『生物のなかの時間』

高村 和久2011年10月19日 印刷向け表示
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生物のなかの時間 (PHPサイエンス・ワールド新書)
作者:西川 伸一
出版社:PHP研究所
発売日:2011-09-17
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いくつになっても心は中2だ。生きてるってどういうこと?時間ってなに?僕はだれ?君はどこ?クマムシってクマ?それとも、ムシ?本書によれば、クマムシは「緩歩動物門に属する、体長1ミリ内外の小動物」だ。ユルく歩く動物モン。HONZメンバーもみんな大好きクマムシ。乾燥にさらされると、変身して呼吸も代謝も止めてしまう。そうなったが最後、真空・高温・低温・高圧・X線も大丈夫、宇宙空間に放り出しても生き延びる。まさに、完璧なミイラ。それって、生きてるの、死んでるの?

この本は、神戸にある 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター でプロジェクトを率いている、最前線の生物学者3人による対談本だ。「幹細胞システム ・ 動的平衡」「進化生物学」「システムバイオロジ― ・ 時計遺伝子」、それぞれ異なるテーマにおけるプロフェッショナルが語る、知的格闘技。やさしいイントロダクションと、詳しい章末解説付きでお届けします。

倉谷:  『七人の侍』のあの場面は、立襟鞭毛虫(たてえりべんもうちゅう)が海綿になる経緯だなって思うわけよ。

こんなトーク、というか、そんな風に『七人の侍』を見ているのは、きっと世界でここだけだろう (「立襟鞭毛虫」にもちゃんと丁寧な解説がついている)。このコメントは「多細胞生物が、単細胞生物と比べていかに社会主義か」という話の一部なのだが、ここからさらに、社会性をもつ哺乳類ということで、みんな大好き「ハダカデバネズミ」の話につながっていく。素敵だ。「インフレーション宇宙」、「胡蝶の夢」、「時計仕掛けのオレンジ」、マルセル・デュシャン。一見、関係なさそうな単語がバンバン出て来る。分野を超えて、関係ないところにも関係を見出す。素敵だ。3人寄れば文殊の知恵というが、1人1人が既に文殊だ。スデモンだ。文殊が3人集まったら何になるのだろう?スーパー文殊か?スパモンか?スデモンで、スパモンなのか?ちなみに最近、両親がこのサイトを読み始めた。まさかのマスコミリーク。しかし私はまけない(何に?)

ちょっとエキサイトして時間の話をし忘れた。本書のメインテーマだ。時間は、「移り変わる時間」と「繰り返す時間」の二面性をもっているという。そう言われると、たしかに、世の中の「繰り返されるモノ」にいろいろ「名前」をつけて、それがどのように移り変わっていくのか見ている、というのが生物にとっての時間なのかもしれない。私は今まで、そうやって生きてきました。情報の記憶と、イベント発生時の決まりごと。小さな遺伝子が1日を刻むシステムを創り出し、小さな細胞が環境に応じた変化を起こす。DNA自体も、どこかのタイミングで変異を起こして進化していく。その仕組み、生物のなかの時間についての研究が、今、神戸で行われている。タンパク質が刻むフェムト秒(1000兆分の1秒)の時間から、10億年単位の進化の時間まで、トークの守備範囲はイチロー並みに広い。そして、木村政彦並みに熱い。

それにしても、今どき、たった数十分で人の遺伝子をまるまる解読できるんですか?あんなに騒がれた「ヒトゲノム計画」ってなんだったんだろう。10年以上かかっていたものが、今では数十分だ。圧力炊飯ジャーを買った時にも思ったけれど、技術の進歩ってホントにすごいなあ!DNAが簡単に読めるようになって、進化の系統樹にも新説が出てきたらしい。たとえば、クジラは、カバさんと同じ祖先だということがわかった。順番的には、ラクダがまず分離し、鹿や牛が別になったあと、最後のほうで、クジラがカバと分かれる。カバとクジラ、そんなに似てない気がするけれど、ある日、クジラのご先祖様が「俺、ここにずっと居たい」とか思ったのだろうか?そして、カバ的な何かが、ちょっとずつクジラになったのか?不思議すぎる。そんなのがありだったら、人魚だってそのうち現れそうじゃないか?素敵だ...もうこうなったら、もうちょっとだけ勉強して、詳しくなって、もうちょっとだけ、遠い世界に旅にでようか。人はそれを、妄想と言う。いや、空想か。


クマムシ?!―小さな怪物 (岩波 科学ライブラリー)
作者:鈴木 忠
出版社:岩波書店
発売日:2006-08-04
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最近「クマムシプロジェクト」も始まったというホットな生き物。詳しくはこちらで。

ハダカで出歯だから、ハダカデバネズミ。なんてそのまんま。。動植物の名前って、そういうの多いですよね。メガネシロタカムラ。サイキンヤセタカムラ。

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