『ハーフ・ザ・スカイ』

高村 和久2011年05月01日 印刷向け表示
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ハーフ・ザ・スカイ――彼女たちが世界の希望に変わるまで 『ハーフ・ザ・スカイ』 ニコラス・D・クリストフ(著) シェリル・ウーダン(著) 北村陽子(訳) 英治出版 (2010/10/13)

希望には二種類あると思う。

こんなことを言い始めるのはもちろん『まどかマギカ』を見たからだが、友人に子供が産まれた時にも同じことを考えた。「とにかく、なんでもいいから普通に元気に育ってください」

自分がなりたいと願う「希望」と、周りの人が誰か(何か)の将来について願う「希望」があるなあと思う。後者は、利他的であれば「祈り」に近い。

本書は人身売買、暴力、貧困、妊産婦死亡の現状と、そこで活動する女性達について書かれた本である。

2002年7月、パキスタンの少女ムフタールは、地元の有力者に弟が暴行され、さらに裁判において濡れ衣を着せられて自身が強姦された。このような場合、パキスタンでは、被害者の女性が名誉のために自殺する。しかし死にきれず、警察に訴えた。当初はムシャラフ大統領まで勇気ある行為と称賛したが、事が国際的なニュースになると一転して弾圧に転じた。パキスタンに構造的な強姦が存在するのは都合が悪いのだ。加害者が釈放され、電話線は切られ、政府による誘拐・脅迫を受けた。でっちあげの罪状で兄弟が逮捕された。これに負けず活動

し、虐待の支援団体を設立し、女子高を設立した。結果として貧困地域の女性の強姦が減少した。

35歳で6人の子持ちのゴレッティは、学校に通ったことがなく、お金を使ったこともなかった。外出するには夫の許可が必要だった。夫は週三回飲み歩き、2ドルを使った。可処分所得の30%である。怒るとゴレッティを殴った。

ある時、海外援助救援協会のプログラムの存在を知り、怒られるのを承知で遂に一人で外出した。そして女性20人のチームで仕事を始め、2ドルを借りてジャガイモ畑を作った。7ドル50セントになった。残りの資金でバナナビール・ヤギと投資していき、夫を養い、入院代を代わりに払うまでになった。こうして、女性は黙っていろという文化のなかで、意見を言っても大丈夫な地位を持った。

何かを変えたいと活動を始める人の割合は、ロジャースモデルの「イノベーター」に近いと思えば全体の2.5%パレート則で考えるなら20%だ。社会企業家と言われる人は1000万人に1人だと言う。つまり、孤独だ。現在、世界には史上最大の300万人の性奴隷がいて、暴力で維持されている。多くは薬漬けだ。自分に何ができようか。

でも、希望を持って何かを行うという、それ自体が、同じ価値観の人にとっての希望だ。同類が10人中2人しかいなくても、1人の活動自体がもう1人を勇気づけるだろう。

そんな希望同士の交流(?)が個人の幸福感にも繋がるかもしれない。そうでなければ "Teach for America"

が就職ランキング1位になるはずもない。他の人気企業についても同様で、夢がある会社というのはそういう意味だろうし、ブランドイメージが良い時、顧客がその企業を「希望」として見ているということがあるだろう。

だから自分も、なんでそんなことするの?と言われそうな、無駄で無理そうな希望を言ってみたいと思うし、妙なことにチャレンジして凹んでいる人を応援していこうと思う。

インターネットは個人の力を強くすると言ったのは誰だったか。それは情報の非対称性を無くすという意味だけでなく、孤独な希望を交流させる効果をもっているだろう。ネットがいよいよ普及してきて、これからもしかしたら面白い時代が来るのではないかという希望をなんとなく持っている。

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