『ハウス・オブ・ヤマナカ』

高村 和久2011年05月10日 印刷向け表示
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ハウス・オブ・ヤマナカ―東洋の至宝を欧米に売った美術商

『ハウス・オブ・ヤマナカ - 東洋の至宝を欧米に売った美術商』 朽木ゆり子(著) 新潮社 (2011/03)

歴史はあまり詳しくない。高校の頃、授業中は寝ているか、図書室でアルバムを見ていた。おばちゃんがいつもピーナッツをくれた。もしくは部室でトランプなどをしていた。冬になり“近現代”まで来た頃には仲間も増えた。先生には当然見つかった。確か『To-y』を読んでいた時だったか、体育の先生が巡回にきて、気付かずにいた私から本をとり上げ、数ページ読み、「接吻ですか」と侍のように言って去って行った。

そういう内容のマンガじゃないのだが、それはさておき、ゆるい時代だったなあ。今だったらいろんな人がいろんなポイントで目クジラを立てるだろう。そんな私もりっぱに大人になって、こんな感想を書いたりしている。

そんなわけで、要は、本書で書かれている「幕末から終戦までの時代」がいまいちイメージできないのだ。本書の主役の1人である山中定次郎は、修行中にアメリカ渡航を思い立って出奔し横浜で追手に捕まった。自分の曾祖父も、黒船に乗り込んで密航しようとして連れ戻されたらしい。この時代どんな感じだったんだろう、と思う。

本書は、戦前に海外で活躍した美術商「山中商会」の第2次大戦終了時までが詳細に書かれていて、明治の空気がじんわりと感じられる。歴史に詳しい人が読んだら更に楽しめそうだ。

山中定次郎が産まれた時には、まだ幕末だった。その後に生きた時代はこんな風である。

2歳:明治維新(明治元年)

3歳:アメリカ大陸横断鉄道完成

5歳:廃藩置県・断髪令

6歳:新橋-横浜間に鉄道開通・太陽暦を採用

10歳:廃刀令・ベルが電話機を発明

11歳:エジソンが蓄音機を発明

13歳:エジソンが電灯を発明・シーメンスが電車を発明

16歳:日本銀行開設

18歳:ダイムラーがガソリンエンジン車を発明

19歳:山中定次郎 大阪から出奔するもアメリカ渡航に失敗

20歳:学校令配布

23歳:大日本帝国憲法配布

24歳:第一回総選挙・第一回帝国議会

27歳:エジソンが活動写真を発明

28歳:山中商会 海外に初出店(ニューヨーク)・日清戦争

29歳:レントゲンがX線を発見・マルコーニが無線通信に成功

30歳:三陸大津波

32歳:キュリー夫人がラジウム(放射能)を発見

33歳:山中商会 ボストンに出店

34歳:山中商会 ロンドンに出店

37歳:ライト兄弟が初飛行に成功

38歳:日露戦争

39歳:山中商会 パリに出店・アインシュタインが特殊相対性理論を発表

42歳:アメリカでフォードT型車が登場

46歳:清滅亡・山中定次郎 清朝恭親王のコレクションを購入・大正元年

48歳:第一次大戦が始まる

51歳:山中商会 北京に出張所を開設

57歳:関東大震災

59歳:治安維持法

60歳:昭和元年

62歳:山中商会 シカゴに出店

63歳:世界恐慌

66歳:満州建国

67歳:ナチス一党独裁

71歳:定次郎死去

こうやって書くと、世界に出て行きたいと思った若い頃の空気がわかる気もする。富国強兵の雰囲気の中、日本と中国の美術品を世界にアピールする仕事は有意義だと思ったのではないだろうか。逆に、戦争で日本が孤立すると山中商会も一緒に覇気を失っていくのは、そのモチベーションが国家の成功にあったからかもしれないなと憶測したりする。いずれも勝手な印象だが、本書の膨大な情報はいろいろともの想いに耽るに充分であった。それにしても明治の頃の世の中の変わり方はすごいなあ。いや、そう思っているだけで、今もそうなのだろうか。いずれにしても、もうちょっと歴史を勉強したら自分の思考の幅も大きくなるんじゃないかと思った一冊。

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