『まるごとインドな男と結婚したら』

成毛 眞2013年09月02日 印刷向け表示
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まるごとインドな男と結婚したら
作者:鈴木 成子
出版社:彩流社
発売日:2013-07-23
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著者は御年70歳になる普通の独身女性である。居住地はバンガロール。数年前にこの安住の地を見つけ、美術大学に通い始めたのだが、それでは刺激がないと、本書を書き終えてから、また冒険の旅に出るようだ。彼女は人生の冒険者なのだ。

著者がインドの地を踏んだのは1970年代前半。まさにヒッピー世代のインド詣でだ。その旅の途中に英文学修士を持つインド人男性に出会い結婚した。1976年には男の子を出産し、穏やかで幸せな生活が始まるはずだった。しかし、夫の家庭人としての振る舞いや金銭感覚は普通の日本人には理解できないものだった。

けっして暴力的だったり、無分別な振る舞いをするのではない。インドでは最も高いカーストであるブラーミンの出身である。いわば何十世代も王族生活をしていた人が、いきなり現代にあらわれて市井の人として生活をするようなものであろうか。どこかちぐはぐなのだ。

それはともかく、本書の魅力はインドの人々、インドの気候、インドの風習、すなわちインドという国に住むことの素晴らしさを語り尽くしていることだ。

善いも悪いも生も死もあるがまま。来るものは拒まず、去るものは追わず。時間

は時計やカレンダーではなく天体の動きと共にゆっくりと流れる。人と違うのはあたりまえ。目に映るものが変化に富んでいて、一日中ぼうっとしていても飽きない一方で、想像力が刺激される国

とは、著者によるインドという国の評である。微細な人間模様や日常風景が美しくゆったりと描かれていて、読み飽きることはない。テレビなどでみるインドの街中の小汚い光景も、生活者としてみると一変して見えてくる。インドを知る必要はない人にとっても、いまの自分の生活を振り返るために読むべき本かもしれない。

(8月31日 産経新聞書評欄掲載)

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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
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