『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』新刊超速レビュー 

兎来 栄寿2014年04月23日 印刷向け表示
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(3) (モーニング KC)
作者:竜田 一人
出版社:講談社
発売日:2015-10-23
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
  • HonyzClub

「いちえふ」、と聞いて何のことか判るでしょうか?

世間では「フクイチ」と呼ばれることの多い東京電力福島第一原子力発電所。その呼称は、現場の人間や地元住民の間では「1F」であるといいます。今作は実際に1Fで働いて来た筆者による実録ルポマンガです。

これまでに多くの人が様々な形で福島第一原発について報じてきました。又、3.11や原発をテーマにしたマンガも出版されて来ました。しかし、その中でも現地で原発作業員として働いた人間が、そのありのままの様子をマンガという形で表した物はありませんでした。今作はモーニングで連載開始されるやいなや、国内外数多くのメディアでも取り上げられ大反響。

その単行本第一巻が本日発売となりました。

現地で働くことを志望してもなかなか仕事を回して貰えず、現地で観光をして時間を潰したり原発に何の関係もない仕事を回されたりする6次下請けという歪な構造

「ご安全に!」という、耳慣れない挨拶が交わされる現場。

身に付ける装備一つ一つに厳密な線量検査を行う一方で、汚染検査済証の半券はコピー用紙を定規で裁断。

東北とはいえ夏は暑く、放射能よりもダイレクトに命に関わる熱中症。

掻けない鼻の痒みの辛さ。

色んな年代が集まるなか、ギャンブルと下ネタが会話の大部分を占める男所帯。

何故か可愛い顔文字が書かれているJヴィレッジの入退記録。

危険区域でもセミはうるさく、道路には牛が飛び出してくることもあり、奇形動物など見た試しもない。

発電所や休憩所の構造、装備品の形状などなど……この作品を読むことで、今まであまり語られて来なかった現場の実情を沢山知ることができます。

「外の人に『1Fで働いている』なんて言うと超危険な現場でものすごい被曝しながら戦ってるヒーローみたいに言われたりシますけどね」

「なんの実際大半は俺達みたいに安くて地味な仕事タイね」

という会話も。裏方で機械や車のメンテナンスを行ったり、トイレの掃除をしたりする裏方の仕事も克明に描かれます。

「そやけどそんな仕事もやる奴がおらんと1Fは回らんのや。どんなつまらん仕事やろうとここで働いとる事には胸を張っていいと思うで」

と語る年配の明石さんがとても凛々しく見えます。現地で働く、あるいは働いていた方々には、感謝と敬意を表します。

メディアを経由して想像される「フクイチ」ではなく、一人一人の人間がそれぞれの想いを抱えて当たり前のように生きて働いている「1F」の姿が解る今作。

やはりマンガは、そのヴィジュアル要素を含む媒体としての特性ゆえに、字だけで書かれた本よりも何倍も解り易く物事を伝える力を有していると思いました。

貴重なドキュメンタリーとして、老若男女問わず一人でも多くの人に触れてみて頂きたいと強く願います。

Kindleの無料試し読み版もあるので、まずはそちらからご覧になってみては如何でしょう。

いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1) (モーニングKC)
作者:竜田 一人
出版社:講談社
発売日:2014-04-23
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • 丸善&ジュンク堂
  • HonyzClub
記事へのコメント コメントする »

会員登録いただくと、記事へのコメントを投稿できます。
Twitter、Facebookにも同時に投稿できます。

※ 2014年3月26日以前にHONZ会員へご登録いただいた方も、パスワード登録などがお済みでない方は会員登録(再登録)をお願いします。

コメントの投稿

コメントの書き込みは、会員登録ログインをされてからご利用ください。

» ユーザー名を途中で変更された方へ
 変更後のユーザー名を反映させたい場合は、再度、ログインをお願いします。

ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
発売日:2014-10-24
  • Amazon
  • Amazon Kindle
  • honto
  • e-hon
  • 紀伊國屋書店
  • HonyzClub

電子版も発売!『ノンフィクションはこれを読め! 2014』

HONZ会員登録はこちら

人気記事