『わたしが芸術について語るなら』

新井 文月2011年02月27日 印刷向け表示
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芸術についてやさしく語る
本書はもともと児童向けに出版されていた本だが、美術についてあまりにもわかり易く深い内容の為、そのままのわかり易さで大人版が出版された。その為、どうもアートは難しいと感じている人に特にオススメする。著者は日本画家として知られ京都造形芸術大学学長を務める千住博。ヴェネツィアビエンナーレや羽田空港で発表した「ウォーターフォール」の作品で一躍話題となった。

これまで芸術/美術を説明する本は、難解な言葉で読者を煙にまく事が多かった。海外の思想を引用して説明され「知らないお前が悪い」と指摘されても、大半は「なんのこっちゃ」と感じるだろう。これでは芸術が人々から遠のいてしまう。著者は「美」というのはそもそも生きる事と密接しており、生活の豊かさを表していると説く。

美という字の構成は「羊」と「大」だが、羊といえば文明の誕生と同時に羊飼いという職業はあった。羊は人間にとって肉は食事になり、毛は服になり、一緒にいればかわいいなとペットとしても心がやすらぐ。つまり大きな羊は心を豊にするのだ。美術とは人の心を豊かにする術だと著者は冒頭からやさしく説明する。

それを意識すれば生活がどう「豊か」になるかで世の作品の見え方が違ってくる。また印象に残る言葉として、筆者は優先順位をつける事を進めている。1番大事な事、2番目に大事な事、4,5番目はどうだっていいじゃない、と。「秩序ある混沌は必ず人を立ち止まらせる」「すぐれたデザインはもっとも無個性なものだ」(グロピウス)など、作品創りにおいて、大切なテーマが目白押しである。

使用する例は極めて簡単だが、難しいテーマを自身の経験と世界の芸術家の例をあげ深く説明しているので、何度も読みたくなる。仕事と金儲けに専念することなく、人々の心に貢献できる豊かな方には是非読んでほしい。
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