定例会レポート 〜 第5話 いいレビューによる「マンガの売れ方」を調べてみた 〜

東海林 真之2014年06月05日 印刷向け表示
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マンガHONZの第5回の夜会が、5月26日に開催された。今回の見どころは、レビューに取り上げられたマンガの売れ行き、である。

発端は5月21日。レビュアーの山田義久が投稿した記事「某国立大学の授業でも使われているらしいで~ 『まんが 医学の歴史』」が、今までにないほどの注目を集めた。

こういっては何だが、医学書院というミニコミ(医療者向けの専門出版社)のマンガである。どうしてこれほど注目を集めたのか。その分析が夜会でも話題になった訳だ。
今回の夜会レビューでは、特にその分析の模様に焦点を絞って、お伝えしようと思う。

また、夜会では、まったくの脱線からおもしろいマンガの紹介や裏話が展開されたりする。今回は、そのような話も少し、とりあげてみる。それではまずは、記事の分析から。

『まんが 医学の歴史』はどうして注目された?

まず、この話題にしているレビューをまだ読んでいなかった人は、少しだけでもいいので、目を通してみてほしい。とり上げられたマンガ自体が、全350ページと物量としても内容でもパワーをもつのだが、そのパワーを存分に引き出しているレビューだろう。いつにない長文レビューなのだが、正直私も、のめりこんで読んでしまった。

したがって、「レビューもマンガも魅力に溢れていたから」というのがひとつの答えなのだが、それでは分析としておもしろくない。もちろんマンガHONZはその理念からして「埋もれている良著をそっとすくいあげ世に広く紹介することを目的」としているので、今後も、このようなパワーのあるマンガ(そして埋もれてしまっていたマンガ)は紹介されるだろう。けれどここでの分析は、そのマンガのよさ、レビューのよさは「前提」として、それがどのように話題を呼び、マンガが売れたのかを見ていこうと思う。

はじめに、google analyticsをみて分かったことは、話題(PV)がいくつかの「山」を形成していることだ。平均的に注目されていた訳ではないし、ひとつの大きな山があったという訳でもない。複数の山がつくられていたのである。そしてさらに詳細を見てみると、最初のいくつかの山は、ソーシャルメディア(特にFacebookとTwitter)から形成されていた。

おそらくは誰かインフルエンサーがこのレビューをとり上げてくれたことによるパワーだろう。判明したところでは、佐々木俊尚さんがtwitterでとり上げてくれていた。このツイートをリツイートしている人もいたため、認知が拡大したのだと思う。

一方で、後半にはソーシャルメディアとは異なる大きな「山」も形成されていた。それはAntennaGunosyというキュレーション・マガジンからの流入である。特にAntennaからの流入が今回は多く、その量は、Gunosyの約2倍、FacebookやTwitterなど他のソーシャルメディアの数倍に及んでいた。

おそらくだが、Antennaは女優のローラを起用したCMが流れている期間であったため、その効果がなおさら大きかったのだろうと思う。とはいえ、ソーシャルメディアよりも特定のキュレーション・メディアが多くの流入を及ぼすとは、最近話題になっている現象が実証されたようで、おもしろい結果だった。

最後は「山」として確認できたわけではないのだが、ばかにできない流入数をみせていたのがhatenaである。じわじわ・・とブックマークが増えているのは途中でも確認していたのだが、50ブクマ、100ブクマを超えたところで、それぞれ少し勢いづいたようだ。トータルの流入数でみると、FacebookやTwitterを合わせたくらいの流入を生んでおり、いまだに力のあるメディアだと再認識させられた。

ひとつひとつのメディアの現象はそれほど特徴的ではない(あたりまえのこと)と思うのだが、これらが連鎖していることがおもしろい。瞬間的に1つの大きな「山」ができるのではなく、ソーシャルメディアで点火され、キュレーション・マガジンが油を注ぎ、その裏でちょろちょろとhatenaが燃料をくべ続けていたという一連の流れが確認できたことは、勉強になった。特に、キュレーション・マガジンのパワーには、今後も注目していきたいと思う。

『まんが 医学の歴史』の売れ行きは?

これまでは「記事の注目のされ方」を述べてみたが、最後に少し、マンガの「売れ方」についてもふれようと思う。実店舗での売れ行きについてはデータがないので分からないため、オンライン書店の動向のみを報告する。

まず、上記の一連の注目を集めたことにより、オンライン書店での在庫が軒並み0(ゼロ)になった。この時、在庫がなくなる直前に、取次から各オンライン書店へ100冊以上の在庫補充マンガが発送されていたようなのだが(編集者談)、その在庫もすぐになくなってしまったようである。

この間、Amazonでの表記は「在庫○点あり」と「通常○週間以内に発送します」との間を常に揺れていた。そして最後は、「在庫切れ(出版社またはメーカーで在庫切れのため、一時的に注文を受け付けられない)」という表記になってしまった。
※余談だが、「一時的に在庫切れ; 入荷時期は未定です」という表記もあるはずなので、上記の一見絶版扱いは、誤解を生みかねないよな、とレビュアーの間で話題になっていた

同時に、医学書院でも在庫がなくなっていたため、増刷をかけていた。この増刷分約1週間後の5月30日に、また全国の書店・オンライン書店へと配送されていった。

その結果を見届けようと、私自身もオンライン書店を毎日チェックしていたのだが、おもしろいのが1回に100冊以上がドドンと表示されないことである。実際に届いていないのか、そのような販売方法なのかは分からないが、まず17点だけ「在庫あり」表示になり、その日の終わりに完売になると、翌日には6点の「在庫あり」表示。

私もずっとチェックしていたわけではないので、正確な数値は述べられないが、日に何度かチェックしていた限りでは、前記のように「少し入荷され、じわじわ売れて在庫切れになり、また少し入荷される」を繰り返していたのが、おもしろい。実際にこの記事を投稿したいまも、Amazonの表記は「通常2~4週間以内に発送します」というものである。しばらく前に増刷は終わっており、届いていると思うのだが、いまだに売れ行きがすごいのだろうか。(それはそれで、嬉しいことではある)

『Smoking Gun』と堀江貴文のつながりとは

今回の記事はずいぶんと『まんが 医学の歴史』の売れ行きにスペースを割いてしまったが、どうだったろうか。夜会はいつも様々なネタで溢れているので、なにを紹介しようか、正直、試行錯誤している。「この切り口がおもしろかった!」もしくは「今回の記事はつまらない」、という意見があれば、教えていただけると嬉しい。今後の参考にしたいと思う。

さて、冒頭でも予告したが、夜会では、まったくの脱線からおもしろいマンガの紹介や裏話が展開されていたりする。今回とりあげる裏話は、『Smoking Gun』と堀江貴文とのつながり、である。マンガHONZメンバーのほとんどが知らず、「へぇ~」という話だったので、お裾わけしてみよう。

さっそくそのつながりを紹介してしまうと、『Smoking Gun』の絵を描いている「竹谷州史」が、以前、堀江貴文原作の『拝金』をマンガにしていた、というものである。ちなみに「『Smoking Gun』って何?」という方のために説明をしておくと、現在「グランドジャンプ」に連載されているマンガであり、また同作を原作として2014年4月からフジテレビで放送されているテレビドラマだ。おもしろい作品なので、マンガHONZのレビュアーが今後レビューする可能性もあるため、ここでは内容の詳細は説明しない。裏話に戻ろうと思う。

調べればわかるので"裏"話ではないかもしれないが、このつながりを生んだ経緯がおもしろかった。

まずは堀江貴文が、雑誌編集者の堀江信彦と出会うところから始まる。堀江信彦は知る人ぞ知る名編集者。「週刊少年ジャンプ」の全盛期の編集長であり、その後独立して「週刊コミックバンチ」や「月刊コミックゼノン」の編集長も歴任した人物だ。しかし堀江信彦は元々ファッションに興味があり集英社へ入っていたため、一時期「メンズノンノ」の編集長をしていた。堀江貴文と出会ったときは、まさにこの時。そしてそのきっかけは「同じ"堀江"って苗字が出会うのは、めずらしいな」という理由だという。

なお、この時、堀江貴文はまだ有名になる前。単純に「堀江つながりだけ」でつながった縁なのだそうだ。しかもマンガも関係ないし。それがどういうわけか関係が続き、今度はマンガを通じて結びつくことになる。

先ほど述べた『Smoking Gun』の漫画担当「竹谷州史」だが、2010年に『紅蓮の花 真田幸村』という作品をバンチコミックとして出している。そこで堀江信彦との縁があり、2011年にゼノンコミックとして、堀江貴文原作の『拝金』をマンガ化することになったという。

今、グランドジャンプで『Smoking Gun』を連載しているところまで話がつながるわけではないが、おもわぬつながりの裏話であった。なお、余談だが、この『Smoking Gun』がいま「フジテレビ」でドラマ化されている、というところまでをストーリーにすると、また違ったおもしろさがあるかもしれない。

マンガHONZの独自ランキング、今月は…

最後に。今月も先月に続き、マンガHONZ独自のランキングを発表していく。

ひとつめの企画は、『先月の買われた本ランキング ベスト5』
「思わず本を買ってしまうような、惹きつけられるレビューはどれだったのか」という疑問に答えるランキングだ。5月のレビューでとり上げられたマンガの売れ行きを集計して、報告しようと思う。

そしてもうひとつは、『マンガHONZレビュアーが勝手に選ぶXXXランキング』である。
年間1,000冊以上もマンガを読むような(一部だが)レビュアーたちが、ある「お題(テーマ)」にそってマンガを選ぶと、どんなラインナップになるのか。そんな疑問に答えるこのランキング。今月のお題は『サッカーマンガ』である。

世の中でも既に聞き飽きるほどに話題となっているテーマであるし、今回に限らず「サッカーマンガのNo.1を決めようぜ!」というテーマはネット上でも、たびたび議論されている。そのテーマにマンガHONZメンバーが取り組むと、どんな結果になるのか。敢えてとり組むこのランキングも、楽しみにしていてほしい。

それでは。6月のマンガレビューもお楽しみください。
 

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