覆面の知能犯 vs.サイバー警察――シビれる社会事件マンガ『予告犯』

苅田 明史2014年02月13日 印刷向け表示
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予告犯 1 (ヤングジャンプコミックス)
作者:筒井 哲也
出版社:集英社
発売日:2012-04-10
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あなたは目を背けていないだろうか?

アベノミクスが声高に叫ばれて1年以上が過ぎました。
日経平均株価は確かに上昇しましたが、契約社員や派遣社員などの非正規雇用者問題はまだまだ根強く残っています。ニュースで見かける事件の犯人の職業がそういった非正規雇用者だったとき、あなたは「あぁ、またか・・・」と思っていたりはしないでしょうか。
今回は、私たちがそういった問題から目を背けてはいけないこと、また誰にでも尊重するべき人格があるのだということを気づかせてくれるマンガを紹介したいと思います。

本格社会事件マンガ「予告犯」

私が「予告犯」を読んで最初に抱いた感情は、「おいおい。このマンガを読んだ人のなかから、模倣犯が続出してしまったりするんじゃないの・・・?」という不安でした。
そして不安を抱いた後に気付くのです。この不安は、恐らく私たちが普段抱いている世の中に対する疑問の裏返しなのではないか、ということに。すなわち、本当にこれが起こってしまうのではないかという恐怖がそこにはあります。

本作の主人公は犯人を追いつめる警察ではなく、世の中に不満をもつ非正規労働者の犯人グループ。犯人はマンガ喫茶を拠点とし、インターネット上の動画投稿サイトにこれから行う犯行を投稿し、それを次々と実行していきます。
被害者は、飲食店で食事にムシを入れる様子をインターネットに投稿してその店を廃業に追い込んだ学生アルバイトや、採用面接を受けに来た中年男性を馬鹿にするような「つぶやき」を投稿した若手ビジネスマンなど、法律では裁けない悪者たち。彼らを「予告」通りに断罪することで、犯人らはインターネット上でカルト的な人気を集めていきます。
読んでいくうちに、あなたも犯人の逃走劇を応援したくなってしまうかも・・・?

警察は彼らを止めるべく捜査を続けるのですが、ネットという世論を味方につけた犯人グループはますます勢いを強めるばかり。果たして警察は事件を阻止できるのか。そして、一体彼らの目的とは何なのか――。

社会的悪を次々と罰していく様は思わず『デスノート』を彷彿とさせますが、本作はあくまでリアリティに則った作品です。作中で起こる事件も実際の事件をモチーフとしたものが多く、「こういう事件、誰かやりそうだな・・・」という不安を一層掻き立ててくれることでしょう。

全3巻と長編ではないですが、読み終えたとき、密度の濃い映画を見たような気分にさせてくれる作品です。シビれるような作品に出会いたいアナタにぜひお薦めです!

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