安野モヨコの最高傑作はこれだ!!!?『ジェリービーンズ』

佐渡島 庸平2014年05月19日 印刷向け表示
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ジェリービーンズ(1)
作者:安野モヨコ
出版社:講談社
発売日:2005-10-13
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僕が安野モヨコと初めて仕事を一緒にしたのは、『さくらん』のとき。新入社員である僕は、指導社員をしてくれている先輩の横についているだけの存在だった。一方、安野モヨコは『ハッピーマニア』で一躍、人気作家となり、様々な雑誌から連載のオファーを受け、並行していくつもの仕事をこなしていた。漫画家として成熟している安野モヨコに、新人編集者の僕ができることは何も思いつかず、仕事としてそばにいるものの、遠い存在だった。どうすれば、日常会話以外をしてもらえるようになり、仕事相手として信頼してもらえるのか?

『ジェリービーンズ』の主人公・マメは、ファッションデザイナーを目指している中学生だ。

まだ何者でもないマメが、ファッションデザイナーとして成長していく姿と、マメの恋愛が物語の中心だ。

ファッションデザイナーの話である。しかし、服をマンガに置き換えると、そのまま安野モヨコ自身の物語になる。そして、その服の部分を、さらに別のものに置き換えれば、すべてのクリエイターに共通する成長物語となる。

たとえば、こんな台詞がある。

「ああ…なんかすごく洋服がつくりたい 
いろんなイメージが頭から飛んでいかないうちにつかまえて
…モデルじゃない…モデルにもすごい憧れるけど
あたし 洋服作りたいんだ 
あたし洋服をつくる人になりたい」

安野モヨコが、漫画家になるのを決心したのは、小学校3年生のとき。この洋服をマンガに置き換えてみると、安野自身が決心をしたときの様子と完全に重なる。

僕は、今の安野モヨコから、漫画家を目指していたときの初々しい安野モヨコを知ることはできない。でも、『ジェリービーンズ』からだったらできる。

こんな台詞もある。

「人に見てもらってお金を出させるってスゴいことなんだ… 
あたしは…なんて 
なんて世界に足をふみ出したんだろう!!?」 

 
これは、まさにプロになる意識が芽生えた瞬間にすべてのクリエイターが思うことだ。お金を払ってもらう。すごく当たり前のことだけど、もの作りを始めたばかりの人は、この感覚がなかなか持てない。これを持つことができることが、一つの大きなステップを超えることになるのだ。

僕は編集者として、安野モヨコの成長する時間を共有することはできなかった。でも『ジェリービーンズ』を通じて、追体験をすることができた。それによって、僕は安野モヨコという作家を心底好きになったし、理解できて仕事の話をできるようになった。

この作品は、安野モヨコを好きな人には、ぜひ読んでもらいたい。同時に、クリエイターを目指しているすべてのまだ何者でもない若者にも読んでもらいたい。ここには、もの作りの喜びがあふれている。

作品の最後でマメはこんな風に思う。

「わかってくれた…あたしのやりたいこと
 『特別な人』のための服じゃなく
 ふつうの女の子が特別になれる服 
 みんなが幸せになれる服」

 
これは、安野モヨコが、作品作りでいつも心がけていることだ。熱心なマンガ読者だけなく、普通の人も読めるマンガを描きたい、と。

このマメの思いは、今も安野モヨコに宿っていることを、そばで仕事を見ている僕は知っている。

『ジェリービーンズ』に興味を持った方、まずは試し読みをどうぞ。

ジェリービーンズ(1)
作者:安野モヨコ
出版社:講談社
発売日:2005-10-13
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