大正時代のおしゃれ女子『モダンガール大図鑑』

田中 大輔2012年12月21日 印刷向け表示
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モダンガール大図鑑 ---大正・昭和のおしゃれ女子 (らんぷの本)
作者:生田 誠
出版社:河出書房新社
発売日:2012-11-23
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大正という時代にはとても浪漫を感じる。日本の古き良き時代といったときに想像するのがこの時代だ。エロ・グロ・ナンセンスといった大衆文化が花開き、ファッションは和洋折衷で独自のスタイルが形成されていた。なかでも『はいからさんが通る』に出てきたような袴にブーツというスタイルはいま見ても魅力的である。また大正時代のキモノは柄が大胆で斬新なものが多い。アール・デコ調のものなどもあり、現代でも通用するような素晴らしいデザインのものが多くある。アンティークのキモノはこの時代のものが、とても人気があるそうだが、デザインをみているとそれもうなずける。

私は東京駅の駅舎が大正時代の姿に復元されたことをきっかけに、大正時代ブームがくればいいのに!と思っている。昔から大正デモクラシーという言葉の響きが好きで、灯台下暗しというときには、つい灯台モトクラシーと、大正デモクラシーのイントネーションでいってしまう癖があるのだ。と話が脱線した。とにかく、大正時代にはなにか心惹かれるものがある。そんな私が、見つけて心踊った本が今日紹介する『モダンガール大図鑑』である。

“キュートで可愛くて、おしゃれでモダン。セクシーでちょっとキッチュ!”という帯の文言の通り、大正末~昭和初期に存在したおしゃれ女子である「モダンガール」の生態や風俗を、当時の写真や、絵葉書などを元に紹介した本である。この本をきっかけに少しでも大正浪漫に興味を持ってもらえたらこんなに嬉しいことはない。

「モダンガール」と言われてもピンと来ない人も多いだろう。「モダンガール」というのは大正末期から昭和初期にかけて存在した、近代的で新しいタイプの女性のことである。男性から自立し、職業について、自由を謳歌した女性たちのことだ。キャリアウーマンのさきがけのようなものかもしれない。

和服から洋服に着替え、髪を短く刈り、ハイヒールを履いて銀座などに繰り出し、カフェ、シネマ、デパートといった文化や娯楽を享受した。彼女たちのパートナーには、洋装に身を包むモダンボーイがいて、「モボ・モガ」と総称されたりもする。「モボ・モガ」ともに世間からは軽薄な印象を持たれており、当時は冷ややかな目で見られていたようだ。

「モダンガール」の特長といった後頭部を青く剃り上げる断髪の髪型だろう。この本の表紙に描かれている女性のような髪型である。「毛断嬢」すなわち「モダンガール」という表記もみられる。その上にクロッシェやベレー帽など帽子をかぶるのが当時のスタイルだったようだ。

この時代には男性も女性も帽子をかぶっていたように思う。スーツやキモノに中折れ帽やパナマ帽をあわせるといったスタイルは、いま見てもかっこいいと思うのだが、いつから日本人は帽子をかぶらなくなってしまったのだろう?私は帽子が好きなので、この時代のスタイルにはとても憧れる。夏に浴衣を着るときは必ずパナマ帽をかぶって大正浪漫を気取っている。

モダンガールは職業婦人(現代でいうホワイトカラーの仕事)についている人が多かったが、中には繁華街や盛り場で男性客を相手に働く人もいた。その中には特殊な職業がいくつか存在した。「ステッキガール」や「リップガール」、「円タクガール」である。

「ステッキガール」は銀ブラをする男性のお供をする女性。時間制による即席の彼女だそうだ。「リップガール」は「キスはいかが?」と声をかけ、キスを売る女性。「円タクガール」は街頭や車内から、円タク(均一料金のタクシー)に乗る乗客を招く女性である。不思議な職業が色々とあるものだ。

そうそう、銀ブラという言葉は銀座をぶらぶらすることの略ではなく、「銀座でブラジルコーヒーを飲むこと」からきているらしい。その語源となったブラジルコーヒーをだす店はいまも銀座にあるそうだ。「カフェーパウリスタ」というのがその店だ。いったことがないので今度いってみようと思う。

モダンガールにはアルコールと煙草がよく似合う。モダンガールの資格十ヵ条に「洋酒と名のつくものはひと通り呑んで、しかも名前を覚えなければならない」という項目がある。この時代、一般女性もカクテルをたしなむようになっていたらしい。

またビールのポスターにはモダンガールが多数登場している。この本の表紙のポスターをはじめ、昭和初期のビールのポスターにはさまざまなモダンガールが描かれている。これがどれも魅力的なのである。

現代でいうところのキャンペーンガールのようなものなのかもしれない。現代でも写真を使わず、このような絵を使ったらいいのにと思ってしまうのだが、それはただの懐古趣味だろうか。またタバコをくゆらす優雅な女性像を描いたポスターや広告といったものも多数存在する。これらがまた魅力的だ。

モダンガールを描いた画家というのも多数存在する。有名なのは竹久夢二や中原淳一だろう。竹久夢二は大正ロマンを代表する画家だが、昭和に入ってからは断髪のモダンガールをいくつも描いている。中原淳一が活躍したのは「モボ・モガ」が存在した時代よりもだいぶあとのことだが、彼の描く少女はモダンガールの特長を残すものが多い。

レビューを書くときにモダンガールを調べていたらこんな動画があったので、それを紹介してレビューを終わることにする。

「銀座モダンガール」

昭和5年に発売された流行歌だそう。モダンガールの姿を歌った歌。

「東京節」

昭和初期の東京の姿が映し出されている。銀座を歩くモボ・モガの姿も散見できる。戦争前の東京の町並みはとても魅力的だ。

この1冊であなたもきっとモダンガールが好きになる!

本文にもあげた「モダンガールの資格十か条」がこの本に書かれている。下の条を読んでついポチってしまった。

“第十条 己に利害関係のある男性のすべてには、まず唇を提供すべし。彼がどんなにハゲチャビンたりとも醜男たりとも躊躇してはならない。そしてその際必ず「あなただけよ」とささやくべし。なべて男は甘きなり。ただし「貞操」は提供すべからず。「貞操蹂躙」「慰謝料請求」の訴訟沙汰は、もはや過去の遺物である。”
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