最近のお気に入り実用書・入門書3冊

鈴木 葉月2011年05月31日 印刷向け表示
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今回は趣向を変え、オムニバス形式での本のご紹介です。

HONZ活動を通し、私の読む本も新刊ノンフィクションの割合が高まった。実は自分好みの(=書評を書きたくなる)本に巡り合う確率は1割程度なのだが、私の場合「入門書・実用書」であると打率がグッと高まるようだ。今回は、その中から最近面白く読んだ3冊をご紹介したい。

足の速い子の育て方
作者:長澤 宗太郎
出版社:中経出版
発売日:2011-03-11
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思い返せば子どもの頃、足が速い同級生はクラスのヒーロー/ヒロインだった。私は足が遅かったが、こんな本があれば人生が変わっていたかもしれない。

著者のアドバイスはいたって実践的だ。「正しい走り方」の理論解説、子どもを練習する気にさせるモチベーション管理、足が速くなる練習法など、どんな子ども足が速くなるためのノウハウが詰まっている。

本書は育児書や教育書としても読める。子どもの教育にとって大切なのは、寄り添ってあげることではないのか。目標を一緒に立てて練習にも付き合い、良くなった点を褒めて伸ばす。わが子と向き合い一緒に時間を過ごしてあげる、走ることに限らず親子二人三脚で培った集中力・自信・思い出は、その子にとって一生モノの財産になるはずだ。

最後に、地味なトレーニングでも「イチロー選手もやっている」の一言は、子どもをその気にさせるには効果絶大だとか。

犬を飼いたくなったら
作者:藤原千尋
出版社:WAVE出版
発売日:2011-04-30
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WAVE出版は、以前取り上げた『家を買いたくなったら』に続き2冊目。こちらの出版社の実用書も良書揃いの予感だ。

書店で本書を見かけたとき、装丁がかわいらしくカゴに入れてしまった。表紙のわんこの円らな瞳が良い。

本書は「犬の飼い主検定」の副読本でもあり、犬を飼うにあたっての心がまえから自分にあった犬の選び方、そして手入れやしつけを含む犬の育て方まで、愛犬家が知っておくべき内容が網羅されている。かわいい犬のイラスト入りなので、これなら親子で一緒に読んでも楽しそうだ。

うち落とした鳥を持ってくる猟犬として飼われたプードル、ドイツでアナグマ(=ドイツ語でダックス)狩りの犬として飼われたダックスフンドなど、犬の種類も数あれど、これらは人間が各地で長い年月をかけ、「活発で人なつこく」といった気質や「胴長短足」といった体型の特徴を残そうと親犬を掛け合わせて作られてきたもので、犬種はいわば人間の根気の結晶である。

犬選びでは、自分がいつでも遊んであげられる活発な子でも平気か、毛が早く伸びる子でも手入れが追いつきそうか、などをよくよく考えてほしい。人間の都合で気質や体型まで合わせてもらっておきながら、自分の都合に合わないからといって「うちの子は言うことを聞かないダメ犬」ではさすがに可愛そうだ。本書を読んで、犬の身にもなってあげよう。

山でクマに会う方法 (ヤマケイ文庫)
作者:米田 一彦
出版社:山と渓谷社
発売日:2011-04-04
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HONZでは定評のあるヤマケイからのエントリー。

著者はNPO法人日本ツキノワグマ研究所の理事長。クマ追い歴40年・千回超の遭遇体験を元に、クマの生態・クマの気持ちを本書に綴っている。

私も今までクマには縁のない人生を送ってきたが、本書を読むとクマと出会っても何とかなるかも、という気にさせられる。秋はドングリの森で、冬から春は越冬中の穴で、夏は沢で、と季節によりクマの活動の場は移り変わる。本文では各シチュエーションでのクマとの遭遇シーンの描写に続き、「クマ追いからのアドバイス」として鑑賞上の留意点・安全上の注意点がコメントされている。

もちろん、逆に「山でクマに会わない方法」として本書を読む価値もある。山歩きのときにはクマ除けの鈴を身に着けることでこちらの存在を伝え、万が一遭遇した場合は相手の目を見ながら後ずさりして距離をとっていく。クマは逃げるものを追う性質があるので、背中を見せて走るのは避けるべきだ。万が一逃げ場がなくなったときには「死んだふり」。リュックを背負ったまま地面に腹ばいになり、両手で首(頚動脈)を覆って体の露出を少なくし、クマが退散するのをひたすら待つ。ただし、逆上したクマに死んだふりは逆効果である。

クマの生態にマタギの風習。本書があたかも民俗史のように読めてくるのは、クマが絶滅に向かっていることの裏返しでもある。しかし、クマを絶滅に追い込んでいるのは彼らを駆除し続ける人間である。クマを理解しさえすれば、クマを避けて通ることも、射殺以外の選択肢を考えうる能力も人間にはあるはずだ。クマはクマでしかいられない。彼らとの共存が実現できるかは、ひとえに人間の知恵と寛容さにかかっている。

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