連載再開発表『HUNTER×HUNTER』の冨樫義博も一目置く鬼才、岡本倫のススメ

兎来 栄寿2014年04月27日 印刷向け表示
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中学生の頃、過労で肺炎になり入院してしまいました。
その時の主治医の先生が無愛想な強面の男性で、正直言って苦手でした。
しかし、ある日のこと。
病室でも、多分に漏れず多くの時間を漫画を読むことに費やしていた私。何回読んだか判らない『HUNTER×HUNTER』を読んでいた時、その先生がやって来て
「それ、面白いよね!」
と普段見せない笑顔で話し掛けてくれました。
その時私は「いい人だなあ」と思ってしまったのです。
……我ながら何というチョロさでしょう!
ともあれヒソカが好きだというその先生と、退院した後も通院時にハンタートークで盛り上がったものです。

そんな時期もありつつ、物心付いた頃からジャンプっ子でもあった私にとって『HUNTER×HUNTER』は連載開始時からずっと追い続けている愛着のある作品。今までで最長となる二年超の休載を経ての今回の連載再開の一報、本当に嬉しい物でした。

よく巷で定型句として「冨樫仕事しろ」と言われます。勿論、気持ちは解ります。
しかし、冨樫先生は実は今までの28年の漫画家生活の間に58冊の単行本を出しています。平均して1年に2冊以上という刊行ペースは、月刊作品であれば普通。それを28年継続していると考えれば、多くの漫画家の中でも実はかなり働いている方だと考えることができるのではないでしょうか。

とりあえず、早く団長に会いたい!
明日発売のジャンプで詳細発表ということですので、見逃さないようにしましょう!

私はマンガソムリエとして、最近面白いマンガを尋ねられることはよくあります。
ただ、「『HUNTER×HUNTER』より面白い漫画を教えて」と言われたら、正直答に窮してしまいます。
そんな作品があったら、寧ろ私が知りたいくらいです!
個人的に好きな漫画はあっても、ハンターより客観的に面白いと断言できる作品なんてそうありません。特に30巻部分の完成度は漫画史に刻まれた物であり、何度読んで、何度泣いて、何度感嘆したことか……

と、ハンターについては幾らでも語り明かせますが、今回はそれは前置きでして。

そんな『HUNTER×HUNTER』を描く冨樫先生が大好きな作家がいるのはご存知でしょうか?
それが、現在アニメ放映中の『極黒のブリュンヒルデ』の作者でもある岡本倫先生です。

アニメ化している割に、どうも話題になっている感覚が乏しいですが……
もっともっとバズって良いはずの面白さを宿す作品群なので、これを機に紹介しようと思います。

エルフェンリート 1 (ヤングジャンプコミックス)
作者:岡本 倫
出版社:集英社
発売日:2002-10-18
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舞台となっている江ノ島に行く度に思い出すのが、この岡本倫先生の初連載作『エルフェンリート』。

2005年に、冨樫先生の奥さんである武内直子さんが、ブログで「夫が『エルフェンリート』にハマっている」と記述。
武内さん自身も「すごいマンガだ」と評しました。
という訳で、ハンターが好きで面白い漫画を探している方は、まず『エルフェンリート』を読みましょう。
序盤のこなれていない萌絵、エロ、グロなど人によっては厳しい要素があることは認めます。
ただ、それらを補って余りあり過ぎる物語展開と演出、考えさせられるテーマ性と余韻ある結末に読了後は思わずスタンディングオベーションです。

この作品もアニメ化されており、神秘的なOPもあいまって特に海外でカルト的な人気を博しています。
ただ、アニメはアニメで完結していますが、漫画版はその後の展開を描いており、そこが真骨頂と言えるくらい面白いので、アニメだけ観た方も是非漫画版も楽しんで頂きたいです。
その為、今でもたまに岡本倫先生に、海外からアニメの続編を望む声が届くのだとか。
 

ノノノノ 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)
作者:岡本 倫
出版社:集英社
発売日:2008-03-19
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『エルフェンリート』の次に連載したのが『ノノノノ』。

女では出られないスキージャンプに、女であることを隠して挑む主人公ノノを描いた物語。
先のソチ五輪で初めて女子ジャンプは正式種目になったので、その時に紹介できなかったのが少々残念ですが……。

この作品の1巻の帯に、「王道を隠し味に使える素敵な作家さんです。まずは一口どうぞ」という冨樫先生のコメントが添えられていました。
冨樫先生と岡本先生、両先生の作品を読むと、そこに共通した面白さを見出すことができます。
一言で言うなら、「ページを捲る緊張感」。登場する者達と作者の残虐性や狂気が作品に充満し、次の瞬間何が起きるか解らない。はっきり言って、お二方とも頭のネジが何本か飛んでます。そのヒリつくような感覚は、多寡はあれど全ての作品に存在し、この青春ラブコメ的な要素もある『ノノノノ』であっても例外ではありません。

打ち切りに近い形で連載が終了してしまったのが疑問な位、私は毎回楽しみにしていた作品です。
 

極黒のブリュンヒルデ 1 (ヤングジャンプコミックス)
作者:岡本 倫
出版社:集英社
発売日:2012-05-18
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『ノノノノ』も面白かったけれど、『エルフェンリート』のような作品をまた読みたい! 

という願望を見事に叶えてくれたのが、『極黒のブリュンヒルデ』です。

最初は今流行りの「魔法少女モノ」という体を為して登場しましたが、蓋を開けてみればそこには待望していたブラックなSF世界が広がっていました。
特に最新9巻は今まででも屈指の純然たる岡本倫節炸裂が見られる所で、目頭も胸も熱くなります。
『エルフェンリート』に続いて『極黒のブリュンヒルデ』を読める幸福を噛み締め、岡本先生に感謝しました。
もしもアニメ視聴継続を迷ってる方がいるとしたら、絶対に観続けた方が良いと言っておきます。アニメがどこまでやるのかは解りませんが、この後面白くなるのは確実、そうコーラを飲んだらゲップが出るくらい確実なのですから!
 

君は淫らな僕の女王 (ヤングジャンプコミックス)
作者:横槍 メンゴ
出版社:集英社
発売日:2013-02-19
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作品の面白さとは別に、岡本倫先生の作品の端々から迸るのが圧倒的なエロへのパトス。
そんな欲望をそのまま結晶化させたのが、かの名作SFのタイトルをもじったこの『君は淫らな僕の女王』です。

岡本倫先生が原作を担当し、その天才的なセンスによる設定に横槍メンゴ先生の可愛すぎる絵がピタリと嵌まり、半ば反則的なまでの破壊力を持つコラボレーション。

人類としては『エルフェンリート』や『極黒のブリュンヒルデ』のような作品を望むのですが、岡本倫先生は本当はこういうのを描きたいんだろうなぁ、というのがひしひしと伝わって来ます。バカエロ漫画好きは押さえておくしかありません。
 

岡本倫短編集 Flip Flap (愛蔵版コミックス)
作者:岡本 倫
出版社:集英社
発売日:2008-03
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岡本倫先生のデビュー作含む短篇集も存在するのですが、こちらは絶版になってしまってマーケットプレイスで高値が付いてしまっているようです。

ストーリーテリングの巧さから、『きみだら』に繋がる擬音のセンスまで、岡本倫先生のエッセンスが既に詰まっています。

ちなみにこちらにも、冨樫先生が帯を寄稿。

「優しい物語が読みたい人に。優しいだけじゃない物語が読みたい人に」

というコピーは、この短篇集のみならず岡本倫先生の作品全般に言える名文句です。

岡本倫という才能は、決して万人受けする作風ではありません。酷評する意見も散見されます。それでも、覇道と王道の交錯した極致にある才気輝く作品群を、もっとより多くの人に読んで欲しいと願って止みません。
 

ちなみに先日紹介した『クロスロオド』も、中盤以降の緊張感という点では『ハンター』や『エルフェンリート』に近い物があるのでお薦めです。

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作者:
出版社:中央公論新社
発売日:2014-10-24
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