『かぜの科学』 ジェニファー・アッカーマン

久保 洋介2011年03月27日 印刷向け表示
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かぜの科学―もっとも身近な病の生態
作者:ジェニファー アッカーマン
出版社:早川書房
発売日:2011-02
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避難所では風邪が流行しているようだ。避難している方々は、国立感染症研究所等が情報提供をしているので正しい情報を入手して欲しい(http://bit.ly/e9Eim9)。

風邪ウイルスの感染拡大の源は、風邪にかかった人の鼻からの分泌物に含まれるウイルス粒子。大半の風邪ウイルスの場合、鼻と眼が主たる侵入口となる。ウイルスが侵入口に辿りつく経路は未だ解明されていないものの、空気感染説よりも接触感染説の方が有力だ。風邪の代表的な原因ウイルスであるライノウイルスは空気中で長く生きながらえることができないからである(一方、インフルエンザウイルスは空気感染が確認されている)。

風邪の病原菌を避ける最適な方法は実に簡単である。ウイルスの接触感染を防げばいいので、手を洗い、顔を触らなければ良い。後者は止めるのが難しい癖であろうから、前者の手洗いを徹底するのが良いだろう。洗面台と石鹸が手近にない場合は、アルコール手指消毒液でもいい。ただし指の間を含め手の表面にまんべんなく擦り込むのが条件だ(消毒液はウイルスより細菌に効力があるものなので、出来ればウイルスをより除去できる石鹸の方が良い)。ぜひ、風邪ウイルスに接触しやすい子どもに対して、手洗いを徹底するよう伝えて欲しい。

もし風邪にかかってしまった場合は、(できれば医者に診てもらった上で)風邪ウイルスが拡散しないようマスクをして、しっかり休むことが重要だ。現在の医学では、まだ風邪に効果的な抗ウイルス薬は発明されていない。市販の風邪薬・ビタミンC・イソジン等の有効性は専門家の間では疑問視されている(アメリカ食品医療品局は風邪薬や鎮咳薬を6歳未満の乳幼児や小児に与えないよう勧告している)。風邪は軽度の疾患であり大人しくしていれば3-7日で治癒するはずだ。熱や鼻水などの症状は、ウイルスが引き起こしている(体を破壊している)のではなく、人間の体(免疫機構)がウイルスを外に出そうとしている証なのである。それを医学的な根拠に乏しい薬によってむやみに抑える必要はない。

本書は、風邪に関する正しい情報を提供してくれ、一般的な誤解や迷信を取り除いてくれる。まず風邪はウイルスであって細菌ではない。なので細菌を標的にした抗生物質や抗菌石鹸はあまり意味がない。又、寒い格好をすることやビタミン不足等は風邪の原因にならない。あくまでウイルスの侵入を防ぐことが重要なのである。その意味ではマスクも風邪を予防するという観点からはあまり意味がない(空気感染するインフルエンザウイルスの予防にはなる)。

本書は風邪に関する最先端の研究も紹介する。風邪にかかり易いか堂かはその人の遺伝が影響しているかもしれないことや、風邪ウイルスに感染しているとインフルエンザウイルスが寄りつかなくなる等、今後の研究成果が待ち遠しい。本書はデザインや装丁が格好よく、一家に一冊あっても良い本だ(しばらくして、紙やインクの供給体制が整った状況での購入をお薦めする)。

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