なにを信じる?なぜ信じる? 『宗教を生み出す本能』 ニコラス・ウェイド著 依田卓巳訳

村上 浩2011年05月06日 印刷向け表示
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世界の宗教に興味のある人はもちろん、それらを信じる人間に興味のある人にもおススメ


宗教を生みだす本能 ―進化論からみたヒトと信仰 宗教を生みだす本能 ―進化論からみたヒトと信仰
(2011/04/22)
ニコラス・ウェイド

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「氏か育ちか」。IQ、スポーツ、音楽、様々な分野についてこの問いは問われ続けてきた。遺伝子工学や進化生物学の急速な進歩により、特定の分野では解の糸口が見え始めている。『黒人はなぜ足が速いのか―「走る遺伝子」の謎』では、長距離、短距離の一流選手にはアフリカのそれぞれ異なる特定地域出身者が多いことに注目し、足の速さと関係性の強い遺伝子の存在が明らかにされている。本書はなぜ宗教が世界中に存在しているのか、原始社会で信仰はどのように発生したのかについて、進化論の観点から論じている。

宗教には様々な「負担」がつきまとう。イスラム教徒であれば豚は食べられないし、ヒンズー教徒であれば牛を食べることは許されない。また、ユダヤ教徒であれば安息日にはエレベーターの昇降ボタンを押すこともできない。進化論的に考えれば非合理的な負担を負っている集団は、非合理的な負担を負っていない集団に淘汰されてしまうはずである。しかし、”適切な”負担は、何もせず共同体の便益を享受しようとする者を阻止することを可能とする。共同体のメンバーが共同体とその道徳律への献身を監視し合うことで、フリーライダーを排除して、より良質な共同体を構築することができるのだ。そして、より団結力の強い集団は、より団結力の弱い集団に打ち勝つことができるというわけだ。

本書では宗教は進化上適応であり、自然淘汰上有利であったというスタンスが取られており、「負担」以外にも様々な宗教の特徴を説明している。『移行化石の発見』にもあるように、進化には合理的に説明のできない偶発的なものもると思われるが、ロジックの積み上げ方は面白い。

なぜ人類が宗教を信じているのかに加えて、現在我々が信じられている宗教の内容についても本書では触れられている。特に第7章では3大宗教であるユダヤ教、キリスト教、イスラム教についての解説がある。この章は『世界の宗教がざっくりわかる』と併せて読むと理解しやすい。


世界の宗教がざっくりわかる (新潮新書) 世界の宗教がざっくりわかる (新潮新書)
(2011/04)
島田 裕巳

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『世界の宗教がざっくりわかる』は、タイトルの通り世界の宗教が全体としてどのようなものか、分かり易く書かれた良書である。特に、東と西の宗教を繋ぐイランの宗教について詳しい。無宗教である日本人だから書ける宗教本だ。

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