12月のこれから売る本-中原ブックランドTSUTAYA小杉店 長江貴士

長江 貴士2013年12月01日 印刷向け表示
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君に友だちはいらない
作者:瀧本 哲史
出版社:講談社
発売日:2013-11-13
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“成功するかどうか事前には誰も分からない。「冒険」に出たものだけが、大きな果実を手にすることができるというのは、大航海時代と何も変わらない。それは情報革命によって21世紀に初めて日本に上陸した”むきだしの資本主義”の本質なのである”

本書で著者が提示する「現実」は、とても厳しい。グローバル化が進み、あらゆるものがコモディティ化していく社会では、これまでのような常識は通用しない。と同時に、やる気がある人間には、チャレンジしがいのある魅力的な社会と映るだろう。そんな未来を提示し、その社会でどう生き抜くべきかを示唆する作品だ。

“やりたい仕事、属したい組織がなければ自分でつくるしかない”

「社交的な人間ではない」と語る著者が本書のような仲間づくりの本を書くのは、エンジェル投資家として「これまでずっと「人」を観察し、どういう「チーム」であれば成功できるのか、身銭を切って学んできた」からだ。

やりたいことがある人は、今すぐに本書を読もう。あなたがこれから何をすべきか、どう考えるべきかが書かれている。あなたのビジョンを周囲に語り、仲間を見つけ、達成へ向け走りだそう。やりたいことがまだない人も、いずれそれが見つかった時のために、仲間を見つけやすい環境に自分を置こう。そのために本書を読んで、生き方を変えていこう。狭いネットワークの中に閉じこもっている場合じゃない。本書を読めば、誰しもがそう感じることだろう。

“夢を語り合うだけの「友だち」は、あなたにはいらない。あなたに今必要なのは、ともに試練を乗り越え、ひとつの目的に向かって突き進んでいく「仲間」だ”
灰色のダイエットコカコーラ (星海社文庫)
作者:佐藤 友哉
出版社:講談社
発売日:2013-11-08
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“祖父は覇王。つまりゴールだった。終着駅だった。到達点だった。百点だった”

北海道の小さな町で覇王として君臨していた祖父に影響され、自分は他の愚鈍な肉のカタマリとは違う特別な存在だ、覇王の道を行く直系だ、と信じて疑わない主人公。祖父が生きていた6歳の頃、そしてミナミ君がいた13歳の頃の主人公は、燃え盛っていた。

19歳の今。主人公は、れっきとしたフリーターだ。自分のふがいなさを「北海道」という土地のせいにして、何も考えない堕落した日々を過ごす。祖父もミナミ君も裏切ることになるその生き様を鬱々と後悔するが、ある日吹っ切って、爆裂に覇王の道を突き進むことになる。

この主人公の有り様を100倍ぐらいに薄めたら僕になるかもしれない。「覇王になる」という猛進は、現実逃避以外のなにものでもない。主人公以外のあらゆる人間が、そう捉えている。そして、主人公も、それを薄々と悟っている。

しかし、もうそれに縋るしかない。自分の逃げ場はそこにしかない。能力もない、努力もしない、次第に若くもなくなっていく、東京でも神奈川でも大坂でもなく北海道にいる。そんなちっぽけな自分を一発でひっくり返す可能性があるのが、唯一「覇王」という道だけなのだ。

覇王道を進む決断をした後の展開は、なかなかに凄まじい。呆然とするようなスピーディーな展開が続き、あり得ない変転が怒涛のように押し寄せる。そのムチャクチャさを、ここまで読ませる作品に仕上げるセンスと手腕は流石だ。

ヤノマミ (新潮文庫)
作者:国分 拓
出版社:新潮社
発売日:2013-10-28
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“緊張を強いる「文明」社会から見ると、原初の森での暮らしは、時に理想郷に見える。だが、ワトリキは甘いユートピアではなかった。ワトリキには、ただ「生と死」だけがあった。「善悪」や「倫理」や「文明」や「法律」や「掟」を越えた、剥き出しの生と死だけがあった。一万年にわたった営々と続いてきた、生と死だけがあった。”

著者はNHKのディレクターとして、「ヤノマミ族」と150日にも及ぶ同居生活を行った。本書は、その記録だ。

著者が赴いたワトリキという地域は、1970年代に初めて「文明」と接触した。1万年以上にわたって、生活風俗や文化に変化がない部族は、世界的に見ても珍しい。

「ヤノマミ」とは彼らの言葉で「人間」を指す。そして、ヤノマミの女は、子どもを産んだ直後に、わが子の「生死」を決めなければならない。ヤノマミ族では、「子どもは母親の手に抱かれるまでは精霊である」という価値観がある。精霊のまま「送る」か、わが子を抱き上げて育てるか。そのあまりの衝撃的な光景に、著者らは言葉を失う。

著者は、「ワトリキには、僕たちの社会にはない時間が流れているようだった」と書く。それは、降り積もった時間なのだろう。僕たちは、「時間の堆積」を感じられる環境に生きていない。数百年、数千年の時間の堆積を感じられる機会は少ない。獲物や植物が豊富な深い森は、連綿と続く祭りは、母親に課せられた生死の決断は、形に残るわけではない『何か』をヤノマミの元へと残す。その積み重ねこそが、彼らの本質であり、中核なのだろう。

本書を読んで改めて、NHKスペシャルのドキュメンタリーも見たかったなと思った。

※著者による文庫版追記はこちら

グーグル秘録 (文春文庫)
作者:ケン オーレッタ
出版社:文藝春秋
発売日:2013-09-03
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グーグルは、創業からたった15年で、世界を変えてしまった。

本書は「グーグル」やその周囲を取り巻く状況をつぶさに追い、「グーグル」という特異な会社がいかにして世界を激変させてしまったが描かれる作品だ。インターネット上の「検索」技術を追究し続けた二人の若者が、『いい検索技術さえ開発すれば、お金はおのずとついてくる』という信念を曲げずに、独特すぎる経営を続けた15年間の結果が、今この世界だ。僕らは、「なかなか気づけない何か」を失うことと引き換えに、グーグルという企業から多大なる恩恵を受けている。今、グーグルと一切関わりなく生活しているという人を探す方が難しいだろう。

グーグルのスローガンは、『邪悪になってはいけない』だ。このスローガンを、創業者二人が出来うる限り守り続けてきたからこそ、グーグルの繁栄はある。もし彼らが、このスローガンを忘れるようなことがあれば、一転してグーグルは、世界を飲み込む恐ろしい企業となるだろう。グーグルを脅威と見る人や企業は、そのことをずっと以前から懸念している。

グーグルは既に、僕らの“日常”になってしまった。そんな僕らの“足場”とさえ言える企業のことを、僕らはもっと知っておくべきかもしれない。彼らがどんな理念で企業経営を行っているのか、何を目指しているのか、力の源泉は一体どこにあるのか。そして僕らは、グーグルと関わることで、一体何を得て、何を失っているのか。知らないでいると、いつか足元を掬われるかもしれない。

※成毛眞による文庫解説はこちら 

長江 貴士

1983年、今や世界遺産となった富士山の割と近くで生まれる。毎日どデカい富士山を見ながら学校に通っていたので、富士山を見ても何の感慨も湧かない。「富士宮やきそば」で有名な富士宮も近いのだけど、上京する前は「富士宮やきそば」の存在を知らなかった。一度行っただけだけど、福島県二本松市東和地区がとても素晴らしいところで、また行きたい。他に行きたいところは、島根県の海士町と、兵庫県の家島。中原ブックランドTSUTAYA小杉店で文庫と新書を担当。

【中原ブックランドTSUTAYA小杉店】

〒211-0063

神奈川県川崎市中原区小杉町3-420-5

TEL 044-739-5508(書店部門のみ)

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