おすすめ本レビュー

『SAHEL』

成毛 眞2010年1月28日
Sahel: The End of the Road (Series in Contemporary Photography, 3)

作者:Sebastiao Salgado
出版社:University of California Press
発売日:2004-10
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yasuji81さんからコメントいただいたので、それをもとに記事にしてみることにした。共感いただいたセバスチャン・サルガドの『WORKERS』はグローバルなワーキング・プアまたは過酷労働を中心とした写真集だった。

サルガドをもう一冊紹介しておこう。『SAHEL』はアフリカのサヘル地帯にある国々を1984年-1985年にかけて取材した写真集である。この年代にはチャド、エチオピア、マリ、スーダンでは100万人もの人が栄養失調で死亡した。四半世紀前の過去なのだが、壮絶で過酷な生と静かな死が目の前にある。光と影に包まれて絶望するしかない人々。ルポルタージュでも、小説でも、動画でも絶対に表現できない、ただごとではない世界がそこにある。

本書の最終ページに載っている写真だ。エチオピア空軍のミグ戦闘機からの機関銃攻撃を避けるために、夜通し歩き、カレマ・キャンプに到着した何千人もの難民たちを撮ったものだ。

http://www.artnet.com/artwork/425715692/928/sebastiao-salgado-sahel.html

それにしてもこのような素晴らしい写真集がさらりと置いてあるJAZZ喫茶などはないものだろうか。写真集や美術書は高価だし、みる場所を選ぶような気がする。図書館で資料を読むようにみるのも味気ない。自宅ではこの圧倒的な非日常に対峙するには本当は都合がわるい。