なぜ「湾岸」戦争と呼ぶの? 『イランはこれからどうなるのか 「イスラム大国」の真実』 春日孝之

村上 浩2010年09月22日 印刷向け表示
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採点:★★★☆☆

「イランってアラブの中でも大国だよな」と思っている人におススメ。

同じく新潮新書のイスラエル(拙ブログ)と併せて読めば、中東情勢の概観が理解しやすくなる。ブッシュJrに北朝鮮とひとくくりにaxis of evilと呼ばれた国の現状について解説した一冊。相変わらずAmazonの写真すらない。。。


イランはこれからどうなるのか―「イスラム大国」の真実 (新潮新書) イランはこれからどうなるのか―「イスラム大国」の真実 (新潮新書)
(2010/09)
春日 孝之

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■あらすじ

毎日新聞テヘラン支局長として4年間を過ごした著者が、自身の経験をまじえながらイランの歴史、今、そしてこれらかについて解説する一冊。現代イランのアメリカ化された生活、イラン人の「白人」としての誇り、更には「核」への思いなどについて理解できる一冊。

■感想

規制の多いイランのロックシーンについて描いた映画「ペルシャ猫を誰も知らない」を観たが、あまり面白くなかった。佐々木俊尚氏が絶賛していたので観に行ったのだが、政府の規制を掻い潜って撮影されたらしく、主人公二人にも感情移入できなかった。その映画でも描かれているように、若者たちのアメリカ文化への憧れは中々根強いようだ。本書で描かれるパーティーの様子は我々の想像する「イスラム世界」とは大きく異なる。

深夜になってビュッフェ形式の夕食。そのあと室内の照明が落とされ、リビングはディスコに様変わりした。ミラーボールを回して演出し、ステレオのスピーカーからは西洋やイランのポップスが大音響で響く。暖かな部屋で薄着の女たちが腰をくねらせ、時折「ウォー」「ウォー」と絶叫する。そのたびに拍手がわき起こり、盛り上がる。
当然飲酒は禁止されているのだが、密輸者が簡単に手に入るらしい。もちろん「違法な」パーティなので、開催場所は普通のマンションの一室であり、著者のオフィスも毎夜の騒音に相当悩まされたようだ。風紀警察も見て見ぬ振りなのだが、その理由を著者と共に働く現地スタッフは以下のように解説する。
支局のスタッフは、当局がホームパーティを黙認する理由を「国民のストレスが政権や体制に向かうのを恐れているからだ」と解説した。いわば当局は国民の不満のガス抜きをしている、というわけだ。
ただし、このような状況も「不正」が取りざたされた2009年6月の大統領選挙以降には一変しているようだ。

恥ずかしながらイラン人が「自分たちをアラブ人と同一視する」ことを非常に嫌がるということは全く知らなかった。自分たちはアーリア系であり、セム系のアラブ人は野蛮人であるという考えの人が多いのだそうだ。特に、知識人の中に「一緒にするな」という発言をするものが多いらしい。イラン大統領府の傘下にある文化遺産・観光庁に勤めながらアサド大学で教鞭を取るオミド・シーバ(39)さんは以下のように語っている。

タイの大学に招かれて講義をした時、学生たちがイラン人とアラブ人を同一視していることに気づいた。これは私たちイラン人への侮辱です。イランは『アーリア人の国』で、イラン人は白人です。イラン人なら誰だってアラブ人と一緒にされたら怒りますよ
「日本人と韓国人、中国人を一緒にするんじゃない!」とネットに書き込む人はいるかもしれないが、このような発言をする大学の先生はさすがにいないだろう。どこかの知事なら言うかな・・・

本書の後半では、「イランは本当に世界の脅威なのか」という文脈でイランの現状を解説している。当然イスラエル、核の話も出てくるので、興味のある方は是非本書に当たってほしい。「非アラブのイスラム大国」に取り掛かるのに適した一冊。

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