『痕跡本のすすめ』 新刊ちょい読み

成毛 眞2012年02月17日 印刷向け表示
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痕跡本のすすめ
作者:古沢 和宏
出版社:太田出版
発売日:2012-01-26
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買ってはいけないものを買ってしまった。読んではいけないものを読んでしまった。これまでは新刊ノンフィクションのみを追い続け、古本屋店頭の100円均一台など見向きもしなかったのだが、明日から鵜の目タカの目で「痕跡本」なるものを探す自分が目に映る。まさに目から鱗。著者は愛知県犬山市で「古書 五つ葉文庫」を経営しているという。1979年生まれだからセドリ親父ではない。

著者は本好きが嵩じて古本屋をはじめたのではないという。ある「痕跡本」との出会いで古本にのめり込んだ。著者が命名した「痕跡本」とは、前の持ち主の痕跡が残っている本だ。線引きや書き込みなどが痕跡の代表例であろう。一般的にそのたぐいの古本は古紙と紙一重である。著者はある日「世界一怖いホラー漫画」と目される『まだらの卵』という古本を手に取った。その表紙は針でめった刺しされていた。その傷あとは20ページにまで達している。著者は作家と読み手が真っ向から向かい合った結果の痕跡だと読み解くのだ。

『世界童話文学全集1 ギリシャ神話』に挟み込まれていたのはミノルタカメラの保証書。その保証書の余白には「初めて買ってもらひし皮靴の いたまぬままに夫は居ませじ」という短歌。いやはやグッときますなあ。『体脂肪を減らしてきれいにやせる』という本に挟まれていた筋トレメニューのメモ。しかしそのメモは娘の小テストに書かれていた。その大雑把な性格ではダイエットは難しいだろうなあと思わずニヤリ。太宰治の『津軽』の奥付にかかれた一言「たいくつな本 故郷はいいなあ」。たしかにいろいろに妄想は膨らみ、興味は尽きない。

本書はA5版フルカラーで写真満載なのに1300円。非常に丁寧な編集。本好きを狙い撃ちする地対空ミサイルのような本だ。

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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
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出版社:中央公論新社
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