『戦国の食術』 生き残りをかけた粗食

成毛 眞2012年02月28日 印刷向け表示
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戦国の食術: 勝つための食の極意 (学研新書)
作者:永山 久夫
出版社:学研パブリッシング
発売日:2011-11-15
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戦国武将は戦死や自刃などでの早死を除くと、意外にも長生きだったらしい。北条早雲88歳、島津義弘85歳、大久保彦左衛門80歳、徳川家康75歳、伊達正宗70歳など、『戦国の食術』には70歳以上で亡くなった60人あまりの武将がリストされている。

人工呼吸や輸液などの延命技術などなかった時代だから、長患いすることもなく、亡くなる直前まで元気であったことだろう。家康などは18人の側室をもち、16人の子をなしている。末子の市姫は家康66歳のときの子である。

著者はその理由について、米を一晩水に漬けておいたこと、旬の野菜を使った汁物、いわしや海藻などのカルシウムの多いものの摂取、茶の湯などにあるとする。

ところで、本書の副題は「勝つための食の極意」だ。長命食はむしろオマケで「ほうとう」の武田信玄、「仙台味噌」の伊達正宗など万人が知っているエピソードから、武士めしの最終兵器である「兵糧丸」の作り方まで網羅していて抜かりがない。

竹中半兵衛が処方していたという兵糧丸とは、松の甘皮、薬用人参、白米を粉にして丸めて蒸し、乾燥させるのだという。戦国の栄養ドリンクだ。戦前の帝国陸軍も兵糧丸を研究しており、昭和9年には「ここに兵糧丸の地位を把握するならば、絶対に兵糧丸を看過することは不可能である。見よ、陸軍においては、兵糧丸研究の結果、着々として新しき兵糧丸を生み出しているではないか」などと力強く言い切るのだが、どう考えても時代は20世紀。負け戦になってしまった。

最近、断食道場やプチ断食をしているビジネスマンが増えてきた。粗食に関する本も売れているという。弁当男子という言葉も流行った。万が一にもヨーロッパ発の恐慌でも起こると、世界中が戦国時代さながらの厳しい時代を迎えることになる。もしかすると日本のできるビジネスマンたちは生き残りを賭けて、無意識に戦国時代のごとき食生活を取り入れ始めているのかもしれない。

(週刊朝日12月23日号「ビジネス成毛塾」掲載)

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