『飽きる力』

高村 和久2011年01月21日 印刷向け表示
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飽きる力 (生活人新書 331) 『飽きる力 』

河本 英夫

日本放送出版協会 (2010/10/7)

全国一千万の飽きっぽい皆様、こんにちは。高村です。

書評も二回目ともなると疲れてきますね。フー。

私の飽きっぽさは折り紙つきだ。どれくらい飽きっぽいかを説明するのは、めんどくさいからやめておく。

会社の先輩は、あっちこっちフラフラしやがって、と言った。実に言い得て妙である。

母親に至っては「この子はくせ者なのよ」と言った。誰の教育の賜物だ。最近はテレビに飽きた。そして、テレビを見ないのにも飽きた。そろそろ一念発起して、ヒップホップ講座でも録画するか。

というわけで本書である。なにかが根本的に違う、どうも、うまく行く気がしない。でも、原因が何かは解らない。そんな時、我々はつい「もっと頑張らなければというふうになってしまう」。

だが、そこで「頑張る」のは実は思考停止であって、なにか別のオプションを見落としているかもしれない。生理的になにかがおかしいと思う時、がんばらないほうが良い場合があるのだ。

7連覇した神戸製鋼は、何か練習しようとすると「それは昨日もやったから飽きた」と主力選手が言ったそうだ。そして、これまでとは違うことをした。イチローも松井も、毎年フォームを変えているらしい。

自分を歯車に例えれば、「頑張る」のは、めちゃめちゃ高速回転しているようなものである。効率は上がるが、それでは解決できない問題がある。全体と協調できなければ、頑張ると効率が落ちることすらある。そのような時、つまり、本来の構造からして変えなければならぬ時、このままやっていてもしょうがない、と飽きるのだ。つまり、飽きるというのは、察知能力だ。自分自身を成長させるため必要な能力だ。

本書は、カジュアルな喩えが多用されていて理解しやすい。例えばこんな感じである。

「ウサギとカメの競争であれば、普通にレースを行えば、ウサギが勝つに決まっている。カメの興味深い点はコツコツがんばったことではなく、普通にやれば負ける勝負、確率的にはほとんど勝ち目のない勝負に、さっそうと登場していることです。」

「ひどい場合には、一方が「日本の社会はつらいね、うまくいかないね」と言うと、同じことを感じ取っている相手はもっと深刻になり、「現在の世界はつらいね」となります。それを聞いた一方の人はさらに深刻になって 「生きているのはつらいね」ということになり、相手も負けてはおらず、「人生はつらいね」となって、どちらからともなく「今度の日曜日にはいっしょに浅間山に行こう」というような雰囲気が出てくることもあります。」

著者は科学史・科学哲学科に進学し、極めて順調に研究を進めていたが、大いに壁にぶち当たる。そして、そこで「オートポイエイシス」に出会う。 本書は、オートポイエイシスの入門書でもある。私がぼんやりと理解したところでは、それは赤ちゃんが歩くのを学ぶように、1つの経験が次の経験を誘発する形で進行する形式を言う。何が誘発されるのか、やってみるまでわからない。身体全体で理解しないと、歩けるようにはならないのだ。著者は、実際にそれをリハビリテーションに応用している。リハビリで動けるようになるためには、動かしたい部分だけを鍛えても無意味で、脳神経が全体的に再構成されるような運動が有効だ。外部から何かをコントロールする方法ではなく、漠としたところに入り混じり、解が徐々に浮かび上がってくるようにするのである。方法は、その過程で導出される。そこには、予め決まった「作戦」や「パターン」は無い。

「展開が予想できるものは捨てる」とあるように、本書が薦めているのは、将来の未知のオプションを増やすことである。 そのためには、「心のゆとりが必要」で、「選択のための隙間を開くことが必要」だ。それがきっと、飽きる力だ。同様な記事を、たまに見る。旅をすると新しい考えが思いつく、とか。自分も、これからも飽きていきます!明日に向かって。次は、もっと堅い文章にするよー。

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