学生メンバー応募レビュー『市場対国家』

土屋 敦2012年01月08日 印刷向け表示
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HONZ学生メンバー合格者が応募の際に書いたレビュー。最後は刀根明日香さんのレビューです。

市場対国家―世界を作り変える歴史的攻防〈上〉 (日経ビジネス人文庫)
作者:ダニエル ヤーギン
出版社:日本経済新聞社
発売日:2001-11
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政治家ってどんな人? 日本の政治家みたいにどうせ国家議員の息子が国家議員になるのでしょ? その中から首相が生まれるのでしょ? だから日本なんて変わりっこないのね。私が高校まで持っていた政治のイメージは、ニュースを観るようになった今でも変わらない。いくらCHANGEを叫んでも、民主党が喜んでも、私には遠い世界。政治経済学部の大学生がこんなこと言っていたら終わりだなと思い、仕方なく手に取った本がこれだ。

市場対国家。まず1945年ベルリン会議から1999年のユーロ誕生までの経済の流れを一通りつかむ。まるで三銃士を読んでいるみたいに簡単で、ストーリー性が高いのですぐにのめり込むことができる。アジア/アメリカ/EUなどと独立させず、一つのストーリーの中で、互いにどのように影響を与えているのかが分かりやすく書かれていて、経済の入門書としてお勧めである。

しかし同時に、入門書以上の内容を持った本でもある。世界の「考え方」が大胆に変わっていく様子が非常に興味深い。著者も初めに「市場対国家」は、「考え方」の変化がきわめて大きな力を持ちうると言う。経済学者が「考え方」を作り上げ、偉大な指導力を持った指導者がそれを実行に移した時点で世界は変わる。イギリスを例に見てみよう。ハイエクが自由主義を唱え、「思想担当者」キース・ジョゼフと弟子のマーガレット・サッチャーがドラマを作る。私は一気にサッチャーファンになった。サッチャーは革命者である。そして同時に強い女性である。強い女性……。英雄が女性というだけで美しく感じるのは私だけだろうか。

彼女の逆境はパーフェクトに仕上がっていた。「福祉国家」主流のイギリス社会、破滅寸前の国家、お金を無駄につぎ込み続ける政治家、女性首相は前代未聞、家は雑貨屋を営んでいる。その中で、サクセスストーリーは進む。1979年、彼女は首相になり、ハイエクの自由主義を取り入れ、イギリスはどん底から世界の最先端へ返り咲き。民営化の始まりである。「あの女」と罵倒し続けた政治家たちは、彼女を手の届かない存在として拝めるしかない。1990年代には、彼女の影響で、世界各国の新しい経済政策が確立されるようになっていた。しかし、サッチャー時代は、党派を越えた首相の不人気で幕を閉じる。いつの時代も英雄の業績と恩はいつか忘れ去られるものかと考えざるを得ない。是非貴方には、この雑貨屋娘から首相へ、そして転落へのストーリーを楽しんでもらいたい。

サッチャーリズムは世界中に広まったが、それぞれの国は問題にどのように対処していき、また「考え方」を変えていったのか。鄧小平やガンディーの信念は現在にも大きな影響を及ぼしている。市場対国家のキーポイントはすべて「はじめに」に集約してある。貴方が手に取って、最初の20ページを読んだら、この本の価値を認めるに違いないだろう。

考え方が変わり、偉大な指導者が実行し、世界が変わる。なんだ、政治もなかなかロマンチックじゃないか!

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