『日本プロ野球改造論』業界再編のケーススタディ

2013年5月14日 印刷向け表示
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日本プロ野球改造論 (ディスカヴァー携書)

作者:並木 裕太
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2013-03-16
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日本のプロ野球を題材にした現在進行形の秀逸なビジネス・ケーススタディだ。身近なプロ野球を題材に小難しくなく、まとめられており、目からウロコがぽろぽろと出てくる。

「日本プロ野球は、日本産業の縮図である」とサブタイトルで銘打っており、ビジネスとして頭打ちになっている日本のプロ野球を改革するだけでなく、そこから日本の産業再生の道まで見出そうとする、かなり大胆な狙いをもっている。そして、読み進めていれば、確かにパズルのピースが組み合わされば不可能なことでもないかもしれない、と希望を感じさせてくれる。

そもそも、本書の内容の下敷きは2011年に12球団のオーナーが集まった会議でのプレゼン資料である。日本のプロ野球の変革を唱えたプレゼンは著者自身が行った。オーナー会議に外部の人間が入って発言したのは史上初だったという。

その内容に触れる前に、そのプレゼンが行われるまでのストーリーに戻ろう。時は遡って、2004年、近鉄バッファローズとオリックス・ブルーウェーブの合併話を端緒に、一リーグ制への再編が勃発、球界のドン、渡邊恒雄は「たかが選手が」と高慢な発言をし、それが選手会による史上初のストライキにつながった。その後、楽天とライブドアによるプロ野球への新規参入争いを経て、東北楽天イーグルスが誕生した。まったく新しい球団が誕生したのは、最弱だった球団高橋ユニオンズ(内藤順によるレビュー)以来、50年ぶりのことであった。

少年時代、プロ野球選手を夢見て、その夢が破れた著者は、ビジネス・コンサルタントとなっていた。当時、一連の再編のニュースを見、野球への想いがふつふつと蘇り、ツテもコネもないまま、複数の球団のお問い合わせ窓口(info@xxxx)に、プロフィールとアイディアをしたためた資料を送付した。それに反応したのは、楽天、後に球団オーナーとなる社長から直々に返信があり、コンサルタントとして球団経営に関わることにつながった。

そもそも、なぜ、日本のプロ野球は改造しなければならないのだろうか?メジャーリーグと比較すると、それは明快になる。1995年当時、メジャーリーグと日本のプロ野球のビジネスは同規模であったが、2010年には4倍もの差が開いていた。ちなみに、プロ野球の観客動員が緩やかに減少する一方で、改革に成功したお隣韓国のプロ野球は、10年間で観客動員を3.2倍という驚異的な伸びを示している。その差はなぜ生まれたのだろうか?日本のプロ野球は巨人に依存したビジネスモデルかつ長らく国民の代表的な娯楽として存在していたのに対し、メジャーリーグはアイスホッケー(NHL)、アメリカンフットボール(NFL)、バスケットボール(MBA)と国内のライバル同士がしのぎを削りながら、熾烈なファン獲得争いを繰り広げていた、その環境の違いが影響している。

メジャーリーグはチーム同士が競争する一方で、リーグそのものの価値向上を重視し、リーグビジネスと呼ばれるリーグ全体として展開する事業を推進した。リーグを盛り上げるための分配金により、戦力差を少なくすることで、リーグ全体の盛り上がりにつなげている例は多くの人に知られている。結果も良好で、10年間で9チームがワールドシリーズの頂点に立っている。放映権や広告枠の販売も、30チームが協力して交渉力を高め、リーグの全体最適を目指している。CMを飛ばしてテレビを録画できる時代に、生中継のコンテンツは価値が高まっている。殊更、攻撃と守備が入れ替わる間にCMを入れやすい野球という競技は重宝されており、その評価はうなぎのぼりのようである。

今年も日本で、盛り上がりを魅せた野球の世界頂上決定戦のWBCも、リーグビジネスの一環とも言える。WBCの実施主体はメジャーリーグであり、その世界展開の一環であったのだ。オリンピックから野球競技がなくなったタイミングでしたたかにも、WBCを提案し、実現させた。メジャーの選手が参加しないにも関わらず、本場アメリカで開催することをを価値として打ち出して、自分たちの土俵に持ち込んでいる。それは、世界中の新しいヒーローとなりうる選手をスカウトする草狩り場ともなっており、リーグの価値の向上とあわせて、一石二鳥となっている。この他にも、自分たちの価値を最大化する大胆なアイディアを次々に実現させ、ビジネスを加速させている。

国内のリーグ再編で揉めている間に世界との差を広げられ、国内でのプレゼンスも低下している日本のプロ野球への処方箋は、アメリカから単純にソリューションを持ち込めばよいわけではない。アップルとメジャーリーグに共通性を見出し、マッキンゼーで最年少で役員に就任した著者が考える秘策は?本書の中にある日本の産業が再浮上するヒントの断片を見つけてほしい。

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作者:南 壮一郎
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2010-12-10
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メジャーリーグ30球団すべてに手紙を送り、2004年のタイミングで、三木谷浩史社長にわずか20分ながら直談判、見事「楽天イーグルス創業メンバー」をつかみ取ったストーリーは、改造論とも重なってくる。当時の楽天球団の立ち上げストーリーはどれも面白い。

競争戦略としてのグローバルルール―世界市場で勝つ企業の秘訣

作者:藤井 敏彦
出版社:東洋経済新報社
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