圧倒的なわかりやすさ 三田紀房的マンガ日本経済入門『インベスターZ』

角野 信彦2014年03月24日 印刷向け表示
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インベスターZ(10) (モーニング KC)
作者:三田 紀房
出版社:講談社
発売日:2015-09-23
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  • honto
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  • 紀伊國屋書店
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インベスターZは投資を扱うだけでなく、貨幣の起源から金融の歴史まで扱う経済エンターテイメントマンガだ。目先の株価の上下に一喜一憂するのも投資の醍醐味ではあるだろうが、このマンガを読んでマーケットを観察することで、その動きの本質まで見えてくるのではないか。そんな気にさせられる情報が満載で、『ドラゴン桜』が、東大受験のバイブルになったように、経済を手軽に学びたい人にとっての不可欠の本になる日も近いだろう。

しかも、値動きが激しい個別の銘柄についての解説までところどころにちりばめられている。セブンアンドアイや綜合警備保障などの銘柄が登場してきて、競争優位について説明される。銘柄選びについては10年後に読んでもコンテンツとして古びないものを選んでいるのではないか。個別銘柄を選ぶためにどう考えたら良いかの優れたケーススタディになっている。

ただし、この作品の本質はこうしたお得感のある情報にあるのではない。それは投資部主将の神代に主人公の財前が語った言葉に体現されている。

投資の勉強とは……

正解を知ることではない

問題を作ること

その問題を誰よりも先に解くこと

(中略)

社会の人々を幸福にするために将来どういう問題を解決すればよいか

これを想像して自分で答えを導き出すこと

そのための努力を続けている企業を見つけて投資せよ

そういうことじゃないですか?

経営コンサルタントの大前研一さんの著作の『企業参謀』で、問題を解決するために一番大切なのは、「解くべき問い」を正しく設定することだと言っている部分がある。この会話で『インベスターZ』でも問題は与えられるものではなく、自分の頭で考え、発見するものだということを伝えている。単に時流にのった銘柄解説ではないので、長く読まれても決して古びない工夫がここにも見て取れる。

3月20日発売の第3巻からは、道塾学園投資部のライバルとして、桂陰学園女子投資部(ガールズインベスターP 略してGIP)が登場する。このライバルは道塾学園投資部に対するアンチテーゼとしていろいろな点で正反対のアプローチを取る。

道塾が3,000億を運用しているのに対して、GIPのメンバーの運用資金は2,000万から10万円程度だ。そして一番の違いは投資銘柄選択のアプローチで、主人公の財前が経営者視点で競争優位という切り口を重視するのに対して、GIPは消費者目線を一番の拠り所とする。

私たちはたくさんの企業に囲まれて暮らしているの!

だから投資は日常生活の延長にある

そう考えれば随分敷居が低く感じるでしょ

(中略)

身近な生活産業の中にも

いきなり価値10倍なんて企業が生まれてきたりするんだから

ここで5年で約10倍になった実在の銘柄を提示して消費者の感覚が投資に活かされることをGIPのリーダー 藤田美雪が証明するが、その銘柄名は是非『インベスターZ』第3巻を読んで確認してもらいたい。

こうした投資の格言が満載のこのマンガ、当然のようにウォーレン・バフェットが出てくる。私見だが、彼の投資家としての凄さは、経営者としての能力の高さにあると思われる。分散投資ではなく、ある程度のシェアを必ず持ち、投資家として大きな発言力を保持して経営に意見していく。そうして経営能力によって、長期保有と集中投資のリスクの中和を行っている。

GIPの藤田美雪はバフェットを崇拝しているが、少額投資なので経営を助言することによるリスクヘッジという裏技は使えないはず。その彼女たちが、どのように投資家として成功していくのか、それとも手痛い失敗をしてしまうのかがとても興味深く、目が離せない。

また、3巻の最後ではとうとう財前が自分の投資について確信を持ったように見える。

みんなが安いと思っている株に「そうではない」と

異論を堂々と展開すること!

一般的な評価が現実より低く見積もられている株を

正当に評価すること!

それが本当の投資!

これを読んで、糸井重里さんが『インターネット的』という著作の中で、

力があるのに過小評価されているものを探すというのが、

ぼくの今の仕事の方法です。

と言っているのを思い出した。仕事や人生そのものも、時間の投資と言えると作者の三田紀房は言っている。単なる投資マンガとして読むのもいいが、主人公を自分に置き換えて、そうした格言について考えながら読むのも面白い。

ようやく本領を発揮し始めた財前がどういう銘柄を発見していくのか、GIPとの対決には勝利できるのか、父親がカネを徹底的に嫌う理由がなんなのか、あまりにも気になりすぎて毎週モーニングを発売日に購入せずにはいられない。

インベスターZ(1) (モーニングKC)
作者:三田 紀房
出版社:講談社
発売日:2013-09-20
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  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
インベスターZ(2) (モーニングKC)
作者:三田 紀房
出版社:講談社
発売日:2013-12-20
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インベスターZ(3) (モーニングKC)
作者:三田 紀房
出版社:講談社
発売日:2014-03-20
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 三田紀房が野球×金で高校野球を描いたらどうなるか。タテマエ抜きの野球マンガ。

砂の栄冠(16) (ヤングマガジンコミックス)
作者:三田 紀房
出版社:講談社
発売日:2014-03-06
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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
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