世界で活躍する(?)日本人 『バタス 刑務所の掟』 藤野眞功

村上 浩2010年06月11日 印刷向け表示
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採点:★★★★☆

エキサイティング!シティオブゴッドやスカーフェイスが好きに人にはおススメ。

フィリピンの刑務所の中には幾つものギャング組織があり、金と権力さえあればドラッグでも売春婦でも何でも手に入る、ってだけでも驚きだが、そのギャングのトップに立った日本人がいるっていうんだから更に驚く。


バタス――刑務所の掟 バタス――刑務所の掟
(2010/04/29)
藤野 眞功

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男一代菩薩道の佐々井秀嶺氏の生き様も凄まじいが、この男も負けていない。

旅行代理店のトップセールスマンだった大沢努が、フィリピンの闇組織(と言っても政府関係者や警察も含まれる)とのコネクションを強化しながら成り上がり、政権交代の煽りを受けて死刑判決を下されて刑務所に送られたと思ったら、刑務所内のギャング組織でお酒や覚醒剤の製造・販売を牛耳り、ついには組織の頂点へ到達する。

ギャングの頂点と言っても、腕力が優れている訳ではなさそうだ。彼を頂点へ導いたのは、徹底的に考え抜く忍耐強さと、どんな窮地に追い詰められても最後まで諦めずに行動する力だ。

トップセールスマンになった経緯も面白い。

官僚の子として生まれながら、真面目で優秀な弟とは異なり、高卒後入社した旅行代理店でも最初は泣かず飛ばず。そんな大沢に転機が訪れたのは、中小企業の年末慰安旅行に同行したときである。歴史的豪雪に見舞われた一行のバスが、目的地に着く前に走行不能に追い込まれてしまったのである。仕方なく歩いて目的地である温泉旅館を目指していたところ、還暦を越えた社長が足を挫いてしまった。大沢は直ぐに土下座して誤り、社長を背負って温泉まで歩き出したのだ。社長を背負いながらも残りの社員を激励する大沢の姿に、重たい雰囲気は一変してしまう。その後その社長に気に入られ、あれよあれよとトップセールスマンになってしまったのだ。

死刑判決を受けながらも、とにかく行動し続ける大沢の姿を、著者は以下のように表現する。

特定の条件下でしか生き抜けない人間の成功など、所詮、運の賜物でしかないのだ

大沢の刑務所での成り上がりを「成功」と呼ぶかどうかは議論があろうが、なんだかかっこいい。

度胸や行動力ではなく、この男の頭は相当切れる。刑務所ないで次々と新しいビジネスを成功させている。(何故次々かというと、成功するとやる気がなくなってしまうらしい。)生まれる環境/時代が少し違えば、立派なアントレプレナーになっていただろう。(もちろん大沢はそんな仮定には全く意味を見出さないだろうが)

その他にも、刑務所の刑務官が出所間際の囚人と結託して銀行強盗を行う話や、自らの美貌(美尻)を用いて組織を駆け上がった男を叩きのめす話など、とにかくぶっ飛びエピソード満載なので、詳細は是非本書で。

その内映画化される予感。深作欣二監督なら観てみたかった。

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