沖縄の海を舞台にした大人向けSF『ナチュン』

苅田 明史2014年02月26日 印刷向け表示
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ナチュン(1)
作者:都留泰作
出版社:講談社
発売日:2007-02-23
  • Amazon Kindle

沖縄の海を舞台にした大人向けSF

頭の半分を失ってしまった天才数学者が、学術論文として発表したイルカの映像から始まる本作。

主人公である石井光成(いしい みつなり)は、この映像には世界を支配できる人工知能の秘密が隠されていることを見抜き、イルカを求めて沖縄の周辺諸島を訪れます。

彼はそこで知り合ったすげない中年漁師や、言葉は話せないがイルカとはコミュニケーションできる謎の美女との騒動に巻き込まれながら、徐々にイルカの映像に隠された真実に迫っていきます。

最初はあまりSF要素を感じにくいかもしれませんが、巻数を追うごとに「大人向けSF成分」がジワジワと効いてきて、のめりこんでいくような面白さがあります。

「大人向けSF成分」って?

『ナチュン』で語られるのは、陽気な南国風景の裏に隠れた、怪しげでドロドロとした世界です。

例えば、主人公たちが拠点とする島々では土着信仰が残っていて、主人公のような「よそ者」には明かされない行事があったりします。

その他にも、深海で人間を奴隷のようにこき使う秘密結社が存在したり、キリスト教の内部抗争が世界戦争を引き起こしたりと、全6巻のマンガにしては「これでもか」というくらい「大人向けSF成分」がちりばめられているのです。

これらのキーワードだけを見ても、好奇心がそそられること間違いなし!なのですが、作者の都留泰作先生はなんと文化人類学者でもあります。

海中を泳ぐために装着する人工のエラや、水をエグるように進む潜水艦など、SFに欠かせないメカはもちろん、沖縄や周辺諸島がもつ「独特の空気感」の描写も思わず見入ってしまうことでしょう。これもきっと、作者の研究の賜物なんじゃないでしょうか。

果たして主人公はイルカの謎を解き明かし、世界を支配できるのか――。
目まぐるしく変化する展開に振り落とされないよう、要注意です!!

祝・電子書籍化!

第一回「マンガHONZ夜会」のレポートでも語られていたのですが、実は本作は絶版本で、ECサイトでも中古品しか扱いが無い状況でした。

マンガHONZの目指す姿は「眠れる良いマンガをそっと拾い集め、読者に届けること」なのに、まさかの『ナチュン』永眠中・・・。

ここまでレビューを読んで「そりゃないだろう」と言いたくなる気持ちはよく分かります。先の例会後、私も「さすがに絶版本をオススメするのも気が引ける・・・でも間違いなく良いマンガだからたくさんの人に知ってほしいし・・・」と悩んでいました。

そんなとき、マンガHONZ編集長、コルクの佐渡島さんからこんな案内が。

『ナチュン』電子書籍版全6巻を2月21日に配信することが正式に決定しました!

ということで『ナチュン』、長い眠りから復活。

私(苅田)が正にマンガHONZで実現したかった「名作の復刻」というミッションが早くも実現し、感動のあまりついつい電子版も記念購入してしまいました。 

独特の雰囲気を醸し出すこの海洋物語に、どっぷりと浸ってみてはいかがでしょうか。

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