『中国人はなぜうるさいか』 週刊朝日11月25日号「ビジネス成毛塾」掲載

2011年12月4日 印刷向け表示
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中国人はなぜうるさいのか

昨年の夏、伊勢神宮へ参拝したときのことだ。神宮のホームページに書かれているように、五十鈴川の清流にかかる宇治橋を渡ると参道は深い森につつまれ、静かで神々しい空気に包まれるはずだった。日本人はもちろん、欧米人も厳かな面持ちで歩いているそのど真ん中をかきわけて、大勢で腕を組み、わめきながらのし歩く中国人観光客たちがあらわれた。久しぶりに頭に血がのぼった一瞬だった。

『中国人はなぜうるさいか』は、中国人とはさらにマナーも悪く、謝ることもなく、平気でパクり、接客ができない人たちではないかという素朴な疑問をもちながら、中国人気質や社会の仕組みなどについて解説した本である。その立場は中立であり、中国人をことさらバカにすることも、とりたてて擁護することもない。淡々と中国人に関わる人たちにインタビューをし、事例を掘り起し、複数の視点から分析してみせるのだ。

たとえば、中国人が40%以上を占めるという埼玉県川口市の芝園団地におもむき住民たちから話を聞く。中国人たちは朝から晩まで大声で騒ぎ、夜中には爆竹まで鳴らす。650ある中国人世帯のうち自治会費を払っているのはわずか1軒。しかも、外で立小便をするどころか、建物内で大便までするので困っているというのだ。150年前の欧米人たちも中国人がところ構わず大便をしていると報告していて、不潔な中国、清潔な日本はいまだに続いているという。

著者はこのような中国人の悪幣を古くからの慣習や、面子を重んじる価気質、拝金主義思想、文化大革命の影響、共産党独裁などさまざまな角度から説明しよう試みるのだが、それらを理解したとしてもなるべく関わりになりたくないという気持ちが強くなってしまう。しかし、中国からの観光客は増え続け、偽装結婚などで日本に永住する中国人も増え続ける。

市場としての中国、工場としての中国、観光客として迎える中国人と付き合わざるを得なくなるビジネスマンが増えるにつけ、本書は恰好の入門書として一読に値する。

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