非合理性の良いところ 『The Upside of Irrationality: The Unexpected Benefits of Defying Logic at Work and at Home』 Dan Ariely

村上 浩2010年06月11日 印刷向け表示
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採点:★★★☆☆

行動経済学の分かり易い、かつ役立つ実例が沢山。直感に頼らず行動したい人におススメ。

様々な類似本を産み出した「予想通りに非合理」の続編。まだ邦訳は出ていないので、原著にチャレンジ。日本語の本の5倍以上時間がかかった・・・。それでも取り上げてある事例が面白いので何とか読了。


The Upside of Irrationality: The Unexpected Benefits of Defying Logic at Work and at Home The Upside of Irrationality: The Unexpected Benefits of Defying Logic at Work and at Home
(2010/06/01)
Dan Ariely

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副題にもある通り、本書は「仕事での非合理性」と「私生活での非合理」2つのパートからなっている。

パート1:仕事編のトピックは

・巨額のボーナスはパフォーマンスを向上させるのか

・仕事に「意味」は必要か

・IKEA効果

・自分のアイディアは人のものよりも優れているか

・どんなときに仕返ししたくなるか

巨額のボーナスがパフォーマンスを単純には向上させないことは、昨今の金融危機からも予測がつくが、全く効果がないという訳ではない。しっかり効果はあるのだ。しかし、その効果は単純な機械的作業の時にこそ発揮されるのだ。創造的な仕事に対してはネガティブな効果すらあるようだ。

このような事実を明らかにするための実験が面白い。物価の安い途上国で、高額な報酬を賭けた様々なゲームを行うのだ。そのデータが上がって来るときの興奮が詳細に描かれているが、確かに何ヶ月もかけて仕込んだ実験が終わって、データの分析を開始するときのワクワク感は相当なものだ。まぁ、大概期待はずれのデータでがっかりする羽目になるのだが。

前半で最も面白かったのは仕事に「意味」が必要かについて調べた実験だ。人間が仕事に「意味」を求めるのは良く分かるが、動物たちも自分たちの仕事に「意味」を求めるらしい。ラットを用いた実験でも、餌を取るためになんらかの仕掛けがある方が、ただ餌を貰える場合よりもより多くの餌を食べるらしい。

著者が仕事の「意味」に関する実験を行うきっかけとなったのは、元教え子のバンカーが研究室を訪れて尋ねた質問だ。

You work for some company and your task is to create PowerPoint slides. Every time you finish, someone takes the slides you've just made and deletes them. As you do this, you get paid well and enjoy great fringe benefits. There is even someone who dose your laundry. Ho happy would you be to work in such a place?

このバンカーは10週間も徹夜を繰り返しながらプレゼン資料を作成したが、結局プレゼン自体がなくなってしまい、作成した資料も誰の眼にも触れることがなくなってしまったのだ。そして、高額でハードワークを繰り返す日々に疑問を感じていた。

うーーーーーん。もの凄く同感。コンサルティングをやっていると、こういうことが良くある。いろいろなステップを踏むことで、我々下っ端がやっている仕事の「意味」は酷く捻じ曲がってしまう。

その他にも著者がIKEA効果という、消費者に作ることを体験させることでよりそのものに愛着を持たせる手法も面白い。

パート2:私生活編のトピックは

・慣れにどう対処するか

・恋愛市場からわかること

・恋愛市場が失敗したら

・何に同情して、何に同情しないか

・一瞬の感情が長期的な感情をもたらす

普段の行動に直ぐに反映できそうなネタも盛りだくさんで、こちらも負けず劣らず興味深い。

例えば、新婚生活を始める際に一度に家具を揃えてはいけないのだ。これは、後半最初のトピックである「慣れ」で説明できるのだが、一度に大きな幸福を感じることが出来てもその幸福感に人間は直ぐなれてしまうのだ。つまり、新しく買った家具になれた頃に次の家具を買えば、同じ金額でより長く、多くの幸福感を得られるということだ。

オンラインデートや寄付活動に関する実験は、仕事にも役立ちそうなティップスがたっぷりある。

著者も述べるとおり、ビジネスの世界はもっと「行動経済学」の考えを導入すべきだろう。特に、広告代理店はもっと色々な取り組みが出来るのではないか。

結びにあるように、我々はもっと「実験」しなければならない。

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