新聞 2月19日号 書評欄掲載

成毛 眞2011年02月20日 印刷向け表示
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キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)
作者:佐々木 俊尚
出版社:筑摩書房
発売日:2011-02-09
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著者は冒頭で、本書のタイトルにもなっている「キュレーション」の定義をしている。すなわち「無数の情報の海の中から、自分の価値観や世界観に基づいて情報を拾い上げ、そこに新しい意味を与え、そして多くの人を共有すること。」だ。

この機能がツイッターやフェースブックなどのソーシャルメディアに組み込まれることで、とりわけメディアや広告業界を取り巻く環境は大きく変わるのだと、未来予測をしてみたのが本書である。

このように紹介すると、凡百のネット評論本のように聞こえるかもしれない。しかし、本書は膨大なコンテンツを、まさにキュレーションしながら紹介することで、じつに読み応えのある「社会哲学書」にまで仕上がっているのだ。

取り上げられているコンテンツは、画家のジョゼフ・ヨアキム、ミュージシャンのエグベルト・ジスモンチ、アウトサイダーアートのヘンリー・ダーガーなど意外性のある20人を超える人物たち。茶道の一座建立、フォースクウェアやハフィントンポストなど、時空を超えた概念やサービスなどである。

著者は「あとがき」で、新しい生態系が生まれつつあると説く。その生態系を構成する無数の存在を説明するためにも、過剰とも思われる人物や概念の紹介が必要だったのである。しかも、それぞれのエピソードは丁寧で、過不足がない。

著者はまた、21世紀は「記号消費」から「機能消費」と「つながり消費」の時代になると予測している。死刑囚の永山則夫を取り上げて「記号消費」を説明し、新たな「清貧の思想」が生まれつつあると説く。草食系と若者を侮蔑していた中高年こそが大衆消費のなれの果てだと言い切るのである。

本書をメディア関係者や広告業界人だけでなく、ビジネスマンにも学生にもお勧めできるゆえんである。新書のフォーマットに収まっていることが奇跡のような本である。

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かなり前のめりに書評しており、興味の対象も似ているので、著者とは旧知なのだろうかと思われた読者もいるかもしれない。じつは著者とはお会いしたこともなければ、お話したこともないのである。ツイッターで2-3回ツイートし合っただけである。

ボクは「本のキュレーター勉強会」を主催しているのだが、このキュレーターという言葉を知ったのは佐々木さんの古いツイートからだった。そのため、仁義を切っておこうと思いツイッターで連絡したところ、本書を献本いただいたのだが、自分でもちゃんと別に買った。本書は2冊持っていてもおかしくない本だと思う。つまり、1冊は電子化するつもりである。

ところで、本書が取り上げている画家のジョゼフ・ヨアキム、ミュージシャンのエグベルト・ジスモンチ、アウトサイダーアートのヘンリー・ダーガーなどの人物たち。茶道の一座建立、フォースクウェアやハフィントンポストなどの概念やサービスなどについてだが、じつのところ本書を読むまではほとんど知らなかった。かろうじてアウトサイダーアートに興味を持っていたくらいなものである。視野を広げるという意味でも、本書は面白かった。

著者はテーマとは別にいくつかの重要なサブテーマ、メッセージを発信している。そのメッセージを見つけだすことも本書の読み方の一つである。21世紀は「記号消費」から「機能消費」と「つながり消費」の時代になるという予測はその一例だ。新聞上の書評ではテーマとメッセージの違いをうまく表現できなかった。

新聞上の書評には字数に制限がある。もう少し付け加えたいこともあるのだが、おそらくは大量に書評が登場するであろうから、あえてこのまま掲載することにした。万人にとって買って損はないという本は少ない。とりわけテーマが時流に沿った本の場合は必ずや賛否があるはずだ。しかし、本書のその僅かな例外である。買って損はなく、読んでがっかりしないことだけは疑う余地がない。書評中でも触れているように、本書は「社会哲学書」の領域にまで達しているからである。

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