11月のこれから売る本-ジュンク堂書店大阪本店 持田碧

持田 碧2013年11月28日 印刷向け表示
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HONZをご覧の皆さま、初めまして。ジュンク堂書店大阪本店で文芸書を担当しております、持田碧と申します。この度、「書店員のこれから売る本」に参加させて頂くことになりました。有難いご縁を頂いたことへの感謝と、このような場で本について語らせて頂くことへの緊張でいっぱいです。毎日売り場に立つ書店員として、また一人の本好きとして、心から「面白い!」と思える本を少しでも多くの皆さまにお伝えできればと思っております。よろしくお願い致します。

私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな (一般書)
作者:ジェーン・スー
出版社:ポプラ社
発売日:2013-10-11
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突然ですが、今年だけで3回、女友達の結婚式に出席しました。そう、27歳ともなると周りは結婚ラッシュ。どのお式も素晴らしく、昔から知る友人の花嫁姿に心を打たれ、もともと結婚式にさほど憧れがない鈍感な私の胸にも、「結婚」の二文字が輝かしく刻まれます。でもそこで、冷静に気がつくのです。「私、プロポーズされたことない…。これから近い未来にされる気配もない!」著者は自らを「未婚のプロ」と呼ぶコラムニストのジェーン・スーさん、40歳。彼女は前書きでこのように断っています。

“大変申し訳ございませんが、この本は結婚できるようになるハウツー本ではございません。どちらかと言えば「ここに書いてあることをやり続けていると私たちのような未婚のプロになるぞ!」という警告書です。”

この前書きに心を掴まれた私は立派な「未婚のプロ」予備軍です。そう、知りたかったのは、「どうすれば結婚できるか」ではなく、自分の現状(結婚しないかもしれない自分及びそうなった理由)でした。著者が未婚のプロの女友達と作った「プロポーズされない理由101個」(すべて著者たちの実体験)が一つずつ的確な考察と共に述べられます。例えば、「3年以上恋愛をしていないままプロポーズを夢見るのは、買ってもいない宝くじの当選金の使い道を考えるのと、あまり変わらない。」男性には「当り前!」と言われてしまいそうですが、夢見がちな女子には刺さる言葉です。

こんなふうに鋭い指摘をユーモアたっぷりに繰り出しながら、決して読者に向かって「結婚した方がいい」とも「独身の方がいい」とも言わないのがこの本の素晴らしいところです。著者は自ら、一つの生き方として「独身」を選んでいる。それはなぜか。読み進めるうちに、笑ったり共感したり反省したりしながら、自分の人生で本当に優先順位が高いことは何なのか、自然に振り返ることができます。毎日一生懸命働きながら人知れず結婚や恋愛について悩んでいる独身女性に是非読んで頂きたいです。

結婚できない理由は、統計で答えがでている
作者:山田由美子
出版社:遊タイム出版
発売日:2013-10-31
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結婚する・しないで悩んでいるのは女性だけではないのかもしれません。「30代から40代の男性必読!」と表紙に書かれているこの本は、テレビでも活躍する婚活アドバイザー・山田由美子さんによる男性向けの婚活入門本。本の見返しには大きな赤字で「きっといつかは結婚できる、は大間違い」となかなか厳しい言葉が書かれています。16年間プロの仲人として様々なお見合い結婚を成立させてきた著者は、蓄積したデータをもとに、現在の婚活を取り巻く状況と、婚活を成功させるポイントを解説してくれます。

「なぜ、今男性が婚活で有利なのか」「年収と未婚率の関係」、さらには「男性側の年収に対してどれくらい年齢差のある(より若い)女性をパートナー候補と考えられるか」「デートにかかる平均金額」など、男性が気になる具体的な情報が統計で得られるのが魅力的です。さらに著者はユーモアをまじえつつ辛口なコメントで、実際のお見合い現場で女性側が男性側を断った理由なども思い切って明かし、お見合いだけでなく恋愛の場面でも非常に参考になるアドバイスが詰まった内容となっています。

私がこの本に好感をもったのは、「こうすればモテる」といったテクニックについて書かれているのではなく、時間がなかったり、経験がなかったりといった理由で真剣に出会いを探しているのにどうすればいいかわからない人に対して、とても心強くあたたかいエールと共に「最初はこういうことから始めたらいいよ」と具体的に示している点です。

上記2冊を話題書コーナーで並べて展開しておりますが、最後におすすめするのは、どちらかというとひっそりと長く棚に面陳にしておきたい、じわじわ売りたい本です。

稼がない男。 (DO BOOKS)
作者:西園寺 マキエ
出版社:同文館出版
発売日:2013-10-09
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彼氏・野口ヨシオ、47歳、フリーター。

彼女・西園寺マキエ、47歳、フリーライター。

中学校でクラスメイトとして出会った二人は、31歳の時に付き合い初め、その後現在に至る17年間、結婚もせず、子供もつくらず、そして彼氏は手取り11万円のフリーターのまま!付き合い続けている。そんな二人の日々を、ライターである彼女が綴ったノンフィクション。

私はこの本を手に取った時、うっすらと「低収入でもこんな工夫で暮らしていける」とか「結婚しなくても別にいい」とか、そういうメッセージを受け取ることを想像していました。確かに、この本にはそういう要素もあります。でも、実際に読み終えた感想はそういうものではなく、私はいつの間にか二人の人生に入り込み、二人と共に一喜一憂し、時に涙し、本を閉じた後にはお腹の底からじわじわと元気が出てきた、ということです。なぜ元気が出たのか。それは「この人たちは、今、本当に幸せなんだな」ということが本から伝わってきて、私もその幸せを分けてもらったように感じるからです。

ヨシオは、一度は上場企業で正社員として働きながらも、自らの意思で「稼がない」人生を選び取った人です。彼女のヒモになるどころか、毎日収支をきっちりエクセルで管理し、毎年彼の家計は黒字。貯金もちゃんとしています。何より感銘を受けるのは、彼女である著者に対するヨシオの17年間変わらない愛情の注ぎ方。どんなに天気が悪くてもほぼ毎日彼女に会いにやってきて、彼女が自分のアパートに来た時は必ず家まで送り届け、つらい時には励まし…。ついには、結婚していないのに、彼女の母親から「あなたのことは息子だと思っていますから」と言われるほどにまで彼女と彼女の家族にとってなくてはならない存在になっていく。読んでいるうちに、このヨシオという人は経済という面から見れば「稼がない男」だけれども、いつでも「どんな状況でも生き抜く」という覚悟を持ち、他者への優しさを決して忘れない「自信と愛に満ちた男」なのだと気が付きます。

どんなふうに生き、誰と一緒にいるのか。何が幸せか。決めるのは最後は自分自身。そう再確認させてくれる一冊です。

持田碧

1986年生まれ。関西育ち、京都在住。気がつけば本屋の上に住み、職場も本屋。文芸書担当。好きな本のジャンルは海外文学。

ジュンク堂書店大阪本店

〒530-0003

大阪府大阪市北区堂島1-6-20 堂島アバンザ1F〜3F

TEL 06-4799-1090 FAX 06-4799-1091

営業時間 10時〜21時

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