『「アラブの春」の正体―欧米とメディアに踊らされた民主化革命』―編集者の自腹ワンコイン広告

版元の編集者の皆様2013年05月15日 印刷向け表示
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「アラブの春」の正体    欧米とメディアに踊らされた民主化革命 (角川oneテーマ21)
作者:重信 メイ
出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)
発売日:2012-10-10
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重信(しげのぶ)メイさんは締切に結構ルーズな人である。そもそもレバノンにいる時もあって、時差の関係上、「日本時間で何時までにお願いします」というのもわかりにくいのかもしれない。本書も編集作業という点においては、非常に短い時間で作り上げた。なかなかに「編集者泣かせ」な人であり、書籍だった――。

こう書くと、皆さんには著者の悪口に読めるかもしれない。

でも、と思う。この文章を書いている僕は日本に生まれ育ち、この文章を読んでいる(ほとんどの)方も同じだろう。けれど、電車が時刻表通りにやってくるこの国の在りかたの方が世界的に見れば珍しく、この本だって実際に発売されて、ちゃんと重版(現在5刷)までやっているじゃないかという事実も存在する。

他者を理解しようとするとき、文化的差異が邪魔をするというのは往々にしてあることだ。そこに物理的距離が加われば、困難さはさらに増す。

2010年末のチュニジアで起こったデモから、一連の動きとして報じられた「アラブの春」。日本語、英語だけでなく、アラビア語も理解する重信さんはかなり早い時期からメディアの報道に疑問を抱いていたという。中東の情報源として日本だけでなく全世界が頼るカタールのTV局、アルジャジーラの報道フレームに偏りがあることに気づいていた。開局当初は「opinion and the other opinion」を掲げ、公正な報道姿勢で喝采を浴びたアルジャジーラも年間3000万ドルの資金提供を受けている状況だ(詳細は本書211ページから)。

日本に住む僕たちにとって「アラブ」は遠く、わかりにくい。そしてそれは日本だけでなく他の地域の人にとっても同じ。そして、わかりやすいメッセージだけを鵜呑みにすることで、誤解を生む結果につながったケースが「一国の民主化運動」についてすら存在したことを、本書では明らかにする。

他者を理解するのは、いつだって難しい。効率化が幅を利かせる現代でも、やっぱり、コミュニケーションの「量」でしか解決できないのかもしれない。その点で、中東問題を知るためにはぜひ本書を読んでもらいたいと思うし、実際、そういう思いを抱いた人が多かったらから重版を重ねることができているのかもしれない。担当だから、という理由だけでなく本当にお薦めする1冊、『「アラブの春」の正体』。

P.S. 僕は重信メイさんが大好きですよ(念のため)

角川書店 菊地悟

*「編集者の自腹ワンコイン広告」は各版元の編集者が自腹で500円を払って、自分が担当した本を紹介する「広告」コーナーです。

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