『mitonote(ミトノート)』-市役所職員の自腹ワンコイン広告 「水戸黄門」と「納豆」をどうするのか?

版元の編集者の皆様2014年06月13日 印刷向け表示
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水戸市役所・みとの魅力発信課では、『mitonote(ミトノート)』という冊子を制作しています。

単純に観光に結びつくようなものではなく、中長期的に地域イメージを作っていくことで、交流人口・定住人口の獲得を意図したもので、最近は、「文化誌」とか「地域誌」という呼ばれ方をしているようです。(参考:d47 MUSEUM『文化誌が街の意識を変える展』)

それではなぜ水戸市は、このような冊子を作ったのか?

我が茨城県は、2013年の都道府県魅力ランキングにおいて最下位という結果が出ています。しかも、2009年より毎年行われているこの調査において、2012年のみ46位、つまりブービーで、それ以外の年は全て最下位となっていたのです。(※ブランド総合研究所:「地域ブランド調査2013」より)

調査手法や設問、サンプル数は適切なのか?地域の魅力を都道府県単位で感じるだろうか?そもそも、誰を顧客とした調査なのか?…そうした疑問はさておき、最下位というのは由々しき事態。何とかしなければなりません。

そして、東日本大震災。実は茨城県内も大きな被害を受けました。水戸市も、大変多くの方が被災したのです。市役所の本庁舎も壊れたことから、立ち入り禁止となり、現在もプレハブの仮設庁舎で仕事をしています。観光客も減少し、地域経済にとっても、大きなダメージとなっています。

こうした状況から、茨城県、そして、県内の自治体は、それぞれ地域のPRに向けて一斉に動き出すことになりました。例えば、茨城県では、このようなキャンペーンを行っています。

そして茨城県の県庁所在地・水戸市では、大震災直後の市長選挙で「広報戦略室の設置」を公約に掲げた高橋靖市長が誕生。翌2012年4月に、高橋市長が主導して広報広聴課を改編し「みとの魅力発信課」を設置、その中に新設されたイメージアップ係で、地域のイメージアップに取り組むことになりました。

ところで水戸と言えば、100%必ず、「ああ、水戸黄門と納豆ね。」という反応が返ってきます。地域のイメージをどうするか考える立場からすると、この「水戸黄門」と「納豆」をどうするか?ということは、非常に悩ましい問題です。ここまで全国的な知名度を獲得している地域資源を2つも持っている。これらはもっと活かすべきだろうか?それとも脱却していくべきだろうか?迷うところですが、みとの魅力発信課に期待されているのは、どうやら「水戸黄門」や「納豆」から脱却する方向のようでした。

そして庁内公募により選抜され配属されてみると、上司より北九州市の文化誌『雲のうえ』を渡されました。曰く、「交流人口を呼び込む、こういう冊子を制作してほしい。」…紙媒体、発行部数10,000部、年度内発行で事前のマーケティングの余裕もなし。一体どうしたらいいのか…。

まず行ったのは、聴き込みです。

外から人を呼び込みたいのであれば、地域の中だけで議論していてはいけない。”ヨソ者”目線を持つ方から見て、この地域のどういうところがいいと感じるのか、本当のところを引き出していく必要があると考えました。

県外から水戸に転勤してきた方、旅行で水戸にやってきた方、水戸に住んでいるが海外によく行かれている方…幸いにも、以前より個人的に”他県人会”なる飲み会も主催していたこともあって、実にいろいろな”ヨソ者”の方から話を聞くことができました。結果見えてきた”ヨソ者”共通の「水戸のいいところ」、それは、「歴史」にまつわるものではなく、

「豊かな自然と、文化的な街がとても近い」

ということでした。

水戸は「歴史のまち」とよく言われます。しかし、戦時中の空襲により、水戸の街の歴史的な建築物は、その大半が焼失してしまいました。その結果、街並みから直接「歴史」を感じ難くなっています。この聴き込みの結果は、そのことと非常に合致するもののように感じました。

作戦は決まりました。「水戸で何気ない日常を生きている人」を通して描いてみよう、そして、キャッチーなジャンルではない「歴史」は、その背景として感じてもらうようにしよう!

それを表現したのが、この創刊号の表紙です。手前に「豊かな自然」を代表する千波湖、奥に街、そして小澤征爾さんが館長を務める水戸芸術館のタワーを「文化」の象徴として配し、それを人がつなぐ構図にしました。

『mitonote(ミトノート)』創刊号表紙

今年の3月には、第2号「水戸のやさい・くだもの」も発行しました。この号では、「水戸のやさい・くだもの」をテーマに、水戸ならではの特色を持った農産物と、そこに関わる人が紡ぐ物語を紹介しています。 

タイトル
作者:みとの魅力発信課
発売日:2014-03-13

さて、この『mitonote』ですが、配布は、ヒカリエのd47 MUSEUM(渋谷)、アーツ千代田3331、茨城県のアンテナショップの茨城マルシェ(銀座)の3箇所で行っています。今後は、水戸藩の屋敷があった小石川後楽園など水戸に縁のある場所や、テーマにあったイベント会場での配布も考えています。また、水戸市内の宿泊施設にも、順次設置していく予定です。

なお、茨城県外には発送も可能です。ご興味のある方は、ぜひ、みとの魅力発信課までご連絡ください。(ただし、創刊号は現在残部希少になっています。また、大部数の配布は一度ご相談いただければと思います。)

また、電子書籍版(PDF及びePUB)も用意しましたので、そちらでもご覧いただけます。ぜひ、手にとっていただければ、望外の喜びです!
 

沼田 誠 水戸市市長公室みとの魅力発信課イメージアップ係長。1971年京都生まれ。2000年水戸市役所入庁。2012年4月より現職。イメージアップの企画の他、フィルムコミッションや、魅力を発信する市民の支援なども随時行っている。また、公務とは別に、「オセロ発祥の地・水戸」のPRや「コみケッとスペシャル5」の誘致などに関わるなど、様々な活動を行っている。
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