ドラッカーとバフェットに学ぶ 就活は3億円の投資!?『インベスターZ』

角野 信彦2014年06月23日 印刷向け表示
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インベスターZ(10) (モーニング KC)
作者:三田 紀房
出版社:講談社
発売日:2015-09-23
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ウォーレン・バフェットと効率市場仮説と就職活動

効率市場仮説という考え方がある。市場の参加者は全ての情報を株価に織り込み済みで、どの株を選ぶかによって超過リターンを得ることはないという学説だ。なので、オランウータンが株を選んでも、人間が選んでも、市場平均を上回る確率は同じになる。

これに対してウォーレン・バフェットは、市場に勝ち続ける幸運なオランウータンが、全米に散らばっているのではなく、ほとんどが1箇所の動物園の出身だったらどう説明すると問い返している。実際、彼の師匠のベンジャミン・グレアムの9人の弟子たちのバリュー株投資は、それぞれが別々の銘柄を選んでいたにもかかわらず、全員が市場平均を上回るリターンを達成していた。

これは1984年にコロンビア大学のビジネススクールでウォーレン・バフェットとファイナンスの担当教授の間で、実際に行われた議論で、セバスチャン・マラビー著『ヘッジファンド1』第5章に詳細がかかれているので、気になる方は参照してほしい。

自分の考えで何かを選び、超過リターンを生み出そうというのは投資そのものである、ならば「人生」そのものが投資ではないか、という三田紀房の考えが、この第4巻では大きく反映されている。主人公の財前孝史が道塾学園のオーナーの藤田繁富に会って、新しい投資の許可を得ようとする場面がある。

就職活動が3億円の投資だという緊張感は、企業側にも学生側にも余り無いのかもしれない。現在では新卒で入社して、40年近く勤め上げるという人材が減ってきたこともある。ただ、それぐらいの緊張感を持つことで自分の「人生」について深く考えるきっかけになる。「人生」の売り買いをする就活の市場は、すべての情報が価格に織り込まれるわけではない「非効率市場」だ。自分の頭で考えて、選択することで、超過リターンを得ることが出来る。三田紀房の就活生へのエールともいえる。敢えて極端を示すことで本質を伝えようとする三田紀房の真骨頂だ。

ピーター・F・ドラッカーと就職活動

成果をあげるエグゼクティブは、人間の強みを生かす。彼らは弱みを中心に据えてはならないことを知っている。成果を上げるには、利用できるかぎりの強み、すなわち同僚の強み、上司の強み、自分自身の強み、を使わなければならない。強みこそが機会である。強みを生かすことが、組織の特有の目的である

ピーター・F・ドラッカー『経営者の条件』より

では「強み」とはなんだろうか。単純に考えれば人より自分がよく出来ること、人が出来ないのに自分だけができることだろう。言い方を変えれば、「違う」ということだ。ドラッカーは「人材は違いが全て」とも述べている。

しかし、現実の就職活動を見てみるとどうだろうか。量産型ザクのように、みな同じ格好をして、面接のマニュアルまである始末。採る方にも、応募する方にも問題があるのだろうが、日本では、学生にも社会人にもドラッカーは大人気ということを考えれば、非常に不思議でならない。こうした現状に強烈に異を唱える場面がある。ガールズインベスターの藤田美雪が、お姉さんに、企業研究のために株式投資を薦めるシーンだ。美雪は否定的なお姉さんに諦めにもにた感想を吐く。

自分の「強み」をつくるためには、「違い」を追い求めなければならないという、家業を救うためにマンガの道を目指した、三田紀房ならではのメッセージだろう。

何がどうなるのだ???

道塾学園の創業家、藤田繁富が財前孝史の曽祖父の財前龍五郎のことを調べている場面がとても気になってしまう。こんな場面だ。

マーケット関係者の間に、アルカイダのビンラーディンが911の前に大量の空売りをしていたのではないかとか、グリコ・森永事件の犯人グループが脅迫と売り、その終了と買いを連動させていたのではないかという都市伝説もあるが、このケレンたっぷりの展開こそ、三田マンガの面白さだ。わくわくしながら「日本を太平洋戦争に突入させた」財前龍五郎のストーリーを待つことにしよう。 

インベスターZ (1)を読む

インベスターZ(1) (モーニングKC)
作者:三田 紀房
出版社:講談社
発売日:2013-09-20
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インベスターZ(2) (モーニングKC)
作者:三田 紀房
出版社:講談社
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インベスターZ(3) (モーニングKC)
作者:三田 紀房
出版社:講談社
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インベスターZ(4) (モーニングKC)
作者:三田 紀房
出版社:講談社
発売日:2014-06-23
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ヘッジファンド―投資家たちの野望と興亡〈1〉
作者:セバスチャン マラビー
出版社:楽工社
発売日:2012-02
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効率市場仮説とウォーレン・バフェットの話が載っているが、それだけではなくヘッジファンドがどういう戦略で超過リターンを稼いできたのかを紹介している。ヘッジファンドの歴史がわかりやすくまとまっている。サブプライム以降のこともカバーしている。 
 

ドラッカー名著集1経営者の条件
作者:P.F.ドラッカー
出版社:ダイヤモンド社
発売日:2006-11-10
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実はナチスドイツの将来を世界で最初に見抜いていたのはドラッカーだった。ユダヤ人のドラッカーは、とことん人間尊重の経営学者であった。そんなドラッカーの代表的経営者論。 

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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
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