『審判目線』

鈴木 葉月2011年02月24日 印刷向け表示
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審判目線 面白くてクセになるサッカー観戦術
作者:松崎 康弘
出版社:講談社
発売日:2011-01-22
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全国1億2000万人のサッカーファンの皆様のみならず、部下のコーチングに悩むビジネスパーソン、これから国際舞台を目指す大志ある読者にも読んでいただきたい一冊!

本文を読み進めると、審判目線によるサッカー観戦術の事例解説を通し、ルールこそがサッカーをエキサイティングなゲームとして成立させていることが分かる。縦105メートルのフィールドでも選手のポジションが間延びせず、組織的でコンパクトなゲーム展開が楽しめるのはオフサイドの成せる業。アドバンテージの正しい適用は、フリーキックでゲーム展開を途切れさせず、流れのあるプレーの連続というサッカーの醍醐味を演出する。

本書は審判のフィジカル面の秘密にも迫る。高速化した現代サッカーは、審判により高い身体能力を求めるようになった。主審の走行距離は1試合平均で11〜14km、トップスピードの走行距離は90年代前半から倍増し1〜3kmにもなるという。FIFAのRAPによれば、40m走の記録も2008年で主審の5.73秒・副審の5.62秒から2010年で主審5.62秒・副審5.55秒にそれぞれ向上している。

走力のみならず、審判には「目力(めぢから)」も必要。目には12の筋肉があり、南アW杯レフェリーはスペインにて特殊な機械で2時間の検査を受け、各自弱点を鍛えて大会に臨んだとのこと。並大抵の鍛錬ではない。

一流の審判は一流のコミュニケーター。たとえ言葉が通じなくともボディーランゲージでゲームをコントロールする。判定に説得力を生むためには「身体表現」が不可欠であることから、JFAの審判養成コースではかつて「演劇」が取り入れられた。時に厳しく時に笑顔で、選手への接し方に幅を持たせる試みである。南アフリカW杯時、FIFAは審判候補者向けにエナジーパフォーマンス、すなわち「気功」のトレーニングまで導入したという。ボディーランゲージにエナジーパフォーマンス、管理職の皆様も部下に実践されてみてはいかがだろうか。

審判は日本サッカーのレベルアップにも一役買っている。日本サッカーの弱点として、手で相手を止めにいく・優位なポジションを確保することが問題視されていたことを受け、2010年のJリーグではホールディングを”きっちり”取ることが決められた。そこは律儀な日本人審判の仕事ぶりで、J1一試合平均のフリーキック数が2009年の33.9から2010年第一節の42.5へと激増。当初は非難もあったが、最終的にはフリーキック数自体も33.5と2009年より減少。ファウルの中身も、以前はホールディングファウルが1試合7回あり4回笛が吹かれていたところ、今ではファウルそのものが5回に減り4回は正しく笛が吹かれるといった改善が見られた。海外トップサッカーのように、手など使わずショルダーチャージなど体幹を用いた正当なチャレンジで守備も攻撃もこなす環境へ、日本サッカーも一歩前進したと言えよう。

著者の松崎康弘氏は(財)日本サッカー協会審判委員会委員長で、審判員として国内外の第一線で活躍されたキャリアを持つ。日本人審判はシャイだが、相手をリスペクトし丁寧に対応する能力は高く、上手いコミュニケーションが取れることもある、とは氏の言。先のW杯ブラジル戦、毅然とした態度と見事なジャッジに加え、ソフトなコミュニケーションで泣く子も黙る闘将ドゥンガ監督をも黙らせてしまった西村主審。こんな日本流リーダーシップって、絶対アリでしょう!

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