特別対談:『キーチVS』新井英樹×堀江貴文

堀江 貴文2014年03月01日 印刷向け表示
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『キーチVS』単行本の巻末には、作者・新井英樹氏によるインタビュー「新井英樹の部屋」が掲載されている(第5集以降)。第6集のゲストになったのが、我らが堀江貴文。このインタビューの模様を、マンガHONZで特別に公開いたします。

キーチVS 1 (ビッグコミックス)
作者:新井 英樹
出版社:小学館
発売日:2008-04
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  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
キーチ!! (1) (ビッグコミックス)
作者:新井 英樹
出版社:小学館
発売日:2002-01
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オナニーが社会を救う!?

ーー俺(新井)正直に話すと、堀江さんて、もう圧倒的に自分が描いているものと敵対する人だろうってずっと思っていたのが…

堀江 (話の途中で)ほんとうですか。

ーーそうなんですよ。印象がバッと変わったのが、*秋葉原通り魔事件の時に、堀江さんのコメントが抜群だと思っちゃって。何でこいつ犯行を思いついた直後でもいいから1本抜かなかったんだって。オナニーしなかったんだっていうのが。俺、あの秋葉原事件のいろいろなコメントを聞いたけど、一番迫るコメントだなと思って。

堀江 あんまりみんな言わないですよね。

ーーそうなんですよね。結構真理だよなって思って。

堀江 あれ、たぶん絶対真理ですよ。彼はそこがちょっと何かたぶん、不器用なんですよね。オナニー、あんまりできない人だと思いますよね。風俗は行っちゃダメだと思っている。潔癖性みたいな。

女を性風俗の道具に思っているのはよくないとかね。

ーーそっちなんですかね。それよりかはやっぱり理想があってというんじゃないですか。

堀江 両方だと思いますよ、たぶん。素人童貞みたいな感じで、最初の女がプロは嫌だとか。あれ、何か一発抜いたら終わる系の、そういうところに根ざしている暴力なんだと思うんですよ。もうちょっと、ああいう犯罪は減らし方があるんじゃないかなと思ったんですよね。

ーー堀江さん、そういう子たちを救おうという夢はないんですか。

堀江 いや、あまりないですけど。何か発信すれば変わるのかなとは思いましたけどね。

実は今までに書いた本とかって、そういうところを発信しているんですよ。お金の話もそこから誤解を生んでいて、拝金主義といわれたきっかけになるのは、『稼ぐが勝ち』っていう本があって、そこに僕は何を書いているかというと、要は自信を持ちなさいっていうことなんです。

自分が自信を持ったきっかけって何だろうというのをいろいろ考えていくうちに、お金を稼げたということで自分に自信がついて、好きな女の子だって口説けるようになったっていう。それって、でもすごく大事なことじゃないですか、男性にとっては。口説けない奴はいっぱいいて悶々としているわけじゃないですか。

でも一回女の子を口説いて、付き合えるようになったらバーって開けるわけですよ、視界が。そのハードルを越えるためには、お金を稼げばいいんだと書いたんですよ。
 

検察は成り上がりが嫌い

ーーあれはどうだったんですか。メディアでガーって持ち上げられて、いきなり手のひら返された時のマスコミの引き方って、やっぱり結構すごいものあったんですか。

堀江 いやいや全然。あまり実害はないですよ。

要は注目されて、結構刺激的なことばっかり言っていると、むかつく人もいっぱい出てきて、その無言の声を代弁する検察庁みたいなのが出てくるんです。

だから検察に狙われるのってそういう人が多いですよね。当たり障りのない立派なこと言っている人は狙われないですよね。あまり表に出てこない人とか。挑戦的に言う人の方が狙われやすいですよね。だからちょっとやっぱりいいことを言って、いい人キャラをある程度演じておかないとまずい。

ーーちょっと興味になっちゃうけど、今の小沢一郎の状況ってどういうふうに思ってます? 狙われたってとるのか。

堀江 検察には狙われたでしょうね。そもそも彼らは嫌いなんですよ。田中角栄から脈々と続く彼らの政治資金の集め方が気に入らないんですよ。

とにかく検察庁の人たちは成り上がりが嫌いなんですよ。それはもうなんていうのかな、理屈じゃないんですよね、たぶん。感情かな。だから成り上がり者と商売人は黙っておかないといけないという。
 

べーシックインカム論争

ーー世の中をよくするということでいうと、堀江さんの本を読ませてもらうと、*ベーシックインカムのことが出てきて、これってどの程度うまくいくって思います? 最低賃金もらってもギャンブルに使っちゃうかもしれないし、働かなくなるかもしれない。

堀江 いいんですよ、働かなくても。全然遊んでいていいんですよ。遊んである程度、金を使ってくれれば。そういうふうにならざるを得ないですよね。犯罪を起こすよりはいいじゃないですか、だらっとしてくれていた方が。

ーー生活できるとわかったら、勉強もしなくなるかもしれない。

堀江 でも、したい人はしますからね。僕だって勉強するなって言われてもするし、そういう人たちはやっぱりいますからね。

ーー堀江さんは強いんだと思うんですよ。たぶん、びっくりするくらい弱い人って世の中にはいっぱいいて、自分も例に漏れないかもしれないけど、そういう人たちはどうなっちゃうんだろうっていうのを思っちゃうんですよ。

堀江 うん? でもそれでだらんとして遊んで、たまにおもしろいことやればいいじゃないですか。

ーー成り立っていくんですかね。

堀江 成り立ちますよ。だって世の中を成り立たせているのって、やっぱり一部の天才たちだから、そういう人たちが技術革新をしたりとか、一生懸命死ぬほど働いたりとか勝手にしてくれるので。 

勝手にしてくれますよ、たぶん、と僕は思ってますけどね。

ーー俺の方が人間を信じていないのかもしれないけど、勉強する意欲すらなくしちゃうんじゃないかって。例えば貧乏ひとつとったって、モチベーションにはなるわけじゃないですか。それがなくなったら、勉強なんてやらなくてもいいって言ったら、やらないですよね。

堀江 いや、そんなことないですよ。

ーー子供、やりますかね。

堀江  やりますよ。

ーーやるかなあ。

堀江  やると思いますよ、やる意欲がある子は。
 

少数派であるということ

ーー世論って信用されてますか?

堀江 信じる信じないじゃなくて、自分の意見と合うか合わないかですね。自分が多数派なのか少数派なのかだけの話ですよ、それは。

ーーでも堀江さん、どっちかというと、少数派。

堀江 いやいや、そんなことないですよ。多数派のこともありますよ。

ーー俺、こういう漫画描いてたりしてるのもそうなら、映画とか音楽とかの好みも、いつも少数派にいることになっちゃって。

堀江 僕は商売やっているから、少数派であることは得になることが多いんですよ。

商売の基本からいうと、消費する側として、*イノベーターっていう人がいて、*アーリーアダプターっていう人がいて、*レイトマジョリティーっていう人がいる。

例えばiPhoneみたいなものが出て、すぐ使う人っていうのがイノベーター。次に飛びつく人たちをアーリーアダプターっていうんですよね。大体儲けられるのはその辺までなんですよね。レイトマジョリティーになったら、どちらかというと食われる側なんですよ。その世界のマジョリティーになってはいけないみたいな。

人と違った変わったことをやった方が商売はうまくいくんですよね。意外と独善的であった方がいい。周りの意見とかで商品開発してはダメなんですよね。

だからいいスタイルだと思いますよ。俺は少数派だというのは、すごくいいことだと思いますよ。だからこそ作品が売れるんだと思うんですよね。

ーーいや、売れないんですよ。

堀江 いや、売れている方だと思いますよ。だって普通の人だったらこんな話描けないじゃないですか。ほかにこんな話描ける人いないと思うんですよね。

ーーいえいえ。

堀江 *『ザ・ワールド・イズ・マイン』を見た時に、やばいよこの人って思いましたから、僕。あんな話描けないですよ、絶対。『キーチ!!』『キーチvs』になっても変わらねえなって。
 

実は新井英樹マニア!!?

ーー堀江さん本人は世間で刷り込まれているイメージと自分は違うと言ってるじゃないですか。堀江さんが『宮本から君へ』を買っているという話を最初聞いた時に、およそ刷り込まれている堀江貴文のイメージと、『宮本から君へ』ってちょっとつながらなかったんですよ。

堀江 そうですか。

ーー堀江さんが言ってる「最適化」、いかに無駄を省くかでいうと、宮本がやっていることってまあ無駄なことじゃないですか。だからなぜ?って思っちゃって。

堀江 ああ。『宮本~』は自分の殻を突き破るみたいなふうに読んでるんですよ。ダメでうだつの上がらない自分がいるわけじゃないですか。だけど、あるきっかけで彼は目覚めていくわけじゃないですか。目覚めて、より上を目指すというか、何かわからないけどすごい得体の知れないパワーを持って、絶対こいつには勝てないよみたいな奴に戦いを挑んでいくわけじゃないですか。そういうところにすごい共感しますよね。

『キーチ』の戦いにもすごい共感するんですよね。共感するというか、話がすごくよく分かる気がするんですよ。 いやあ、期待してますよ、『キーチvs』。今、盛り上がってきてますけど、単行本、どれくらいのペースで出てるんでしたっけ。

ーー半年に一冊ですね。

堀江 僕、新井さんの単行本、たぶん全部持ってますよ。『宮本~』なんかは豪華本まで持ってますから。

ーーありがとうございます。それ、かなり希有ですよ。

えっ、ミュージカル?

ーー担当さんに聞いたんだけど、堀江さん、*ミュージカルやるんですか。

堀江 はい。12月22日から五日間。

ーー聞いた時すごいなって思って。

堀江 普通、できないじゃないですか。いい機会だなって思って。それに役者やると女優にモテるんじゃないかっていう。そういう何か幻想があるんですけど。

ーーそれはいいモチベーションですね。

2010年10月11日/六本木にて収録
(キーチVS単行本第6集・収録)

新井 英樹
1963年9月15日神奈川県横浜市生まれ。1989年アフタヌーン(講談社)にて「8月の光」でデビューした。1993年サラリーマン時代の経験を基に描いた「宮本から君へ」で第38回小学館漫画賞青年一般向け部門を受賞。ヤングサンデー(小学館)連載「ザ・ワールド・イズ・マイン」は過激なバイオレンス描写と壮大なスケールで、批評家をはじめ岩井俊二、松尾スズキ、庵野秀明、高橋源一郎、町山智浩など多くの著名人から絶賛された。その他の代表作にフィリピン人女性と42歳独身男性の国際結婚を描いた「愛しのアイリーン」、“この世界”と激しく戦う少年・染谷輝一(そめやきいち)の人生を描いた「キーチ‼」、その続編「キーチVS」などがある。現在、IKKI(小学館)にて「空也上人がいた」(原作:山田太一)、コミックビーム(エンターブレイン)にて「SCATTER–あなたがここにいてほしい–」を連載中。

*秋葉原通り魔事件
2008年6月、加藤智大(25歳/当時)被告が、秋葉原で無差別殺傷事件を起こし、7
名が殺害され、10人が負傷した。犯人が派遣社員だったことや携帯サイトで殺人予告をし
ていたことなどもあり、世間を大きく騒がせた。また、犯行直後の様子がYouTubeなどに多数アップされたり、異様な展開を見せた。

*ベーシックインカム
政府が子供から老人まですべての国民に、毎月最低限の現金を支給するという、基礎所得保障制度。「働かない生き方」を容認できるかが賛否の分かれめか。

*イノベーター理論
1962年にスタンフォード大学のエベレット・M・ロジャース教授によって提唱された、社会変革や流行についての理論。イノベーターとは、革新者のことで、社会の価値観は自分の価値観と相容れないものと考えている。全体の2.5%。アーリーアダプターとは、初期採用者のことで、流行に敏感で自ら情報収集を行い判断する。全体の13.5%。レイトマジョリティーとは、後期追随者のことで、大多数が試しているのを見てから選択する。全体の34%。

*『ザ・ワールド・イズ・マイン』
新井英樹氏が1997年~2001年まで「週刊ヤングサンデー」で連載していた漫画作品。殺されていく人々を痛そうに苦しそうに、子供も老人も関係なく描いたため、よく編集部から叱られる。現在、『真説ザ・ワールド・イズ・マイン』としてエンターブレインから復刻されている。

*ミュージカル
2010年12月22日~26日まで堀江貴文主演ミュージカルが銀座・博品館劇場で上演された。

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