スケールは違うけど 『スプートニクの落とし子たち』 今野浩

村上 浩2010年08月03日 印刷向け表示
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採点:★★★★☆

自分と重なる部分が多少あり客観的には読めなかった。旧帝大の理系学部にいた人にはおススメ

ソ連のスプートニク打ち上げ成功に世界が慄いていた時代に東大理1に入学した「ベストアンドブライテスト」達の物語。本書の登場人物たちとはレベルが違うかもしれないが、田舎の公立高校から京大工学部に入り、社長になるつもりで入った会社を1年未満で辞め、コンサルタントをやっている自分にはどうしても他人事には思えなかった。


スプートニクの落とし子たち スプートニクの落とし子たち
(2010/06/19)
今野 浩

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田舎の公立高校でそこそこ天狗になっていた自分だが、京大の最初の授業には肝を冷やした。講師の言っていることが全く分からなかったのだ。自分のように天狗になっているただの凡人に自らの凡庸さを気付かせるために、敢えて初っ端の授業に量子力学を持ってきているという噂も聞いたが、本当かどうかはわからない。

本書の登場人物達ほどの人間と触れ合う機会はあまりなかったが、研究者の道を諦めるのには十分なほど、研究だけをやる人間は何人も見かけた。自分はもう少し「人間」に興味があるし、楽チンに生きていきたかったので、博士課程の道は視野に入っていなかった。学生時代の著者のスタンスは他の「ベストアンドブライテスト」達より幾分自分と近いものを感じるが、そのような著者が一番乗りで教授になるのだから人生分からない。

大学の卒業を控え、結婚を考える著者に本書の主人公は以下のような台詞を述べる

「・・・。今の俺たちには360度の未来がある。でも悪い女に捕まると、それがゼロになっちまうんだ。しかもその影響は自分だけじゃなくて、子供にまで及ぶんだ。・・・。」

若いということは不遜であるということかもしれないが、似たようなこと考えたことあるなー。学生時代の同窓生は流行の「草食」が多かったので、あまりこのような考えを持ってるやつは見かけなかったが。

エピローグでまで各々の人生の「星取表」をつけるのだから恐れ入る。

著者ははじめとおわりで若者の理工系離れを嘆くが、この流れはとまらないだろう。東大⇒新日鉄⇒MBA⇒米銀副頭取⇒私大教授の道を辿った主人公ほどの憧れを教授職にはもう持てない。成毛さんもブログで言及されているが、ビジネスの世界に「ベスト」は余計なのかもしれない。ビルゲイツやスティーブジョブスは「ベストアンドブライテスト」なのだろうか。「手を抜く」ことに値段は付くのだが、皆が手を抜く社会ではイノベーションは生まれないのではないか。自ら手を抜く世界に移った俺がとやかく言えることでないことは確かだ。

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