『ヘウレーカ』 歴史が苦手だからって読まないのはもったいない。もったいなさすぎる!

苅田 明史2014年03月26日 印刷向け表示
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ヘウレーカ (ジェッツコミックス)
作者:岩明 均
出版社:白泉社
発売日:2002-12-19
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 『ヒストリエ』に至る実験的な作品

1年間で1万冊をゆうに超える新刊タイトルが発売されているマンガ。
そのなかでも、こんなにも何度も読ませるマンガは少ないでしょう。
そして、もし『ヒストリエ』が存在しなければ、こんなにも1冊で終わってしまうことが残念に思うマンガは他に思いつきません。

ちなみに『ヒストリエ』が好きで、まだ『ヘウレーカ』を読んでいないという方は、このレビューを読む必要はありません。
今すぐ買って読んでください!(笑)

なぜなら、岩明均先生の『ヒストリエ』と本作『ヘウレーカ』はいろいろな点で似ているからです。
私は『ヒストリエ』を先に読んでから『ヘウレーカ』に手を伸ばしたのですが、本作を読んで「おっ、こんなところは『ヒストリエ』にも共通するものがあるな・・・」と思わずニヤりとしてしまいました。
例えば、物語が紀元前の地中海における歴史や民族問題を取り扱っている点や、主人公が英雄として知られている人物ではないという点など。
きっと私と同じような感想を持った方も多いんじゃないでしょうか。

決してこの時代を描いたマンガがなかったわけではないのですが、歴史マンガのなかではマイナーな部類に入るでしょう。しかも名の知れた英雄ではなくその脇役をメインキャストに据えるというのは、一種の挑戦だったのかもしれません。
このマンガが話題となり、手応えをつかんだことで『ヒストリエ』につながった・・・推測にすぎませんが、この作品は一種の試金石だったのではないでしょうか。

そんななかで、まさにこのコンセプトにハマってしまった私。
私自身は世界史は大学受験までの勉強に留まっていますが、本作には教科書には出せない魅力が本当にたくさん詰まっていると思いました。
改めて、『ヒストリエ』を描いてくださっている岩明均先生にお礼を言いたいくらいです。
 

歴史の教科書がマンガだったらいいのに!

『ヘウレーカ』の主人公はダミッポス。教科書に出てくるような英雄ではありませんが、本作では天才科学者であるアルキメデスに認められた一人として、アルキメデスの発明した武器が戦争に使われる様子を見届ける役割を果たしています。
見た目は優しそうな青年なのですが、喋りが達者で、力よりも知性で困難を切り抜ける切れ者、という特徴も『ヒストリエ』のエウメネスに共通するものがありますね。

個人的にこの作品のハイライトはアルキメデスの発明した、古代には似つかわしくない殺戮兵器!!
鉤爪や高速投石器などの武器は、情け容赦なくローマ軍を蹂躙し、シラクサの街を堅守してくれます。
「本当に紀元前にこんな武器があったのか?」と半ば信じがたいものもあるのですが、気になって調べてみると、どうやら実在すると伝承されているものだそうです。
文献や史料をもとにして、当時の兵器がどんな風に使われるのかを具現化してくれる、これぞ教科書にはない歴史マンガの醍醐味でしょう。

一方で、アルキメデスの武器によって守られていたシラクサが、なぜローマ軍によって簡単に陥落してしまったのか、という解釈もとても興味深いものです。
どこまでが史実に基づいたものなのかは分かりませんが、結局、どんなに優れた武器を持っていても、それを使うのは人間であり、人間は感情によって動く生き物なのだということを教えてくれるのです。
まさにこれが歴史から学ぶ、ということなのでしょう。

1人殺せば殺人犯、世界中の半分を殺せば英雄、人間を全部殺せば神である。

教科書に載っている英雄のかげに隠れて、すばらしい生き方を貫いた人々がいることを再認識させてくれるマンガともいえます。

タイトルの「ヘウレーカ」とは、古代ギリシア語で「見つけたぞ!」「分かった!」という意味で、アルキメデスが実際に使った言葉として有名だそうですが、このマンガを手に取ったとき、まさしく「ヘウレーカ!!」と叫んでしまいたくなるような名作だと思います。


ところで、私はこのマンガを買ってからずっと「表紙に描かれた鏡(?)とそれを持つ手は誰のものだろう?」と気になっています・・・。
アルキメデスですかね? ぜひコメントいただきたいです!


岩明均先生は、歴史モノを描かせたら本当に最高です。
『雪の峠・剣の舞』もぜひ。

雪の峠・剣の舞 (アフタヌーンKCデラックス)
作者:岩明 均
出版社:講談社
発売日:2001-03-21
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ヒストリエ(1) (アフタヌーンKC)
作者:岩明 均
出版社:講談社
発売日:2004-10-22
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