『孤独死のリアル』 おひとりさまの老後に向けて

栗下 直也2014年05月20日 印刷向け表示
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孤独死のリアル (講談社現代新書 2264)
作者:結城 康博
出版社:講談社
発売日:2014-05-16
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「死ぬ時まであなたと一緒!」などというかつてどこかで聞いたせりふはもはや昼メロでしか見当たらないのかもしれない。死は最後の最後は誰もがひとりで直面するものだが「自宅で誰にも看取られずに亡くなり、その死が数日後に発見され、自殺や犯罪性を除く遺体」(孤独死)は年間3万体にも達すると言われれば穏やかではない。死ぬ時まであなたと一緒どころか、死ぬ時もひとりで、死んでも発見されない数が3万件。気付けば孤独死は自殺者よりも多い数になっている。本書では、地方自治体で老人福祉を担当して、現在は大学の研究職に転じた著者が孤独死の現場の最前線を解説しながら、対策を提言する。

ここまで読んだ読者の中には、「孤独死、孤独死、五月蠅いな。俺はひとりで死ぬんだよ。見守られるとかウザイんだよ」という方もいるかもしれないが、身寄りがなく、周囲と付き合いがない状態で自宅にてこっそり死なれると意外にも他人に迷惑が及ぶのである。

 
冒頭で孤独死の定義として「数日」と書いたが、これはまれなケースである。数週間たって発見される場合も珍しくないが、その場合、遺体の損傷は激しく臭いも強い。孤独死があった部屋は一カ月程度の自然乾燥が必要で遺体からにじみでた脂を除くため床や壁も全て変えなければならない。遺体の発見者はトラウマになりかねないし、家主にとっても経済的なダメージがある。ただ、こうした孤独死は今後、飛躍的に増えていく可能性はある。
 
そもそも孤独死は1970年代から言及されてきた事象ではある。ここにきて注目を集めるのは自明だが社会構造の変化だ。65歳以上のひとり暮らしの高齢者数は80年に88万人だったが、2015年には600万人に膨れあがる。結婚しない人の増加に加えて、熟年離婚も増加する。同居期間35年以上の夫婦の離婚数は年7000件を突破。私も読みながら、家を放逐されて、さまよいどこかのアパートで孤独死する姿を想像してしまった。そもそも35年も続くのか。そして、家から放逐されると孤独死するような関係しか他者と結べていないのかとがくぜんともしたのである。
 
著者の対策のひとつも人間関係の構築にある。最近、どこでも聞く話ではあるが、要約すると「仕事ばかりしていないで、地域活動やら趣味やら他のこともやっとけよ」。言われる前から、他のことしかしていない身としては頭を悩ますのだが、実際、女性が男性よりも長生きする現状がある中、孤独死するのは男性が7割以上と圧倒的。世代の関係もあるだろうが、この結果からは、会社を勤め上げたものの、妻に先立たれ、仕事以外の関係は薄く、孤独死する男性といった光景が浮かび上がる。
 
また、地域に人間関係を形成しても、今、住んでいるところに住み続けるかわからないし、足腰が弱まれば行動範囲も狭くなる。家で過ごす時間も長くなる。そこで著者が重視するのは民間企業の存在だ。現在、孤独死問題は政府の方針としては地域や家族の自助に解決が委ねられる方向にある。だが、家族に自助の意識があれば孤独死などそもそも問題にならない。頼みの自治体の人員やボランティアの数は少なく、自宅訪問などは限界がある。そこで一部の自治体は民間に委託して、新聞や飲料の配達の際に業務として見守り活動をしてもらうサービスを始めている。
 
これらは「当たり前の議論」に映るかもしれないが、孤独死を巡る問題は、社会の構造変化を踏まえず、当たり前の議論がされなかったことが問題であった。家族や地域のあり方が変わっているのに議論の共通前提が以前のままであることが議論を形骸化させていたのだ。
 
「見守り確認なんてネットでしろよ」と指摘する人もいそうだが、残念ながら、そうした感覚の世代が老人になるまでには多数の孤独死予備軍が控える。それこそが問題だ。高齢者だらけになる将来はともかく、ひとり暮らしの高齢者が加速度的に増え始めた現在は孤独死問題がこれまで以上に深刻化するのは避けられない。おひとりさまの老後がひとごとであると思っている若者にこそ現状と来るべき将来に備えるために読んで頂きたい一冊だ。
 
おひとりさまの老後 (文春文庫)
作者:上野 千鶴子
出版社:文藝春秋
発売日:2011-12-06
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