吉岡逸夫『白人はイルカを食べてもOKで日本人はNGの本当の理由』(講談社+α新書)

東 えりか2011年05月30日 印刷向け表示
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(2011/04/21)
吉岡 逸夫

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昨年のアカデミー賞ドキュメンタリー部門を受賞した『ザ・コーヴ』は和歌山の太地で行われているイルカ漁をセンセーショナルに撮影した作品である。先祖代々受けついできた漁業をやめろと声高に叫んだこの映画は、上映問題でもめたので、記憶にある人も多いだろう。

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実際、ドキュメンタリーやノンフィクションは撮影者や監督、作者の意図によっていろいろな見方があるから、作品を作ることは問題ではない。しかし妨害行為がなされるとなれば話は別だ。かつてイルカやクジラを食べることは、日本人にとっては普通のことだった。給食で「クジラの竜田揚げ」を食べていたのは、40歳以上の世代になってしまったか。近年では「クジラ・イルカ禁猟」のほうが当たり前になってきたようで、若い人では「そんな可哀想なことはできない」と言う人のほうが多いのかもしれない。

ただ、そこに政治的な背景や人種差別、あるいは意図的に論旨を捻じ曲げている事実があるかもしれない、ということは知っておいたほうがいい。『白人はイルカを食べてもOKで日本人はNGの本当の理由』を読むと、反対派の理不尽な根拠に血が頭に上りそうになる。

著者の吉岡逸夫は中日新聞の新宮局長。問題の太地に隣接した場所で取材を続けている。もちろんイルカ漁も取材済みだ。地元の人はその様子が報道されることを嫌う。『ザ・コーヴ』の件もあるし、それ以外でもこの漁に批判的な人が多いからだ。食べるばかりでなく捕獲して水族館へ渡すことも漁の重要な部分になる。その理解のためか、太地には海水浴場でイルカと一緒に泳げるようなアトラクションもある。

『ザ・コーヴ』で流された、海を血で真っ赤に染めた漁は、現在行われていないということは、本書で初めて知った。苦痛を与えないための新しい漁法が確立されていたのだ。それでもシー・シェパードなどを筆頭に、この漁への反対はおさまらない。

吉岡はそのシー・シェパードの幹部とのインタビューを敢行する。ちなみに彼はアメリカのコロンビア大学のジャーナリズム科を修了していて、英語に不自由はない。ところが、幹部とのやりとりはまるでこんにゃく問答で、質問と答えが行き違うばかり。最後には吉岡がけんか腰になってしまい、戦術負けだ。朴訥な漁師では歯が立たないだろう。

そこで吉岡は、今でもイルカ漁を続けているデンマークのフェロー諸島へ向かう。白人でありながらイルカ漁を行う人々の考え方を取材するためだ。そこで出会った人たちから、彼は日本人の対応の仕方のまずさを思い知らされることになる。

スキューバダイビングを始めたころ、伊豆のスーパーマーケットでイルカの切り身が普通に並べられているところを見てびっくりした。私も「わんぱくフリッパー」や「イルカの日」を見て育った世代だから、知らず知らずのうちに「イルカは賢い」が刷り込まれていた。

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それと漁とは話が別であると気づいたのは、現地の漁師と話してからだ。命をいただいて食べることは家畜でもイルカやクジラでも変わらない。きちんと抗議できる根拠を出して、話し合いを持つ力を養わなくてはならない。日本人にとってはとても難しいことではあるが。

参考までに、エスキモーの小さな村に住み着き、伝統的なクジラ漁を体験したノンフィクションも紹介する。

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