『ヒッグス粒子とはなにか』新刊超速レビュー

成毛 眞2013年02月21日 印刷向け表示
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ヒッグス粒子とはなにか? 素粒子物理とヒッグス粒子の世界を追う (サイエンス・アイ新書)
作者:ハインツ・ホライス
出版社:ソフトバンククリエイティブ
発売日:2013-02-19
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正直に言おう。ヒッグス粒子をまったく理解できないのだ。子供のころからブルーバックスなどで素粒子論や宇宙論を読んできたから、クオークやビッグバンまではなんとか判ったような気でいたのだが、ヒッグス粒子については読んでも読んでもまったく理解できない。つまり、クオークもビッグバンもちゃんとは理解していなかったというわけだ。

それでは本書でヒッグス粒子を判ったかといえば、やはりまったく理解できない。ヒッグス機構とはゲージ対称性の自発的やぶれに関する理論などと説明されても、なにがなんだか判らない。ヒッグス粒子発見は世紀の出来事であり、それは出版界の期待の星だから、日本でもここ数ヶ月で10冊近い書籍やMOOKが出版されている。そのほとんどを手にとったが、ぜんぜん理解できない。

それは物理学者以外にとって共通のようで、本書にはイギリスの新聞ガーディアン紙が掲載したヒッグス粒子のいろいろな説明方法がしるされている。そのなかで秀逸なのは車のバックシートに座っている子どもに説明する方法だ。

「それはね、科学者たちがずっと探していた粒子なんだ。そのおじさんたちはね、それがないと宇宙がなくなってしまうって知っていたんだ。ほかの粒子に質量がなくなるからなんだ。それはほかの粒子がみんなずっと光の速度で飛び続けるからさ。光子みたいにね。お前がまだ ”どうして?” と聞いたらバーガーキングで止まってやらないからな。」

まさにそのとおり。そこまでは判るのである。しかし、子どもの次の質問「どうして?」の答えがいきなり「対称性の破れ」などになってしまうわけで、ここからチンプンカンプンになってしまうというわけだ。

とはいえ、ヒッグス粒子を探すプロジェクトはじつに壮大で、それを眺めているだけでも心楽しくなってしまう。人類はここまできたのかと、嬉しくなってしまうのだ。ヒッグス粒子を発見したとされるLHCという装置は、地下100メートル、円周27キロメートルのドーナツ型のトンネル内に設置されている。陽子を山手線ほどの円周をもつ装置内でぶっ飛ばし、光速近くまで加速する装置だ。

この中で1150億個の陽子はひとつのかたまりとなって毎秒1万回回転する。この1150億個の陽子のかたまりの重量は10億分の1グラムでしかない。しかし、加速されることで走行中の新幹線の運動エネルギーに匹敵する重さをもつことになるというのだ。

やがて互いに反対方向に回っていた2つの陽子のかたまりは検出器のなかで衝突する。この検出器の重量は7000トンあまり。原子よりも陽子よりも小さい粒子を検出するのは超巨大な実験設備である。

19世紀の普通の人にとって、電磁気学の研究などチンプンカンプンだったはずだ。しかし、電磁気学がなければ電気にたよる現代社会はまったく成立していない。電磁気学よりもっと理解しにくい20世紀の量子力学も同様で、それがなければ半導体が生まれずインターネットもスマフォも存在していない。ヒッグス粒子やダークマターなども同様、100年後の子孫たちであればぼんやりとでも理解しているかもしれない。

このレビューを書きながら、国際リニアコライダー計画の応援団をしていたことを思い出した。日本の誇りをかけてILCを誘致したいのだ。

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