表現の自由は料亭で決まるのか?クリエイターにこそ読んで欲しい。『大東京トイボックス』(6)

菊池 健2014年03月28日 印刷向け表示
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今回は、トイボシリーズTVドラマ完結記念と言う事で、小林琢磨さんと私で、2連続同タイトルレビューをします!

『大東京トイボックス』は、ゲームの創り手たちの激アツストーリーです。
そのアツいところは、昨日の小林さんのレビューに譲り、単行本でしか語られなかった、「規制とクリエイターの関係」にスポットを当てます。 

大東京トイボックス(6) (バーズコミックス)
作者:うめ
出版社:幻冬舎
発売日:2010-08-24
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  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂

 - 第6巻 Stage34 「作らざるモノたち」

某所の料亭。
対面する与党議員2名と、SW社社長の御堂雄頑に同社卜部・ジークフリート・アデナウアー

 御堂:単刀直入に申し上げます。近々提出される、児童ポルノ法の改正案。その見直しをお願いしたい。

(「自主倫理審査実証調査中間報告書」なる書類を差し出す。)

<中略>

卜部:何も改正案自体を廃案にして欲しいという訳ではありません。我々(ゲーム業界)は表現の自由を標榜するに足るだけの責任能力がある。と、申しているのです。

議員:規制対象から、ゲームを除外しろと?

<中略>

御堂:夏の総選挙、微力ながら弊社でもお手伝いできることがあるかと存じます。

とてもアツい本作の中で、そのスパイスとして、私が大好きなシーンです。
「作らざるモノたち」というタイトルにも、著者の思いを感じます。

ゲーム、出版、映像、それぞれの業界に自主規制団体は存在します。
本作の中で、ゲーム業界がとった「規制される前の自主規制」という防衛策は、児童ポルノ法の適用範囲について業界ごとの差異を生じさせました。

現実世界においても、児童ポルノ法改正案は継続審議中で、その帰趨はまだ結論を得ていません。

ひとつ、
ゲーム業界のストーリーとはいえ、マンガ業界にも深くかかわる児ポ法のことが、
ここまではっきりと連載マンガそのものに描かれることは、珍しいと思います。
特に、作品中における「表現規制と業界自主規制」の関係への深掘りは必見です。

もうひとつ、
主人公の天川太陽にも、クリエイターとしての(自主)規制への「答え」が求められます。ここがまた激アツストーリーに繋がっていくという、堪らない展開です。
熱い矜持の塊のような太陽が、「答え」を求めていく過程の中で、クリエイターとしての信念を深めていく、ラストへ向けての注目ポイントです。

本作は、表現規制の背景理解を促しつつ、作品も面白いという、一挙両得の作品です。
クリエイターは勿論、現代の創作に関わる全ての人に届いて欲しい作品です。

  

漫画家支援者目線 

本作は、ゲーム作りの話ですが、創作を行うチームのお話という見方も出来ます。

ゲーム制作には、企画、プログラマー、グラフィッカー、プロデューサー、制作進行、広報・宣伝担当など、色んな仕事があり、本作にも散りばめられています。
うめ先生の取材は完璧で、この知識で私がゲーム業界の人と話をしても、全く違和感なく言葉が通じました。読んだだけで、いっぱしの業界人気分です(笑

一方で、過去レビューにもある『重版出来』などを見ても、マンガ制作にも多くの関係者がいることが判りますが、ほとんどの新人作家には、作家、アシスタント、編集者と限られた関係者との接点しかありません。

実際の出版社には、営業、広報・宣伝、著作権管理など、多くの部署があり、チームとしての仕事がなされています。その辺り、ゲームとマンガの制作環境の違いを読み取るのも面白いかも知れません。
決して、どちらかが優れているというものでもなく、それぞれの業界の個性であり、創り手としての発見があると思います。

うめ先生はご夫婦でマンガ制作をされています。(小沢高広さん&妹尾朝子さんのユニット名が「うめ」)
それがあってのことか、チームで制作をしているシーンのやり取りのリアリティや、テンポや躍動感など、作品の魅力の一つとなっています。

ご本人から直接うかがった雰囲気では、自分のマンガ作りの一つ理想形を、G3制作チームに投影されたところもあるように感じました。

この辺り、意識して仕事をしないとなかなか判らない所なので、ゲーム業界の話として読みつつ、自分の作品作りの方法論と比べてみると、面白いかもしれません。

ところで、ゼビウスのあれ、知らなかったですね~。散々やったのに。

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東京トイボックス0 (バーズコミックス)
作者:うめ
出版社:幻冬舎コミックス
発売日:2014-03-24

トイボシリーズ前日譚(Kindle連載第1弾となった、作品の一つでもあります。)

南国トムソーヤ  1 (BUNCH COMICS)
作者:うめ
出版社:新潮社
発売日:2012-07-09
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現在、月刊コミック@バンチで連載中。
南国トムソーヤ制作の為、波照間島まで取材に行ったうめ先生ですが、
台風の影響で島を予定日に出ることが出来ず、トイボ作者として呼ばれたゲーム業界のイベントに、南の島からスカイプで出演するという、一味違うレジェンドでも業界では有名だったりします。

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