アボガドロ定数を決めたのはアボガドロじゃない!? 『元素検定』 桜井弘編著

2011年4月2日 印刷向け表示
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★★★☆☆

ニュースで聞いた元素に興味を持ち始めた人はもちろん、昔なんとなく習った化学・物理を思い出したい人におススメ

これほど多くの人が、これほど多様な元素に関心を抱いたことはなかったのではないか。ニュースでヨウ素やセシウム、更にはプルトニウムのことを聞かない日はない。専門家の話を聞いて無闇に恐れたり、楽観しすぎたりすることのないように、本書で元素検定を取得しておこう。

※アマゾンには表紙が載ってない。せっかく寄藤文平さんのイラストなのにもったいない、頑張れ化学同人!画像はリンクなし

元素検定 元素検定
(2011/03)
桜井 弘

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元素検定

帯にも「身の回りにはたくさんあるのに、意外と知らない元素」とあるように、元素は身の回りにたくさんある。というか、身の回りには元素しかないのだ。サイエンスにおいて元素を知ることは、数学において公理系を知ることと似ている。そこが全ての始まりなのだ。全てのものは元素の積み重ねや組み合わせの産物である。元素の特性、特徴をしっかりと把握しておけば最新のニュースやツイッターで回って来た情報に「ダウト!」する機会も増えるのでは!?

「あらゆる物質の最も基本的な要素」であるだけあって、元素本は既に良いものがたくさんある。本書の巻末にも推薦図書一覧が載っているが、ブルーバックスの『元素111の新知識 第2版』は皆さんもご存知だろう。本書の前編にあたる(のかな?)『元素生活』もある。どちらもおススメである。

元素本はその内容からどうしても事実の羅列になってしまいがちだが、裏を返せばちょこちょこ読んでも楽しめるということだ。特に本書は題名に「検定」とあるだけに、元素に関連したクイズがレベル別に用意されており、トイレで読むのに最適。トイレで仕入れた知識を家人に披露して、「俺の工学修士号は伊達じゃないんだぜ」、とふんぞり返るのも気分がよいものだ。

大学時代には巻末にある『シュライバー無機化学』なんかも授業で使っていたのだが、本書の問題は中々手強い。

Q28 水銀のほかに室温付近で液体になる元素は、どれでしょう?

�ビスマス�テクネチウム�インジウム�ガリウム

むむむ、これでLevel2(高校生レベル)だ。選択問題でなければ思いつかないな。答えは本書かWikipediaで。他にももっと身近な我々の体に関する問題や今や聞かない日はないヨウ素についての問題も数問ある。興味のある問題だけつまみ食いしても楽しめるだろう。

今回の原発事故関連ニュースでは改めて科学リテラシーについて考えさせられた。成毛さん×堀江さんの『儲けたいなら科学なんじゃないの?』にもあったが、科学技術を知ることは単に知的好奇心を満たすだけに留まらない。とはいえ、先ずはその面白さに気付かなければならないので、中学卒業の要件に『ご冗談でしょう、ファインマンさん』読了を盛り込むことを提案したい。

決定版-HONZが選んだノンフィクション (単行本)
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社
発売日:2021-07-07
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