『特派員ルポ サンダルで歩いたアフリカ大陸』by出口 治明

出口 治明2013年09月29日 印刷向け表示
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特派員ルポ サンダルで歩いたアフリカ大陸
作者:高尾 具成
出版社:岩波書店
発売日:2013-06-26
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次はアフリカの時代が来る、と言われて、久しいものがある。マリでの騒乱や、それと関連したアルジェリアでの人質事件、エジプトの混迷ぶり等、アフリカから発信される情報は、このところ、後向きのものが多い。それに、アフリカは、何しろわが国から遠い。私たちは、この古くて新しい大陸について、一体、何を知っているというのだろう。

僕は人が学ぶ方法は、3つしかないと考えている。「人に会う」、「本を読む」、「旅をする」、の3つである。背表紙に著者が履き古したサンダルの写真がある。頑丈で、履き心地が良さそうだ。本書は、2008年から4年間をアフリカで過ごした特派員が、いわば、このサンダル(足)で書きつづったアフリカの素顔である。

スタートは、アフリカ大陸初のサッカーW杯に揺れる虹の国、南アフリカである。著者の赴任地でもあるだけに、積み重ねられたたくさんのエピソードが、この国の多様な表情を垣間見せてくれる。民主化直前に訪れた時の記憶が、著者の躍動的な筆致によって、鮮やかによみがえった。

そして、サンダルは、リビアに向かう。しかも、カダフィ派と反カダフィ派が死闘を繰り広げる内戦の最中に、である。NATO軍により実施された空爆現場にも、サンダルは足を伸ばす。現場ならではの臨場感が、迫ってくる。あの時、あの場でリビアの市民たちは、なるほど、このように感じたのか、と。

ムガベ大統領の長期政権に倦むジンバブエでの大統領選挙の実態も、凄まじい。独裁政権の暴力、ハイパーインフレーションの信じ難い実相が抑えた筆致で、端々と語られる。この国は、偉大な歴史を持ち(グレート・ジンバブエ)、かつてはアフリカでも有数の豊かな国であったのだが。

著者は、「はじめての土地で、そわそわした感じがする時、胡座をかいて地べたに座ってみる。空が大きくなり、集まってきた子どもたちの瞳が、同じくらいの高さに映る。自らの偏平足で大地に立っているのと、まるっきり違う世界が広がってくる」と書く。ここに著者の基本的な視座が据えられているのだと思う。

読み終えて、植民地支配の負の遺産に苦しむ人々の、多くは悲惨な物語であったにも関わらず、草原に吹く風が脳裏を駆け抜けていった。「ウブントゥ」という現地の言葉があるという。「(他者への)思いやりや寛容」「共に生きる」などの意味合いを持つ言葉だそうだ。名も知れない多くのアフリカの人々から、たくさんの「ウブントゥ」を教えてもらった気がする。

出口 治明

ライフネット生命保険 代表取締役会長。詳しくはこちら

*なお、出口会長の書評には古典や小説なども含まれる場合があります。稀代の読書家がお読みになってる本を知るだけでも価値があると判断しました。

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